A requiem to give to you
- 崩落編 -

【第62音番外】


フィリアム:つい、受け取ってしまったけど………これは……………

アッシュ:くそ、スピノザの野郎どこへ行きやがった……って、何してやがる。ついて来たならちゃんと奴を探しやがれ!

フィリアム:うん、それはわかってるんだけどさ

アッシュ:それは、確か携帯電話とか言うやつか? だが、レジウィーダがよく持ち歩いていた物とは違うな

フィリアム:兄貴のだから

アッシュ:そうか。考えてみればお前も使えるのか

フィリアム:試した事はないけど、多分出来ると思う。兄貴もそう思って渡してくれたんだ

アッシュ:確かにどこにいても連絡を取れるのは便利だからな

フィリアム:それもそうなんだけど、多分……アッシュの負担を減らせるからなんじゃないか?

アッシュ:どう言うことだ?

フィリアム:ルークと会話する時、普通なら出来ないフォンスロットの使い方してるみたいだし………お互いへの影響もわからないし、あまり多用はしない方が良いと思う。俺がいる時だけになるけど、向こうに何か伝えるならこれを使えば良い

アッシュ:フン、余計なお世話だ………と、言いてぇが。下手をして動けなくなっても困るからな。その時は頼む

フィリアム:うん

アッシュ:それで、何を悩んでいる?

フィリアム:別に悩みってほどじゃないんだけど……。これってさ、小さいけどかなり便利な物なんだよ。通話したり、世界中の様々な情報が見れたり、買い物が出来たり……とか

アッシュ:こんな小っぽけな機械が?

フィリアム:これでもコンピュータだからね。やりようによってはディストの持ってる譜業並の事も出来るかも。それもあってか、この中に電子化したお金を入れたりも出来る関係で個人情報とかも登録してる人も多いと思う。ただ………

アッシュ:ただ?

フィリアム:あまりこう言う事を他人に話しちゃダメだって言うのはわかってるんだけど、その………さっきいざと言う時の確認も兼ねて兄貴の電話帳アプリを開いたんだけどさ

アッシュ:(あぷり?)ほう

フィリアム:兄貴、連絡先の登録が十件無いんだけど……

アッシュ:それが何か問題なのか?

フィリアム:家族四人と幼馴染み三人だけだよ? あの世界で生きてきてこれは排他的過ぎないかな。兄貴達くらいの年なら、もっとたくさんの同年代との関わりもあるだろうし、じゃなくても学校とかで同じクラスの人とも連絡を取ることもあるんじゃないかと思ったんだ。それを思うと……

アッシュ:よくわからんが、つまりお前が言いたいのは………あいつにはあの三人以外の友がいないってことだな?

フィリアム:……いや、そこまでは言ってない…………言ってないけど、でもちょっと心配にはなる

アッシュ:向こうの世界じゃどうだかは知らないが、別にそこまで拘るようなことがなければ、無理に連む必要もないと思うけどな

フィリアム:まぁ、それは一理あるし、何なら俺も同意だ

アッシュ:寧ろあいつの事だから、お前が使いやすいよう不要な連絡先を予め消していたとも考えられそうだけどな

フィリアム:それだったなら、良いんだけどね


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