Rondo of madder and the scarlet
- 遊園地- Date? - -

【1/2】


長かった夏休みも遂に終わりへと近付いた最後の日曜日。学校から出されていた宿題も終えて今日、ルークは茜と一緒に遊園地へと来ていた。



「ここが………遊園地か。スッゲェ人だな」

「まぁ、テーマパークだからね。それに今はまだ夏休みだから家族連れのお客さんが多いんだよ」

「へぇー」



言われてみれば確かに小さな子供が多い。
宙に言われるままチケットを受け取りはしたが、正直遊園地と言うのがどんな物なのかルークにはわかっていなかった。
だが下手に知らない映画を観に行ったりするよりかは断然に楽しそうだった。



「なあなあ茜、あの早いのって何だか?」



先程から素早くレールを駆けて行く乗り物が気になっていた。時折悲鳴のような物も聞こえるが、テーマパークと言うのだから危ないものではないのだろう。



「ジェットコースターね。見てわかると思うけど、猛スピードでレールを走る乗り物で、そのスリリングさと爽快感が人気らしいわ」

「そうなのか…………」



物凄く、楽しそうだ。そんな事を思っていると茜はジェットコースターの乗り場を指差した。



「乗る?」

「え、良いのか!?」



まさか茜から誘ってくれるとは思わなかったが、凄く嬉しい誘いだった。

しかし、



「でも、茜は平気か? こう言うのって刺激が強いんじゃ………」



心配してそう言うと、茜は「大丈夫だよ」と笑った。



「わたしね、こう見えても絶叫系は得意なの」

「………マジ?」

「うん、マジホンです」



それは実に想像が付かない、なんて少し失礼な事を思いつつも折角乗れるチャンスが出来たのだ。
ルークは茜の手を取り、ワクワクする気持ちを胸に早速乗り場の方へと走り出した。

それからの待ち時間はそれほど長くはなく、十分ほどで直ぐに乗る事が出来た。
安全バーを下げ、係りの人が最終チェックをした後にジェットコースターは動き始めた。

ガタガタとゆっくりと上がり始める感覚にルークは思わず茜を見ると、彼女は緊張の面持ちで前を見据えていた。



「茜、大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫………だけど、落ちるまでこの時間ってちょっとドキドキするよね」



そう言って笑う彼女の表情に恐怖の色は見られなかった。それに安堵しつつも、ルークは頷く。
そうしている間に、いつの間にか目の前のレールは見えなくなっていた。



「い、行くよ!」



その言葉にグッと首からかかる安全バーを強く握る。…………その瞬間、ジェットコースターは勢いよく降下し始めた。



*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇




急降下、急転回するジェットコースター。一言で言えば「最高」だった。
一緒に乗っていた茜も自身が言っていた通り、全然平気そうでとても楽しかったと上機嫌だった。

そんなルーク達が次に入ったのは茜曰く「遊園地の定番」だと言うお化け屋敷だった………が、



「ヒィィィィィィィッ!? ルルルルルゥゥゥ……ク! はな、はな………なななななさ、な、っ!」

「イテテテテテテ茜っ、痛い! マジ痛いぃぃっ!?」



ジェットコースターは平気だったが流石にコレは駄目だったらしい。
茜はお化けが出てくる度に凄まじい悲鳴を上げながらルークの腕を目一杯に握ってきた。これがまた意外にも力強く、ルークも別の意味で悲鳴を上げる事態となった。



「茜っ、取り敢えずまずは落ち着けって!」

『うがああああああああっ!!』

「いいいいいいいいやあああああああ○☆□↑◇●△▲▼※⇒!?」



最早何の言葉にもなっていない。完全に混乱しているようだった。



(と、とにかく早くここを出ねぇとマジやべぇ!)



ルークも決してお化け屋敷が得意ではないのだが、不幸中の幸いか茜がここまで怖がっている為、逆にお化けを怖がる暇がなかった。



「茜、一先ず出ようぜ、な?」

「出るっ……もう、ここから出るううぅぅぅっ!」



茜は目に涙をたっぷり溜めながら何度もコクコクと頷いた。
そんな彼女を少し可愛いと思いながらもルークもまた、漸く緩んだ手を繋ぎ直し急ぎ足で屋敷を抜け出したのだった。



そして……



「もう、大丈夫だな…………」



何とかお化け屋敷を出て息を吐いたルークは茜を見たが、彼女からの反応はなく、無言で俯いていた。



「茜?」



まさか前の聖のように立ったまま気を失ったのでは、と不意に頭に過り心配になった。
そして恐る恐る顔を覗き込むと、そこには魂が抜けたように燃え尽きた顔があった。



「茜、ごめん



















ぶっは、………!」



一言そう告げてからルークは思い切り噴き出した。それを皮切りに、抑えられなくなった笑いが込み上げ、遂には腹を抱えて笑い始めたしまった。



「そ、の顔……………やめ、……面白、すぎるって……っははは!」

「ル、ルーク…………もうバカ!」



ルークの笑い声に漸く我に返った茜は顔を真っ赤にして憤慨したが、その顔もまた実に面白くて、可愛らしくて彼は笑いを止められなかった。



「ははははっ」

「……………………」

「ははは…………、はぁー……」



暫くして笑いが収まってくると、大きく息を吐く。そんなルークを茜は未だに焼き林檎のように赤い顔のまま睨んだ。



「気は済んだの?」

「うん、何とか………はは、ごめんって。怒るなよ」



苦笑して彼女の頭をよしよしと撫でる。更に怒るかとも思ったが、意外にも茜は嫌がる素振りを見せずにされるがままになったまま、小さな声で「ルークのバカ」と呟いた。



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