「んもーう!数多すぎ!!」

「ったく、キリがねェぜ!」


鬱蒼とした森の中、エースとレジーナの二人はとある物を求めてやってきた。
しかし途中で魔物の縄張りに入ってしまったため二人は魔物を蹴散らしながら逃げていた。


「レジーナ!アンタのせいだぞ!」

「だから、悪かったってば!『焼け!』」


口喧嘩の最中にもエースはサーベルを振るい、レジーナは魔法を放つ事を忘れない。



「とにかく、逃げるの最優先!レジーナさんが道を開くから時間稼いで!」

「分かった!」


レジーナの意図を悟ったエースは自分の周りにいる魔物からレジーナに襲いかかろうとする魔物へと狙いを変えた。今までは急所を狙い数を減らすようにしていたが、今度は足や顔面を斬りつけて動きを封じるようにする。
エースが次から次へと斬り伏せている間にもレジーナの周りには魔力が赤い靄のようにまとわりついていく。


「『我が生み出す真紅の炎よ、大蛇となりて我らが逃れる道を用意せよ!行け!』」


レジーナの掛け声と共に靄が炎へと姿を変え、その炎が言葉の通り大蛇の形を作り魔物の群れへと一直線に進んだ。
たまらず魔物は逃げ出し、逃げ遅れた物は皆焼き尽くされた。魔力で作られたその炎は通り道のみを焼き、その他へと燃え広がる事は無い。


「今よ!」

「よし!」


炎が通った後は魔物も木も焼かれ焦げた道が出来上がっている。
魔物がこちらに再び狙いを定める前に二人はさっさと退散した。









「こ、ここまで、来たら、大丈夫、でしょ…!」

「ひ、ひでェ目にあった…。」

「ま、まだ、言う…?」


全力で森の中を逃げ回った二人は何とか安全そうな場所を確保した。
足場の悪い場所を逃げ回っただけはあり、二人共息は上がっておりレジーナに至ってはその場に倒れ込んでいた。


「レジーナよ。」

「ま、待って、まだ息が…。」

「は?」

「し、仕方無いでしょ。レジーナさん、魔法使ったんだから。」


元々体力に恵まれないエルフと魔力に恵まれない人間とのハーフであるレジーナはその両方の欠点を受け継いでいた。
とは言ってもエルフよりは体力に恵まれ人間より魔力に恵まれている上に魔法まで使えるのだから長所も受け継いでいるが。

ハーフであるが故に強い魔法を使うと魔力がすぐに底を尽き、動き回ると体力が尽きるので人間であるエースよりも回復に時間を要する。


「で、何?聞く、くらいなら出来るよ。」

「あぁそうだ。アンタの詠唱だけどな、前と違うよな?」

「そう?」

「つーか毎回違うぜ。」


今までにも何度かレジーナの魔法を見た事があるエースだが少し長い詠唱になると毎回違う呪文になる事が気になった。
ロードやジョーカーも違うがこの二人には何となく聞きにくいためレジーナに聞く事にしたのだ。

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