ここはどこにでもあるような普通の住宅街。でもどこの住宅街には普通と違う所が1つ。
それは――ここに『叶え屋』が住んでいるのです。

それは普通の人が見ようとしても見る事が出来ない所。見る事が出来るのは欲望≠持つ人だけ………。

そう、『叶え屋』は人の持つ欲望を叶えてくれるのです。
貴方にどうしても叶えたい欲望があるならこの住宅街を訪れると良いでしょう。目の前には和風の家があるはずです。そして玄関を開けて中に入ると………。

「どうも。」

「俺達は。」

「「『叶え屋』です。」」




「登奈ちゃ〜ん!!」


あたしは後ろから友達の絵理ちゃんに声をかけられた。どうしたんだろう、今日はやけに機嫌が良い。すっごい笑顔。


「どうしたの?絵理ちゃん。」


気になったあたしは思わず聞いてみた。相変わらずにこにこ顔の絵理ちゃんは言った。


「だって校門の所に格好いい男の子が笑顔で手を振ってるの!!」


格好いい男の子?不思議に思いながらあたしは振り返った。


「やっほー、登奈☆」


振り向いた瞬間……あたしは固まった。だって……あたしの双子の弟、那奈登がいたんだもん。


「ど、どうしたの?どうして那奈登が此処にいるの!?」


あたし達は違う学校に通っている。だから……特に会いに来る理由なんでないんだけど……。


「どうして?……もちろん決まってるだろう?登奈に会いに☆でないとこんな所までわざわざ俺が来るわけ無いだろう?」


う〜ん、我が弟ながら結構失礼ね。でも別に良いや、あの那奈登があたしに会いに違う学校まで来てくれたんだもん!!


「ちょ、登奈ちゃん!?彼氏居ないって言ってなかった!?こんな格好いい彼氏がいたなんて聞いてないよ!!」


彼氏いない歴15年の絵理ちゃんがあたしの肩を掴んで凄い剣幕で迫ってきた。正直少し怖い。

でもね、絵理ちゃん彼氏だなんて言う訳無いよ……って言うより言える訳ないよ。

だって彼氏じゃなくて弟だもん、那奈登は。でも那奈登の反応は違った。


「ええ!?登奈ってば俺の事友達にも話してなかった訳?ひっどいな〜、登奈ってばそんなに俺が恥ずかしかったの?……ショックだな…。」


この一言で那奈登の目的が分かった。那奈登はあたしの顔が見たくてわざわざここまで来た訳じゃない。

あたしと友達で遊びに来たんだ!!
あたしとした事が忘れてた…。那奈登はこういう子だった。
人をからかって遊ぶのが何よりも好きだったんだ……。

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