※現代パロ


 ココアを作りながら、我ながら人の部屋なのに手慣れたものだなーとか、ふと思う。まあ、部屋の主である双子とは幼なじみで、ここは既にわたしの第二の家みたいなものなのだけど。
 冷蔵庫の中にはわたしがここに来る途中で買ったプリンが入っているし、このマグカップだってわたしのものだ。ちなみに、食器棚にはこれと同じデザインで色違いのマグカップがあと二つ並んでいる。去年のアレルヤとハレルヤの誕生日に、わたしが揃えたのだ。
 なんて、そんなことを思い出して、今年もそろそろそんな時期だということに思い至る。今年は何をあげようかなあ。

「ねーハレルヤ。もうすぐ誕生日だけど、何かほしいものある?」
「バイク」

 やたらと大きな態度でソファに腰かけてテレビを眺めているハレルヤに訊いてみると、一瞬の迷いもなくそんな返事が返される。ハレルヤだってまさか本気で言っている訳じゃないだろうけど、あまりにも無茶すぎる。
 わたしはそれを華麗にスルーして、マグカップ片手にハレルヤの隣に腰を下ろした。ハレルヤの意見が参考にならないなら、アレルヤに訊いてみようか。「でもなー……アレルヤは、『なまえがくれるなら何でも嬉しいよ』って言ってくれるし」。「全く似てねーな」。確かにちょっとアレルヤを意識した言い方はしたけど、ほとんど独り言だったのにダメ出しされた。

「つーか、そんなん具体的な答えになってねーだろ」

 いやいや、ハレルヤの希望だって具体性は十分すぎるくらいでも、現実性が皆無だよ。思うだけで言わないけど。沈黙の口実みたいに、ココアを一口すする。あ、でも、さっきみたいな無茶を言っても、いらないとは言わないし、毎年ちゃんともらってくれるんだよね。
 口の中に広がる甘さと一緒に、ふわりと胸の奥があたたかくなる。そして、わたしは思わずぽつりと呟いた。

「……なんかさ、しあわせだよね」
「あ? 突然何だよ気持ち悪ィ」
「だって、突然そう思ったんだもん」

 あったかいココアを飲んで、ハレルヤと馬鹿みたいな言い合いをして。それから、ここに、少し困りながらわたしたちを仲裁するアレルヤがいればもっとうれしい。

「はやくアレルヤも帰ってこないかな」


(こんな風に何でもない日が、いつまでも続きますように)



何でもない日の何でもないしあわせ
20110227(ハッピーバースデー!)
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