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世界は翌朝に終わる


管理人は毎日見る夢をほぼ覚えてます。
その夢はいつもの日常の一コマだったりするんですが、中には物語となって第三者視点で見ているというものもあり、気になった話は最近箇条書きで書き留めていました。その内容をメモとしてここに残しておこうかと思います。
ホントに殴り書き同然で、途中、夢から覚めて続きが分からなくなったりするのもありますが、それでも良ければお目汚しにどうぞ。


迷い込んだ先で

──VRMMO。
つまり専用のデバイスを通して仮想空間の世界へと入り、実際の五感を利用して遊ぶ体感型ゲームの総称だ。それ以上も以下もない。よくあるRPGゲームを私はプレイしていた筈なのに──、
誤ってフィールドの外へと落ちてしまってから、それまでのゲームの概念を覆すような体験を私はする事になった。



「あ、イタタ…」
豪快に背中から落ちたために痛む腰を撫で擦る。
かなりの高さから落下したようで、体力ゲージがレッドゾーンのほぼゼロに近い状態だ。
「というか、フィールドから落ちた時点でゲームオーバーかセーブポイントに逆戻りみたいな動作があってもいい筈なのに、ここどこよ?」
周辺にあるのはレトロ感満載の昭和の風景。
夕日が町中を照らす視覚的効果の素材なんて、正にノスタルジーを感じさせて──、
「いやいや、可怪しくない?このゲームの世界観は中世ヨーロッパだった筈よ?」
頭の中でクエッションマークが大量に乱舞する。
もしや隠しステージにでも間違って入り込んでしまったのだろうか。試しに自分の手の甲を抓ってみる。かなり痛い。
「じゃあ夢じゃない?あいや、ゲームの中でこの確かめ方はおかしいか」
痛む手の甲を撫でながら辺りを見回す。
それにしても──、
「ばあちゃん家がある町並みに似ているような……」
そうだ。どこか郷愁を感じる理由はあの場所に似ているからだ。
幼い頃、よく遊びに行った田舎の祖母の家。
いつの日か行くことを止めてしまったけれど、その理由は自分でもよく分かっている。
あの日──私の父が急に失踪したからだ。
「なんだか懐かしいな」
とても小さな町を見回しながらポツリと零す。
今はそんなこと思い出しても仕方がないだけだけれど、なぜこんな嫌な記憶を想起するのか。
「あ」
と思わず声が出た。
何故なら、周りに誰もいないと思っていた正に目の前に第一町人を発見したからだ。
話しかければ何かしらのイベントが発生するかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら、
「すみません、ここってどこですか?」
意気揚々と尋ねてみた。
けれど、
「ここは○*@#&ですよ」
「は?」
何故か町の名前であろう部分だけ聞き取れない。
ノイズが混じったような、知らない国の言葉のような。とにかく何を言ってるのか分からないのだ。
また更に奥にも、似たようなNPCキャラを見付けたので話し掛けてみた。
「ヒロシさんはすごい人だ。何せこの町を作ったお人がその人なんだからよ」
「っ!」
今度は思わず目を見開いてしまった。何せ先程、想起した父の名前というのが『ヒロシ』だったからだ。
「ははっ。不意討ち過ぎて驚いたー」
そんなわけ、ある筈がない。
「ヒロシさんっていうのはこの町のえらい人の名前だよ。……えらいってなんだろ?」
ここはゲームの中。しかも高々、名前が似てるってだけだ。
「ヒロシは急に現れて急にいなくなってしもうた。お前さんもそうか?」
その筈、なのに。
何故この町のそこかしこに父の痕跡がいくつも感じられるんだろう。
「あの人はすごい人だ」と口々にいう町人達が見せてくれた『ヒロシ』という人物に関係するものは、全て生前の父に縁のあるものばかりだった。
違うと即答できなくなってきている自分に頭を抱えてしまう。
可怪しい。可怪しすぎる。
町工場に勤務していて仕事一筋な人だった。言うまでもなく、ゲームとは無縁の人である。このゲームをプログラムしていたとかは絶対にあるわけがない。
まさかゲームの中に父が迷い込んでしまったというのだろうか。
ガツンっ!!
無意識に叩いたブロック塀に一瞬、赤文字のダメージ表記が現れたが、直ぐさま消えた。
それこそ、ここが現実ではないという証拠の筈なのに。
「…ッ」
自分でも、どういう事か意味が分からなかった。


続きを見る前に目覚ましに起こされた。私も意味が知りたい。

2024.02.14 07:38

悪ノ女ノ子

苦しい。
覆い被さっている男の存在全てが、何もかも苦しい。
違う。私はこんな結末の為に、ここまで生きてきたんじゃない。
そんな思いと共に涙が目の端から零れていく。



私の母は、ある男に食われる為に用意された数いる女達の一人だった。
目の前で次々と食われていく女達を見つめながら、私ももうすぐ、こうなるんだろうと思っていたという。
その時の母は、何の因果か身籠っていた。けれど、私をその身体に宿していたとしても、生きようとは考え付かなかったそうだ。
そうこうしている内にDIOの前に差し出された母。だが、何の気まぐれか、身重の母を目にしたDIOは食べるわけでもなく、母の腹を引き裂いた、そして、私という赤ん坊を引き摺り出したのだ。血塗れの母には一片の興味も持たずに。
それから私はDIOの狂信者達に育て上げられた。何不自由なく、何の疑問も抱かず。そして私も──。
子供の順応の早さとは恐ろしいもので、私はそれが当たり前のものだと何の疑いも持たなかった。周りに女達の死体があっても、DIOという男が日中、外に出ようともせず、ただ毎日を屋敷の中で暮らしていたとしても、だ。
それが当たり前だと。周囲も同じ状況なのだと、信じて疑わなかった。
あの日、あの人達に会うまでは──。
彼らはDIOを探しているという。
探し出して倒さねばならない、宿敵の相手だと。
可怪しな話だ。私は直ぐさま否定した。だが、次から次へと告げられる真実に、私は何もかもが信じられなくなった。
耳を塞いで蹲り、何もなかったように振る舞い続けたかった。
けれど、彼らが見せた真剣な目付き。あの瞳が、私をそうさせてはくれなかった。
そうして私は彼らの仲間になった。
敵の内情。DIOや彼の身辺にいる狂信者達の日々の動きの流れ。屋敷の構造。私が知っていた全てを彼らに教えたのだ。
彼らがDIOを倒してくれる事が世の為、人の為になると信じたからだ。
でも──、こんな結果が待っていると知っていたなら、私は何も知らぬままでいたかったかもしれない。
「お前がわたしの前に立ちはだかる時が来るとはな」
背筋が凍るような冷たい視線が私を射抜いて離さない。
ガタガタと生理的恐怖が襲って身体の震えが止まらなかった。
「そう怖がる事もないだろうに。これはお前が選んだ結末だろう?」
結末?
そう問い返せたのかも分からない。
気付けば私はDIOに引き倒され、覆い被さられていた。
抵抗しようにも抑え付けられる力が強過ぎて、身動き一つ出来ない。
「ああ。お前は自ら悪の道から抜け出そうとし、そして失敗したんだ。お前がどれだけ否定しようが、どれだけ抗おうが、お前の存在そのものが悪だという事実からは逃れられんというのにな」
私が……悪?
耳殻を舐られ、物理的に捩じ込まれるDIOの言葉が、ただただ苦しい。
自分の身体が、目の前にいる育ての親とも言える存在に、徐々に蹂躙されていくその屈辱さが惨めで涙が出てくる。
違う。私はこんな結末の為に、ここまで生きてきたんじゃない。
「フッフッフッ、そうだ。その顔が見たかったのだ」
そう呟いた男の顔が一体どんな表情をしていたのか、私には分からなかった。──分かりたくもなかった。


女の子の名前はトアミって呼ばれてたな。DIOが悪役過ぎて引いたけれども。この後この子がどうなったのか、私にも分かりません。

2023.11.29 09:27

魔獣襲来

わたしはフェルディナンド様を連座から回避させる為に、王の養女となった。
そして今は、次期王であるジギスヴァルト王子の第三夫人として、貴族院にあるアダルジーザの離宮で軟禁生活を送っている。
というのも、地下書庫の奥にあるグルトリスハイトをわたしが手にしているから、王族はわたしを確保しておきたいのだ。
(それも無理矢理取らされたんだけどね)
本来であればわたしの立場は、ユルゲンシュミット中の誰も持ち得ていないグルトリスハイトを所持している時点で正当なツェントの筈なのに、周囲はその状況を良しとしてくれない。
かと言って簡単に王族の誰かに渡せる代物でもない為、表面上、今の王族が普通に統治出来ているのを見せ掛けながら、影でわたしがグルトリスハイトを用いてツェント業務を熟しているという訳だ。
本音を言えば、下町の家族に一目会う事もままならない今の状況は苦痛以外の何物でも無いわけだけど、フェルディナンド様を救える事が出来たと思えば、今の状況も自分なりに納得できる筈だ。
「如何致しましたか? ローゼマイン様」
「いえ、何でもありません」
見張りの一人として付いている中央の側近のが、ふぅ、と溜息をついたわたしを見咎めてきた。
(上手く誤魔化せたと思いたいけど、相手も目敏いな)
もう一度、溜息が漏れそうになったのをグッと堪えながら、今日の日程をリーゼレータに尋ねようと顔を上げた──正にその時、
「グオオオオオオ…ッ!!」
今まで聞いた事がないような、大きな獣の声が辺りに響き渡った。思わず自分の耳を押さえたけれど、辺りを震撼させる重低音な唸り声は今も続いている。
「警戒態勢!!」
筆頭護衛騎士のコルネリウスの掛け声に、周囲にいた護衛騎士達が即座にわたしの守りを固める。
わたしも慌てて椅子から立ち上がったけれど、その時には誰を見回りに向かわせるか、誰が主を守るのかをコルネリウスが直ぐ様決め、指示を出し終わっていた。
「ローゼマイン様はこのまま待機を──ッ!?」
「きゃあああっ!!」
「うわっ」
唸り声が収まったと思いきや、今度は断続的な地震が建物を襲い、机の上にあったティーカップの中身が派手に零れた。
護衛騎士の一人が窓の外を窺い見る。瞬間「うわあぁっ!?」と悲鳴を上げて後ろに後退った。その顔は真っ青だ。
「どうした!!何があった!?」
「ま、魔獣です!!それもとても巨大な!!」
そう叫んだと思いきや、バリバリバリッと雷でも落ちてきたかのような物凄い音と共に、天井に大きな穴が空いた。
「きゃあっ!?」
穴から覗く隙間から大きく見開かれた瞳孔と目があった気がした。それは思い違いでも何でもなく、少し距離を取った目の前の巨大な魔獣はわたしを視界に収めたまま離そうとはしない。
「先程の唸り声と揺れの正体はコイツか」
ラウレンツが漏らした声に、その場にいた誰かが生唾を飲み込んだ。
ラウレンツの推察は恐らく正しい。目の前の魔獣の大きさはわたし達がいる三階建ての建物よりも頭一つ分大きく、相手が少し足踏みしただけでもかなりの揺れを感じられる。
一体何故こんな所に、と一瞬考え込みそうになるが、それよりもまずは防御だ。
わたしは風の女神シュツェーリアに祈りながらシュタープに魔力を込めていった。


本好きの下剋上の夢だったけど、建物の造りがハリー・ポッターの世界観みたいだった。
そんで、何かもっとハルトムート辺りが色々と暗躍したり、フェルディナンドがローゼマインを心配して貴族院まで助けに来たり、ローゼマインが国の礎に籠もったりしてたと思うけど、思い付く限りではこんなもんだと思う。兎にも角にもコルネリウスが黒いマントをしている姿がカッコ良かった!そりゃレオノーレが惚れる筈だわ。

2023.11.28 08:17

ストーカーナイト

全問正解の答案用紙片手に私は一人、城の渡り廊下を駆けていた。
どこに向かってるかなんて、そんな事決まっている。
「エドワルド!」
辿り着いたとある部屋の扉の前。そこはこの国の騎士団で団長職を勤めている男の執務室で、私は扉を開けるのと同時に、この部屋で一人、書類仕事をしていた男に歩み寄った。
「見てこれ!この答案用紙!あの出会い頭に難問を吹っかけてくるので有名なゾルディック先生の問題を全て解くことが出来たのよ!」
「それはすごいですね、姫様」
エドワルドが手放しに褒めてくれる様子に、私はとても嬉しくなった。
「エドワルドのおかげよ!この前、ゾルディック先生がよく出題する問題を教えてくれたじゃない」
「それでも、です。教えたからといって、すぐに身に付く事でもありませんし、いざその時になっても答えられない事もよくあります。それをちゃんと回答出来ておられるのですから、姫様は頭がよろしいのですね」
「エドワルド…」
私は顔が赤くなるのを自覚しながらもエドワルドにお礼を言うことにした。
「ありがとう」
と。
彼も笑顔で答えてくれて、尚更嬉しくなったのだが、まさかその彼があんなおぞましい事を行っていたなんて、この時の私は夢にも思っていなかった。



それは、城下が夕暮れ色に染まるある日の事。
私はエドワルドの執務室の前で立ち尽くしていた。
「姫様。どうしてこちらに‥‥」
信じられないという風に目を見開きながら尋ねてくる彼の手には、何枚もの私の写真が握られていた。
そのどれもがカメラ目線に目を向けていない、所謂──盗撮写真だった事に愕然とする。
「それはこちらの台詞です。なぜ、どうして、貴方がこんな事を…!」
「姫様!誤解です!」
慌てて縋り付いてこようとするエドワルドは拍子に近くの脇机へとぶつかり、その机上にあった何枚もの写真をも床へと落としていった。
全て──私自身が写ったものだった。
毎日鏡で確認しているそのままの──。
「‥‥信じていたのに」
これが裏切られるという事だと初めて知った。
「誰よりも一番、信頼してましたのに‥‥!」
これが失恋という感情だと、後から気付いた。
「姫様…っ!!」
「貴方を騎士団から除名します。今すぐ、この国から出て行って下さい!!」
私は涙を流しながらも、元騎士団長であったその男を罷免する。
最早何も信じることは出来なかった。
嗚呼、どうして私はこんな男を慕ってしまったのか。
自分自身に問い掛けてみても答えが出てくるわけもない──。


ストーカーをする騎士団長って感じの夢。
見ていた私もビックリした。

2023.02.28 07:37

君しか目に入らない

目が覚めると、全身を温かい何かで包まれていた。
トクン、トクンと優しい鼓動が耳のすぐ側で聞こえてきて、その音色が幼い頃に母と一緒に眠った時に聞こえた鼓動の音によく似ていて、何だか懐かしく感じた。
心休まる思いで、私は内心「お母さん」と呼び掛けながら、目の前の存在をしっかりと抱き締め──、
「いたっ、いたた!朝から情熱的だなぁ、もう」
聞き覚えのある男の声が聞こえて、すぐに飛び起きた。
「な、ななっ!?」
混乱は一瞬。一気に覚醒した頭で目の前の状況を把握した私は、諸悪の根源たるソイツを指差して叫んだ。
「なんでアンタが私のベッドの中にいてるのよ!?」
「そりゃお互い婚約者同士なんだし、一つのベッドで寝ても可怪しくないでしょ?」
「婚約者同士は未婚同士はでしょ!?貞操を守らせてよ!!」
捲し立てる私に「えー」と抗議の声を上げるこの男は全く意に介していない。そのお綺麗な顔面にパンチしてやりたい。
──けれど悲しいかな、そう出来ない理由が私にはある。
「もう観念して僕の愛を受け入れなよ」
「受け入れた瞬間、私の貞操が無くなりそうで怖いわ」
「えー、そんなこと無いでしょうよ」
この男と私は所謂、幼馴染という間柄なのだ。
父の事業が失敗して折り、私がこの男の家に身売りする形で何とか我が家は保っている状態だ。この男の気分次第では我が家はあっという間に路頭に迷ってしまう。
幸いにして私の父とこの男の父とは親友同士。滅多な事は無いと思うが、用心するに越したことはない。
それに、こう言っては何だが、この男結構なプレイボーイである。
私を婚約者と銘打ってはいるが、実は私を含めて4人も婚約者がいたりする。しかもその最後の4人目がこの私なのだ。
どれだけ、愛してると連呼されたとしても、他に同じ甘い言葉を囁いた相手が3人もいると分かれば、百年の恋も一時に冷めるというものだ。
けれど、これもお家の為。背に腹は代えられない…!!
「ほら、早く起きて。学校に行くんでしょ」
「そうなんだけどさー、もうちょっと二人だけで甘い蜜月に酔いしれない?」
「は?何言って──」
そう口にした瞬間、私の視界は反転した。
いや、今の立ち位置が逆転した。
「ちょ、な…!?」
目を白黒させる私の目の前には幼馴染の男。その男にベッドに押し戻されたのだと気付かされるまで、少し時間が掛かった。
「ほうら、体の力を抜いて。僕に身を委ねて」
「何朝っぱらから盛ってんのよ!?早く退いてよ!!」
「だ〜め」
覆い被さってきた男に慌てふためきながら、私は何とか距離を保とうと胸を押し返してみた。
だが焼け石に水。徐々に近付いていくお互いの距離に、もう駄目だと覚悟を決めそうになった、そんな時に思い掛けない救いの手が部屋の外から差し伸べられた。
「坊ちゃま、朝餉の準備が整いましたので、リビングの方まで足を運んで下さいまし」
この男の乳母にして、この家の家事の一切を取り仕切っている女性──通称、ばあやさんだった。
「ああ、助かった…」
私は心底安堵しながら、直ぐ様男の腕の中から抜け出して部屋を飛び出た。
いつまたこの男に襲われるか、分かったものではないからだ。
「…ばあや、出来ればもう少し待っていて欲しかったんだが」
「はあ…?」
後ろから、そんな話し声が聞こえてきた気がしたが構うものか。
「全く、あの男はいつもいつも…」
洗面所で顔を洗いながらも口から出てくるのはあの男の不満ばかり。
婚約者になるのだからと、あの男と共に別宅に住まわせてもらっているが趣きがあり、どこか懐かしい日本家屋のこの家も今は癪に障って仕方がない。
はあ、と大きな溜め息を漏らしながら、ふと通路の小窓から見える景色が目に留まった。
いつもの代わり映えしない庭園の筈だった。なのに視界に映る庭先には見覚えのない小さな花が咲いていた。
野菊だ。白く小さな愛らしい花。
何の変哲も無い野花が何故、隅々まで手入れが行き届いたこの家の日本庭園に?いや、それよりも、妙に惹き付けられてしまうのは何故なんだろう。
先程から私は、じっと野菊を見つめている。
ううん、そうじゃない。野菊が私を見つめているんだ。
視界が狭まり、野菊しか目に映らなくなっている事に気付いた時には、これが呪いの類いであると察しが付いた。
でももう遅かった。
いけない、と頭の中で激しく警鐘が鳴っていたとしても、身体が言うことを聞かないのだ。
喉が狭まり、呼吸が浅くなってくるのを感じて──、
グシャ、と。
何かを踏み潰したような盛大な音が聞こえたと同時に、混濁していた意識がハッキリとした。
「あれ?私…」
その筈なのに、今まで何をしていたのか、というか何を考えていたのか、全く何も思い出せない。
視界の先であの小憎たらしい男が、何かを何度も何度も踏み潰しているのが見えた。自分の家の庭先で何をしているんだ?
「朝ご飯、食べに行こう?ばあやが待ちくたびれてるよ」
幾分スッキリとしたような顔立ちで庭から廊下に上がり込んで来る。
っていうか、アンタはいつの間に外に出てたんだ?
「う、うん…、?」
イマイチ納得出来ないまま、私はこの男と一緒にリビングに待つばあやさんのもとへと向かった。
まだ眠いのか、ぼんやりとする頭を押さえた私の隣で「僕が君を守ってあげるからね」と男が呟いた気がした。


夢の中では婚約者その1,2,3も出てきていたけど、話を書く上で然程重要でもない事に気が付いたから割愛しました。
というか、本当は学校まで行った後に呪いが発動して婚約者殿が助けていたけど、マジで長くなるからこれも省略しましたよ。
婚約者が複数人いたとしても、男の目は4にしか向いていなかったから、何か深い理由があったに違いない。

2023.01.10 20:04

貞操概念崩壊授業

相澤先生付き添いの元、上鳴と旅行へ出掛けた日の事だ。先生が特別授業だと言って、私と上鳴を部屋に呼び出した。
いつもの授業の一環だと思っていた私達だったが、その考えが甘かった。
「いいか、今から女を喜ばせるのに必要な事を教える」
「は?」
「うぇ!?」
一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。いや、理解したくなかったのだと思う。
硬直する私と顔から火が出そうな程に赤くなっている上鳴を横目に相澤先生の講義は尚も続く。
「女を喜ばせる為には、まず隈なく触れ」
「さ、さわ!?」
「そしてその中で一番感じていた場所を容赦なく攻め立てろ」
「容赦な、うぇ!?」
真剣に説明していく相澤先生とは対象的に、初心な上鳴は最早裏返った声しか出せていない。
これはもしや、上鳴の反応を面白がっているのか?と困惑する私を余所に、ジリジリと真顔で私に近付いてくる相澤先生。
そんな彼に対して、身体が勝手に拒否反応を示したのは言うまでもなかった。
「させるか!」
「っ!?」
後ろにある出入口のドアに向かって走り出したその瞬間、既に私の腰には相澤先生お得意の白い布が巻き付いていた。
徐々に自分の方へと引き寄せていく先生のその血走った目の奥には異様な執念が見て取れて、私は恐ろしさに顔を引き攣らせる。
「こ、こんな講義、別に私が受けなくても良いでしょう!?」
「駄目だ。そもそもこの講義は相手がいなけりゃ始まらん」
その返答に、私の血の気がサアっと音を立てて引いていく。
「それって…つまり…」
「ああ、そういう事だ。 おい、どうした上鳴。まさか怖じ気付いたのか?」
急に話を振られた上鳴はビクリと身体を震わせる。だが、そもそも未成年の彼にとっては未知の領域の話だ。何をどうすれば良いのかちんぷんかんぷんである。
「だ、だってよ…。触れって言われても……ど、どこをどう触れば…?」
「──良し。まずは俺が見本を見せる。お前は俺の触れた場所に添って触れていけ」
そう言うが早いか、先生の顔がぐるんとコチラを向いた。少しでも距離を取りたいが既に身体は先生に拘束されていて身動き取れない状態だ。
じりじりと私の顔に先生の影が射していくのを黙って見ているしかない。
「あ、あの…、せんせ…待っ…」
「もう観念して、お前はじっとしていろ」


ヒロアカの夢なんだろうけど、目覚めた時、これホントに相澤か?と疑問に思ったのは言うまでもありません。

2022.08.26 13:51

人間と天使

『人間の中に天使が紛れている』
そのお告げを信じ、人間の世界を一人で同族を探す女天使がいた。
だが、お告げの内容が嘘か真かも分からず、遂には大勢いる人間達に女天使は捕まってしまった。
鎖で繋がれ、見世物という辱めを下等な人間から受け続けて、彼女は徐々に疲弊していく。
そんな女天使を憐れに思い、世話を始めた一人の男の子がいた。
始めは心を閉ざしていた女天使も彼の献身的な態度に、徐々に惹かれていった。
やがて二人の間には愛が生まれ、男の子は女天使を隙を突いて逃がしてあげようと思うようになった。
そしてある晩、男の子は女天使を解き放ち、女天使に故郷へ帰るように諭した。
だが、彼女の心には男の子と離れ離れになるという考えは最早存在せず、彼を浚うことを決意する。
「貴方が人でも天使でもどちらでもいい。私と共に生きて欲しい」
その言葉に、男の子は満面の笑みで頷いた。これから自分達に降り掛かるであろう苦難など平気だと言わんばかりに。
斯くして女天使の住処に辿り着いた二人は、その足で儀式の間へと赴いた。
男の子が人でも天使でも構わないという思いは勿論あるが、念の為という事で、彼が天使であるかどうかの確認の儀式を行う事になったのだ。
儀式の間の真ん中には複雑に描かれた一つの魔法陣が淡く光っており、その周囲には元は人間だったのだろう大量の骸が山となっていた。
男の子はその残骸に少しも躊躇せず、女天使に続いた。そして中央の魔法陣の上に立って一つ深呼吸をすれば、男の子の姿が見る間に変わっていった。
背や手足は伸び、何もなかった背中からは大きな二つの羽根が生えていく。
気付けばそこには一人の男天使が姿を現していた。
彼こそが女天使がずっと探していた同族の天使その人だったのだ。


夢を見ていた筈の私も思わず「お前かー!!」と叫んでしまいました(笑)

2022.07.12 17:07

得手に帆を揚ぐ

白石は同じ中学校にいるサッカー部のマネジャーに恋していた。
彼女とは何の接点もなく、ただ遠くから眺めている日々だったが、ある日転機が訪れた。
サッカー部とテニス部の試合会場が同じ場所で行われる事になったのだが、その会場で電脳汚染が発生したのだ。
会場にいる義体化の選手達からは次々と異常が見付かり、このままではドーピングの疑いで出場停止処分となる学校がどちらの競技にも続出してしまう。
マネジャーもハッキングしている場所の特定や義体化の誤作動を起こしている選手のケアなど、手を尽せる所はチームメイトと協力して施していくが、やはり根本的な原因が解決出来ずにいた。
「お願いだから、手を貸して!」
周囲にいた人間にも助けを呼んで、人手を増やしていくマネジャー。
ちょうど近くにいた白石にも彼女は必死に懇願した。
真っ直ぐに目を見て真摯に請う。そんな彼女の姿は、白石にとって願ってもなかった。
「ああ。任せてぇな」


攻殻機動隊×テニプリのパロディな話だったな。
GW中に攻殻機動隊の全シリーズをイッキ見した影響だろうけど、結局どういう事なんだ?と見た本人もよく理解してなかったりする。

2022.05.24 03:07

バビロン攻城戦

とある巫女かいた。
託宣で王を導き、これまで国を潤してきた巫女が。
だが今回の託宣は「隣国が攻めてきて王が殺される」というものだった。
この国の民達は王を愛していた。そして巫女も王を愛していた。
「私達に構わずお逃げください」
「王が逃げるわけにはいかぬだろう!」
断固として拒否する王を巫女は城の窓から無理矢理突き飛ばした。それは敵兵が城へと攻め込んできたのと同時だった。
王を取り逃がしてしまった隣国の王だったが、城を手に入れた事に満足し、そのまま城を占拠した。
傍若無人な振る舞いをする隣国の王とその兵達。特に王と王の側近の兵二人の横暴は凄まじく、その国の民達は苦汁を味わう日々を送っていた。だが、自分達の王を逃す選択をしたその国の民達は誰もその事を後悔してはいなかった。
ある時、神の泉として神聖に扱っていた国の神泉を隣国の王とその側近二人が水浴と称して穢してしまった。
巫女は怒り、彼等を批難すると、側近の内一人が「粛清だ!」と叫んで巫女に襲い掛かった。
ニヤニヤと笑う三人の男。だが彼女は少しも動揺を見せる事なく、軽く右手を上げて側近の一人の命を奪ってしまった。
それまで晴れていた空から雷が落ちてきて側近の身体を貫いたのだ。
神のような力を用いて同僚を殺された事で、残った側近の顔に緊張が走る。けれど隣国の王の表情はにこやかなままだった。
それ所か、
「お前も能力者だったのか!」
ととても喜んでいる。
「何を…」
眉を顰めた彼女だが、その身体が突如、硬直したように動けなくなってしまった。
目を見開く彼女。見れば巫女の周りには白い光の線が無数に走り、それが彼女の身体を拘束していたのだ。
それも普通の光ではなく、徐々に身体の力が抜けて痺れてきている所を見るに、巫女の力を奪っているのだろう。
「気に入った。今からお前は俺の物だ」
と巫女の唇に口付けを落とす隣国の王だが、巫女の意識は既に薄れてきており、ただただ世界が暗転していくだけだった。
──だがその時、
「ふざけるな!!巫女を離さぬか!!」
民達や巫女に逃され、そのまま行方知れずになっていた筈のこの国の王が隣国の王の前に現れた。
この国を、そして巫女を隣国の王から取り戻す為に──!


国の王の名前が何故か右叫(ういきょう)さんって呼ばれてた気がする。中国人みたいだな。
でも世界観はエジプトとジャングルを足してニで割ったような感じだったので、すげぇチグハグ。

2022.02.14 07:44

(悠遠の願い)4/2,598,960

「ならば、このDIOが勝った暁には悠を貰うぞ!!」
悠の胸のド真ん中を指を差しながら、DIOは承太郎に向かって宣言する。
何を言っているのか、と目を見開く悠にも構わず、DIOは彼女の肩を抱き寄せてその腕の中に閉じ込めた。
「な、何を…!」
「嗚呼、楽しみだ。もうすぐお前はおれの物になるんだからな」
熱の籠もった両の目が悠を真っ直ぐに射抜く。何故そんなにも自分に執着するのか分からない悠は、恐怖でゾクリと背筋が震えた。
「お前に悠はやらねェ。ポーカーで勝負だ!!」
持っていたトランプを承太郎はDIOに突き付けた。
それをDIOはニンマリと口角を上げて嘲笑う。
どちらもポーカーゲームにはかなりの自信があった。負ける筈がないと、お互い自負する程に。
公平を期す為に悠がトランプを配る事になったが、彼女の手は先程から震えていた。
承太郎に勝って欲しいが、どうしたら勝ってくれるのか。今ここで承太郎の手札に良い役を忍ばせた方が良いんじゃないか。
悠は内心、画策していたが、目の前のDIOには全て見通されていた。
ぐいっと腕を引き寄せられて静かに耳打ちされる。
「お前が何かを画策すれば、その瞬間、お前はおれの物だぞ」
絶望の言葉が悠の心を締め付ける。悠は、ぎゅっと目を瞑り、次に瞼を開いた時には覚悟を決めていた。
二人の眼前に均等にトランプを配り、彼らの勝負の行末を見つめる。
「おれはこれで勝負をする」
「俺もだ。これで良いぜ」
二人が役を決めた所で、DIOがバンッと机の上に持っていたトランプを叩き付けた。
「ロイヤルストレートフラッシュだ!勝負あったな、承太郎!これで悠はおれの物だぁ!!」
言い切るやDIOは真っ青な顔をした悠を抱き締めた。厚い胸板が悠の全てを捕らえて離さず、悠は唇を噛んだ。
だがその瞬間、「待ちな!」と承太郎が大声で自分の手札をDIOに突き付けた。
その手札の役は──、
「俺もロイヤルストレートフラッシュだ。この勝負、引き分けだな」
不敵な笑みをみせる承太郎。しかも彼らの手札を見てみると、DIOの役はジョーカーが使われているのに対して、承太郎の役は完璧なロイヤルストレートフラッシュだった。
彼の勝負強さに唖然とする悠と憎々しげに歯噛みするDIO。
そして承太郎は華麗に宣言した。
「もう一度勝負だ!」


冷静に状況を整理してみれば、三人共こんなキャラじゃないのでは?と自問自答してしまう夢でした。

2021.12.22 11:48