ばかだな、ほんとうに

※現パロ




電気は全て消され、カーテンが閉め切られた教室。1番後ろの窓際の席から授業で流されている映像をぼーっと見ていた。
それは、感情を持つロボットが人間に捨てられるというアニメで、今までその映画を見たことがある者はこのクラスには居ないようだった。
ロボットに感情移入したのか、先程からあちらこちらで女子のすすり泣く音がする。

ロボットが人間にすがりついて泣き喚くシーンで、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。

続きはまた次にね、と赤い目をした女の担任が映像をとめる。

次々とカーテンが開かれる音に促されて私も席を立ち、1番近い窓にかかるカーテンと窓を開けた。

心地いい風が気持ち良くて、そのままぼんやり校庭を見ていると、呼び掛けるように肩を叩かれた。

「昼飯買いに行くんだろ?」
「何だ、お前か」

振り返ろうとしてやめた。
私は、幼馴染みのこいつには気を使わない。

振り返らないのを不審に思ったか隣に並んで来たこいつは、無遠慮に顔を覗いてきた。

「…泣いてんのか?」
「…」

不意に悪戯心が湧いて騙してやろうと思い至り、袖で目頭を押さえて鼻をすする真似をした。

すると、またカーテンが勢い良く引かれる音がして、何事かと顔を上げる。
するとどうやらカーテンを引いたのは文次郎らしい。

「何をやっている」
「は…」

そこはまるで2人の存在を教室から隠すようにカーテンで覆われていた。

私はその行動の意味が分からず、目の前で焦ったような顔をしている男を見つめ、
「?」と首を傾げた。

「泣いてねえのかよ!」
「この私がそんな簡単に泣いてたまるか」

しれっと言ってやるとひどく意外そうに目を丸くしている。

こいつの意図が、少し分かったような気がした。

気まずさとほんの少しの照れを振り払う様に「狭いわ阿呆」と不満を口にしてから、さりげない様子を装ってカーテンを元の位置に戻す。

「こんなに簡単に騙されるなんて、お前の将来が心配だよ。私は」
「うるせぇ。折角人目から庇ってやったのに」
「庇った?お前は入って来ていたじゃないか」
「俺はいいんだよ」
「…日本語が通じん」
「俺は、見たかったからいいんだ」

何を、と聞く前に文次郎はこの話題に興味をなくしたのか、教室を出ようと歩き出した。

こいつのことだからきっと深い意味はないのだろう。

ならば問い詰めても虚しいだけ。

(叶う訳もない想いをいつまで経っても捨てきれないなんて。…不毛な)

背中を追って歩きながらふと顔を上げる。と、いつもより赤いような気がするその耳。

不覚にも期待に胸が高鳴るのを感じ、力強い風に背中を押され、
早足で歩いて奴の隣に並んだ。




end.

お題お借りしました。
「ひよこ屋」




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