C

※オリキャラ♂登場
※女の子な久々知も出てきます









本館の3階にある講堂に向かって階段を上る。すると、2階に上がったところで人だかりに進行を阻まれてしまった。どうやら講堂の入り口から列が伸びているようだ。

人が一ヶ所の入り口に集まるときは、先頭の一人だけでも動作に時間がかかってしまうだけで、その後ろに影響が出るものだ。交通渋滞が発生するのと似ている。

人の流れに従って少しずつ階段を昇っていると、不意に背後からポンポンと肩を叩かれた。

「?」

振り返るとそこには見覚えのない男が2人居て、そのどちらもがニコニコと愛想よく微笑んでいた。どちらも明るい茶色の髪をしていて、耳にはピアスが数個ぶらさがっている。
何だかこいつら、似ている、と感じながら観察するように彼らを見る。
こちらの方が上段にいるが、目線の高さはあまり変わらない。

「こんにちはー」
「ここの娘だよね」

いきなり馴れ馴れしく話しかけられても不信感しか抱けない。こちらに親しくなろうという気は毛頭ないため、あまり目を合わせないようにしつつ「そうですけど…」と単調な口調で返した。

「俺ら男二人で淋しいんだよね。良かったら一緒に観ない?」

「…すみません、あとから友達と合流するので」

この狭い人だかりの中を無視して去る、なんて芸当は出来そうにない。一応軽く頭を下げてそう言っておく。
しかし彼らもどうしても遊び相手が欲しいようで、なかなか引き下がってくれない。

「じゃーその友達も一緒に回ろうよ。駄目?」
「聞いてみないと。でも駄目かも」
「俺たち可哀想じゃない?あはは!」
「はは…」

少しずつ前進しながら、答えるときには振り返って、そうしているうちにようやく入り口が見えてきた。

「ねぇ好きなもん奢るよ、何食べたい?」
「今は別に何も」

あと少しの距離が随分遠く感じる。
この少しの時間で精神的にやたらと疲れてしまい、苦笑を返す気力すら枯れてしまいそうだった。

「ね、そう言えば名前何ていうの?」
「ほんとだ、聞いてなかった!」
「こっちは、俺が塚原で、こっちが山本ね」
「よろしく〜」

名前をお前達に教えて私に何のメリットがある?
口を開けば冷たい台詞が出てきそうで、静かに呼吸を繰り返して己を落ち着かせた。

「立花先輩」

仕方なく名字だけを答えようとしたとき、背後から聞き覚えのある声がかけられた。
いつの間にか近くにいたのは、2年の久々知兵助だ。長い睫毛の下から覗く真っ黒な瞳が、咎めるように階上から私を見下ろしている。

ふわふわの長い黒髪はポニーテールにされていて、首からは『生徒会副会長,久々知兵助』と書かれた名札がぶらさがっていた。

「私との約束をお忘れですか?」

ぐいっ、と強い力で腕を引かれた。久々知が器用に人をかき分けて作った空間に引き込まれる。

「あ…ああ、悪い」

振り返るとキョトンとした男が2人、突然の展開に何も言えないでいた。
軽く会釈だけをして、久々知に引っ張られるまま、人の間を一気に通り抜ける。
入り口の近くに出ると圧迫感から解放され、ほっと息をついた。

「大丈夫ですか?」
「人混みは苦手だが、これくらいなら大丈夫…」
「そうじゃなくて。体を触られたりしませんでした?」

逃さぬ、とばかりに私の手首を掴む久々知に真っ直ぐ見つめられ、ああやはり助けてくれたのだ、と知れば何だかくすぐったいような温かい気持ちになった。

「ああ。会話をしていただけだからな」
「会話を…。もしかして私、余計なことを」
「いいや、助かったよ。ありがとう」

久々知は一瞬不安になったようだったが、私が首を横に振るのを見て自信を取り戻したようだ。礼を言うと、彼女は照れたように私から目を逸らし「何もなくて良かったです」と返してくれた。















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