(お題配布元:確かに恋だった様)
「クラウドが酔うなんてめっずらしー。」
「まさか何か混ぜたんじゃねぇか、ティファ。」
「そ、そんなことしません!」
たまには皆集めて飲むか、そんなクラウドの言葉から全てが始まった。
そして今日、セブンスヘブンの閉店後、子どもたちを寝かしつけた私は簡単な料理やお酒を振舞っていたわけなんだけど…どうしてこうなったのかな。
「も、もう。クラウド、起きてよ。」
彼を揺り動かしてみるけど、腰に巻きついた手はびくともしない。
そう。今彼は椅子に座った私の足元に膝立ちして腰に抱きついている、という何とも奇妙な、寝づらそうな格好でいる。
「いーじゃん、寝かせとけば。」
「チト証拠写真でも撮っとくか!」
「ダメっ!それは絶対ダメっ!」
カメラを取り出したバレットに愛用のグローブをちらつかせると、…どうやら諦めたみたい。
そもそも私はクラウドの真正面に座ったはずだった。皆で料理をつまみながら談笑していたはずだった。
違和感を感じたのは数時間たったころだったかな。普段から言葉少なめの彼だけど、一層寡黙になったかと思えば、何故かじっと私の方だけを見ていたの。
最初は思い上がりかな、なんて思ってたけど…違う。それはもう熱いまなざしを向けてくるの、彼。
そして突然立ちあがって、お手洗いかと思えば、何故かこっちに来て―――
今に至る。
「にしても、どうしちまったんだろうな、コイツ。」
「疲れが溜まってたんだよ。クラウド、頑張り屋さんだから。」
言葉にあわせてナナキの尻尾が揺れた。
「それならベッドで寝ろよってな。」
「ほんま。膝痛くないんかいな。」
呆れ半分で呟いたシドにケット・シーが同意する。
…うん、私もそう思うわ。
「クラウドにとってはベッドよりティファに癒し効果があるってことだ!」
「…間違いないな。」
バレットの発言にシドと、そして今まで黙っていたヴィンセントさえも頷いた。
…ぜーったい、私は同意しません!
「いや〜、お熱いこった。」
好き勝手に笑う仲間たちを見て溜息をつく。
もうっ、クラウドのせいよ!あとでお仕置きなんだから!
「…クラウド?」
不意に腰あたりでもぞもぞと彼が動き出したことに気が付き声をかけると、寝ぼけ眼の彼が見上げてきた。
「…ティファ。」
そして、巻きつけていた腕を緩め、少しふらりとしながらも立ちあがった彼はようやく離れてくれるのかと思いきや。
「………!?」
「…おーおー、見せつけてくれるねぇ。」
「………お、オイラ見てないよ!」
いつの間にか私の唇は奪われていた。
お酒独特の匂いが香る。アルコールのせいで少し赤い顔のクラウドと、クラウドのせいで真っ赤な顔の私を見て、周りが沸いた。
「ティファ…。可愛い。」
「…っ!?」
新手のいじめなのかと思うほど、羞恥心が込み上げる。
その込み上げた気持ちをそのまま大声に替えた。
「人前でイチャつく趣味はありません!!」
「2階行こう、ティファ。」
「え?」
「人前じゃなければいいんだろ?」
(ああ言えばこう言う…!)
END