(お題配布元:確かに恋だった様)
「わぁ!ティファ、すごぉい!」
「おいしそ〜!なぁ、食べていい?」
家の中に満たされた甘い香りに、二人の子供たちの笑顔が咲いた。
これだからお菓子作りもお料理もやめられない。大好きな人の笑顔が見られるんだもの。
「ふふ、ありがとう。マリン、デンゼル。じゃあ皆で食べよっか。」
「さんせ〜!」
元気よく手を挙げた子供たちを見て私もつられるように微笑むと、デンゼルにはクラウドを呼んでくるように伝えた。
勢いよく階段を駆け上がっていった小さな背中を見送ったところで、マリンに振り返る。
「マリンは準備、手伝ってくれるかな?」
「もちろん!」
そんな穏やかな昼を幸せに思いながら、子供たち用のジュース、私とクラウド用にコーヒーの準備をし始めた。
そして、デンゼルに連れられてまだ眠そうなクラウドが1階に下りてきたのは20分後のこと。
「クラウドもデンゼルもおそーい!」
マリンが冗談半分に笑いながら指摘すると、クラウドがバツの悪そうな顔をした。
「だってさ、クラウド起きねーんだもん!」
「って言われてますよ、クラウドさん。」
「…返す言葉が見つかりません、ティファさん。」
待ちかねていたマリンが一つのトレーを運ぶ。私もまた残りのトレーを持って後に続いた。
「ティファ特製のシュークリームとコーヒーセットでございます!」
そう言ったマリンはもう、小さくても立派なウェイトレスだ。
「「「「いただきます!」」」」
デンゼルとマリン、その向かい合わせに私とクラウドが座り、皆それぞれに飲み物とシュークリームに手を付けた。一応毒見はしたけど…それでもやっぱり皆の反応が気になるのが作り手の性。
私はシュークリームには手をつけず、コーヒーを飲みながら皆の反応を待つ。
「ん〜っ、おいし〜!」
「このカスタードクリーム最高だ!」
綻んだ3人の顔を見てほっと息をつくと、ようやく私もふんわりと焼きあがったそれを手に取った。
ぱくり、と口に含むと、鼻先に冷たい感覚。
「あはは、ティファ、子供みたーい!」
子供たちからくすくすと笑い声が漏れる。どうやら勘違いではなく、クリームが鼻の頭についてしまったようだった。
恥ずかしさを紛らわすように照れ笑いを返しながら、隣に座るクラウドの近くにあるティッシュへ腕を伸ばすと目があった。
彼も喉の奥で笑っている。
「も、もうっ、クラウドまで!」
「い、いや、…くくっ、可愛くてつい。」
笑いに混じって漏れ出た言葉に体温が上がった。
慌てて目を逸らしながら再度ティッシュを取ろうと腕を伸ばす、が、同時に、クラウドがティッシュボックスをずらした。
遠ざかったそれに不満の声を上げる。。
「あ…っ、ちょっと…!」
「なくても大丈夫だ。」
クラウドの言葉の意味を図りかねている間に、いや、考える間もなく、私の顔に影がかかった。
そして、生暖かい感触が鼻の先をぺろり、と。
「〜〜〜〜〜!?!?」
「ふぅ、おいしかった〜。ティファ、ごちそう様でしたー!」
「マリン、外遊び行こうぜ!」
「うんっ!」
子供たちは何事もなかったかのように出て行ってしまった。
飄々としている彼を睨みつけると、一言。
「甘いな。」
恥ずかしくないんですかそういうの
END