Long | ナノ






付き合ってたのかも分からない。





そもそも両想いだったのかもわからない。





それでもわたしはアイツの事……―――





泡沫の夢、泡沫の恋
前編 ―今―











ぶっきらぼうで、俺様で、それなのに優しいの。



それがアイツ、サイファー・アルマシーだった。





***





「見ーっけ。」
「…!」



バラムの防波堤。
釣竿片手に横にバケツを置いて腰を下ろしている彼に近付いた。



「やっぱりここにいた!」
「…いけねぇのかよ。」
「ううん。相変わらずだなぁーって思って。」
「……。」
「昔からサイファーって暇な時はここにいるよね。それから、ヘコんでるときも。」
「…何しにきたんだよ。」
「来ちゃダメ?」



わたしはサイファーの隣に膝を抱えて座り込む。魔女をめぐる戦いを終え、流石に堪えているのか、そう簡単に目を合わせる気はないようだ。



「…アイツの所に居なくていいのかよ。」
「スコールのこと?今ね、忙しいんだ。いっぱい報告書とかあるみたいで。」
「…ふぅん。」
「だから勝手に来ちゃった。」
「……」
「ヤキモチかな?サイファー君。」
「…何言ってやがる。」



否定は、しない。



「色んな事があったね。」
「……」
「わたしに何か言うこと、ない?」



そう言うと、微かに彼の横顔に陰りが見えた。



「責任、感じてるんだ?」
「……」
「無言ばーっかり!スコールとキャラ被ってるぞ〜?」
「アイツと一緒にすんな。」



ボソボソと呟いた。
…らしくないなぁ。



「…怖くねぇのかよ。」
「怖い?」



ふいに口を開いたサイファーから出たのはそんな一言だった。



「あんな事があった後だぜ?普通近寄らねぇだろ。」
「怖くなんかないよ。」
「……」
「もちろんあの時も。サイファー自身のこと怖いなんて思ったことないよ。」



余程意外な返答だったのだろう。
わたしの言葉に眉間に皺が寄っている。




「あの時のサイファーは怖いんじゃなくて、可哀相だったの。…悲しそうな目。もう後には引けない、そんな目。本当はわたしが止めたかった。あんなサイファー見ていたくなかった。」



結局わたしは無力だったけど…と呟くと、口を閉ざす彼の眼をじっと見つめる。



「いつもはね、目が違うんだよ。」
「……」
「優しそうな目。…今も。」



怪訝そうな顔をした彼に思わず吹き出してしまう。



「いつも意地悪って言う奴は誰だよ。」



…分かってないなぁ。



「意地悪で、俺様で、ぶっきらぼうで、ひねくれ者で…。」
「…オイ。」
「だけど優しいでしょ?いつも。」
「……優しくした覚えはねぇな。」



あくまでもそう言う彼に笑みが零れる。



「やっぱり分かってない。」
「…?」



本当は優しいの。不器用なだけで。少なくともわたしにはそう感じたよ。
…そういう所はスコールと似てるかもしれないね。

そんなこと言ったら不機嫌になるから言わないけど。



「なんだよ、ニヤニヤと。」
「何でもなーい。」
「…お前も相変わらずだな。」
「えへへ。」



ようやく見ることができた彼らしい笑みに嬉しくなった。







prev / next

Back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -