黄色がかわいいです





講義が終わり、もう帰宅するのみ
大学の敷地を出るまでにも何気に歩かなくちゃいけなくて、講義が終わっているこの時間は人も多いしやたらとどこもざわざわしている
用事もとくにないし、図書館に寄るのもいいかもしれない。そんなことを思いながらぼーっと足元を見ながら歩いていると



「男子チアですっ!!!」


いきなり大きな声が響いてびっくりした
思わず顔を上げて音源をみる
煩い声は苦手なのに、胸にスッと入ってきたその声の正体はあの彼だった



バチッと彼と目が合う




人見知りで人の目を見るどころか、顔を見るのだって緊張してしまう私だけど、視線を反らせなくて真っ直ぐな彼の目で全身が痺れたような感覚に落ちた


「男子チアです!!部員募集してます!よかったらこれ!!!」


凄い笑顔で駆け寄ってきた彼が差し出した紙をやっとの思いで手を動かして受け取る
黄色が目に飛び込んできて


『男子、チア。』


ぽつりと呟いた声は周りの喧騒にかき消されて

我に返って顔をあげれば
彼はもう目の前にいなくて他の男の子に声をかけていた
一瞬だったのに、彼のあの太陽みたいに眩しい笑顔が去ってしまったことになんだか寂しさを感じてしまって




『黄色。かわいいな、このチラシ。』


ぐしゃぐしゃにならないように、丁寧に教科書と教科書の間に挟んで鞄にしまった








次の日もその次の日も、彼は大きな声で
あの笑顔で呼びかけていて
その隣には情報のときに隣に座っていた茶色い髪の男の子も恥ずかしそうに立っていて
仲良しなんだなぁとついつい観察してしまった

男子チア部員募集ってことは、女子はお呼びじゃないだろうしマネージャーとかに立候補できるほどの情熱もコミュニケーション能力も
「男子だけのチアなんですか?」と話しかける勇気すらもない

そのくせあの笑顔を見ていたくて
少しだけ離れた、だけどもバッチリ彼が見えるベンチに腰掛けてスマホを弄って人を待っているふりをしながら二人をナチュラルに覗き見する
自分やばいんじゃ、ストーカーの気があるのでは?と一瞬落ち込んだが考えないようにしてまた彼を見る

うん。やっぱり爽やかでかっこいいなぁ、目の保養かなぁ。見てるだけだし別に付き合いたいとかそんなんじゃないし、てか好きとかじゃ、そんな。一目惚れとか、そんなんじゃ、恋愛とかじゃなくて
ただ興味。そう、がんばってるから見てたいだけでって誰もいないのに凄い勢いで言い訳している自分に気付きまた落ち込む


次の日もまた大きな声で呼びかけている彼を横目で見る
さすがに今日は△も一緒だし、ストーカーは自重したいのでチラッとみただけで横を通り過ぎた

そのまま歩いていると、姿勢のいいシュッとした眼鏡の男子が立っていて彼はじっと動かない
目線をさり気なく追うと、男子チア部の二人を見ていて、もしかしてこの人興味あるのかな?と思ったけれども眼鏡の彼が動くことはなかった





私は理系で、例のチア部男子の子はたしか社会学部だから情報の講義くらいしか会わない
なのに彼らをここ数日よく目にする。彼らがそれだけ頑張って部員募集しているからか

それとも私が彼らのことが気になっているからなのか


そしてここ数日

あの眼鏡の子も目にする
それはもうチア部男子がいるとこに彼がいるってくらいに
あの人絶対チア部気になってるんだ


でもチア部二人は気づいてないみたいで


類は友を呼ぶってこれも含まれるのかな。

眼鏡君が二人に話しかけようとしてタイミングをみている間に二人が場所を変えてしまったりと、そういった眼鏡君の間の悪さを幾度となく目撃してしまった

そんな眼鏡君に気づいたわたしもたいがいだと自覚している


もしかしたら眼鏡くんと仲良くなれるのでは?という妄想すら出てくるくらいに逆に気になる


話しかけてみようか。となんだか妄想が行き過ぎて頭が麻痺してきた
ついGoogle先生に
【異性にナチュラルに話かける方法 大学生】で検索してしまいそうだ


完全に麻痺が進行していたとき
足元に黄色が落ちてきた
それは男子チア部のチラシで、よくみたら綺麗に折りたたまれてるけど、端がすこしだけよれてて


「すまない。」


ああ、彼が落としたのだな。とすぐに気がついた
ゆっくりと足元のチラシを拾って目の前の彼に手渡す


『男子チア部。興味あるんですか?』


やりましたよGoogle先生
私、彼に話しかけています


「きみも興味あるのか?」


近くでみると眼鏡くんは思ったよりも背が高いです













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