恋愛相談
最近、○の様子がちょっと変だ。
練習中はいたっていつも通りなんだけど
ふと休憩だったり、昼飯のときだったり。
何か悩んでるみたいで。
○は真面目だから考え込むイメージがある。
俺の事も、そうとう心配かけたみたいだし
俺を頼ってほしい。
○はいつもチームを支えようと一生懸命だ。
だから、そんな○を支えたい。
大事な仲間だから。
「○?何か悩みか?」
『え。そんなことないよ!』
「………ほんとか?」
『えっと、たいしたことじゃないの。全然。』
「たいしたことないなら、話すだけで楽になるかもだろ?ほら。」
『え、いや、…。』
「○こそ俺を頼れよ。」
『カズ………。』
こう言うと、頼らざるを得ないだろう。と逃げ道を塞ぐ。
「○。」
『はい、えっと、その………。』
「うん。」
『す、好きな人が、いるんだけど。』
「………へ。」
言いにくそうに、目を逸らしながら○が答える。
え!?そ、え、まじか。
「ちょ、あー、そ、そういう事か。」
『うん、それでちょっと考えてただけだから。』
「へぇー……。」
○も女の子だもんなぁ。と何だか納得した。
でも、あんなに考え込むって事は片思いってことだよな?
アプローチの仕方がわからない。とか?
もしかしたら連絡先の聞き方がわからない。とか?
ありうる。○恋愛免疫なさそうだもんなぁ…。俺が言えたことじゃないけど
「んで、何に悩んでるんだ?俺が相談にのろう。男子だし!」
やばい、ちょっと楽しいのは内緒だ。
女の子ってどんな事で悩むんだろうか。
『……。いま、チームがまとまってて、本番に向けて頑張ってる時期じゃない?』
ん?なんの話だ?
『そんななかで、恋愛にうつつを抜かすのは、その、誠実じゃないんじゃないかと。』
「は。」
え?どゆこと?
『もちろん、練習中は真面目にやってるよ!ちゃんとチームの為に何ができるかずっと考えてるし、でも、フッとしたときに頭を過ぎって、そういうのはよくないよねって。』
「は?○そんな事で考え込んでたのか?」
『だって、ほんとに私なりにちゃんとチームを支えたいの。』
いったいどういう思考回路なんだ?
「はぁ……○ってほんとに真面目だよなぁ。んでもって頭かたい。そんなもん、プライベートなんだから、全然好きなら好きでいーじゃん。トンなんか彼女いるし。モテたいからってチアやってるやつだっているくらいだぞ?」
『でも……チームかその人かってなったら、チームを選ぶつもりだったの。でも、最近その人もチームもどっちも大事にしたいって欲張りになっちゃって。』
「そんなもん当たり前だろ?どっちも大事にしたらいいだろ?練習で時間取れないってことか?」
『そういう事じゃないんだけど……。』
どうにも歯切れが悪い。
なかなか会えない。とかそういう感じか?
雰囲気的に付き合ってるってわけじゃなさそうだけど。
『でも、ちゃんと私がチームの力になれてるかわからないし、今はチームにとって大事な時期だし。』
「なんか、またうじうじしてんのか?○はちゃんとチームの力になってるよ。皆そう思ってる。皆そんな○をちゃんと見てる。だから、○の好きな人にもそういう所は伝わるよ。心配しないで、思いっきりあたってこい!」
『そ、そうならいいんだけど……。』
嬉しそうになったあとまたもじもじしだした。
ほんとにどうしたんだ?
『その……あの。』
「ん?」
『きゃ、キャプテンとして部内恋愛についてどうお考えですか?』
「は。」
『や、やっぱり今のナシ!』
○の顔が真っ赤になった。
そ、そういう事かよ!!え?誰だ!ちょっと、は?でも好きな人って片思いってスタンスだよな?
あれか?練習で、一生懸命なその姿にキュンてしちゃったってことか?
『わ、わたしはチーム皆を支えたくてマネージャーしてるの!別に恋愛がしたくてマネージャーになったんじゃないから。だから、その、別に付き合いたいとか思ってないの!でも…。』
ええー。ま、まじか。
それで悩んでるってことか?どんだけ真面目だよ。つーか馬鹿だな。
「そんな事より誰だよ!」
『そ、そんなこと!?』
「んなもん、○見てたらわかるよ。チームの為にいつも○は動いてくれてる。」
『でも……。』
「んー、キャプテンとして、部内恋愛は別にかまわないぞ。」
というか俺の父さんと母さんもコーチと選手だしな……。
○の事だから、恋愛でチームを引っ掻き回したりする事はないのはわかる。
こんな悩んでるくらいだ。○なりにチームのことを大切に思ってるって証拠だ。そして本当にそいつのことが好きだんだろう。
「で……誰だ?」
『そ、それはいいじゃん!やめて、ほんとに!!』
「あてていいか?」
『やめて!!ほんとにやめて!』
たまに、俺と○は付き合ってるのか?と聞かれることがある。
マネージャーだから、よく一緒にいるし
最初からいるから誰かの彼女なんだろう。と思う人もいるらしい。
最初は○の入った理由を聞いてちょっとドキッとしたし、照れたけど
すぐ恋愛感情を向けられてるわけじゃないのはわかった。
○は人のいいところをなるべく本人に伝えようと思っているらしく
よく、練習の後もここがよかった。とか
こういうところがいい所だよね。とか言う
普通に『凄い、かっこよかったよ。』とか言うし。
それがあざといって感じより
伝えたくて言ってる!って感じで
好感を持ってほしくて言ってるんじゃなくて
俺に伝えたいからそうしてるんだな。とわかった。
『なるべくその人に言うようにしようって思って。だって、自分の事をみてくれてる人がいるのは誰だって嬉しいし、そのことを思い出したら、落ち込んでもなんだか頑張れるくない?』
てくそ真面目なことを言っていた。
だからこそわからない。
誰の事を好きでもおかしくない感じもするし、誰の事も男として見てないように感じる。
皆を平等に好きなイメージだからだ。
○は結構真面目で堅いから、多分苦手であろうイチローとかタケルにでも、そういうところ苦手!!!でも、こういう所は好きだよって感じで接してるし。
だからか、よく絡まれてるし。
人見知り同士だからか、ハルとも結構最初から二人で話したりしてたしなぁ。
○人見知りのわりには、オールラウンダー人好きイメージだもんなぁ。
かなりこのクイズ難しいな……。
そういや前飲んだ時に好きなタイプの話になったよな。んー。珍しく結構酔っ払ってふにゃふにゃしながら
『落ち着いてて優しい人かな?あとは身体ガッシリしてる人とか?』
『お兄ちゃんっぽい人とか?甘やかして、デロデロにしてほしい……。』
て、言ってたもんな……。妙に熱を持った感じで『デロデロにして欲しい。』とか言うから、酔った男の前で何つーことをいうんだ。と思ったな。あの時は
ハルは優しいけど、お兄ちゃんって感じじゃないもんなぁ……。
んー。弦も面倒みがいいしなぁ。ありえるなぁ。仲良いもんな。弦はふざけるけど空気は読むから○もそこまで苦手じゃなさそうだし。
イチローは、いつも送ってもらってるみたいだから仲はいいんだろうけど、○けっこうイチローの言葉にイラついてる時あるし。珍しくそれで一回○キレてたし。夏くらいの時はまだ仲良さそうな感じになったけど、やっぱり苦手って、なったのか今はそこまでって感じだもんなぁ。
甘えられるかは置いといて、溝口とは結構仲良さそうだしな。落ち着いてるタイプではあるし、優しいしな。んー。
でも、お兄ちゃんっていうと……。卓哉さん。だよなぁ。やっぱ……。あー……。
あの人めっちゃ甘やかしてくれそうだしなぁ。○もちょっと懐いてる感あるし。
『と、とにかく。その、部活には支障来さないようにするから!だから大丈夫!!』
「告白はすんのか?」
『えっ…、それは、まだ。無理。』
「んー……。ま、キャプテンとして俺は別に反対しないから全然おっけー!」
『うん……。』
「相談もいつでも受け付けるから、な?」
『ありがとう……。』
少しだけ、○が笑った。
「……やっぱ。」
『ん?』
「誰か教えろ。」
『カズ!!!』
「おしえろー!めちゃくちゃ気になる!」
『ええ!?』
「吐け!吐け○!!」
○ににじり寄る。もうここまで来たら誰か絶対ききたい。
「カズ、○」
「うぉっ!?」
『ひゃっ!?』
にゅっと翔が俺達二人の間に割り込んできた。
「練習はじまるぞ。はやくいくぞ。」
『はいっ!すぐいきます!!』
すごい勢いで○が立ち上がって、翔を引っ張るように体育館へ逃げていった。
「おいっ!○!!逃げんなっ!」
結局○は誰か教えてくれなかった。
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