弦の気持ち





○は、真面目で優しい子やと思う。

ホンマに真面目で、ちょっとお堅いところがある。
俺とイチローがふざけている時は結構呆れたような顔をしとる、なんなら真顔とか嫌そうな顔をしとる事もある。
最初はああ、ノリの悪いタイプの子やねんなー。と思った。

ただ、そういう時を除けば基本的にニコニコしとるし。
フワッとした雰囲気の子や。
なんなら普通に俺らに笑ってくれる時もめっちゃあって、あれ?ノリいいんか?なんて混乱したときもあった。

最初は結構イチローが苦手そうで
「苦手やろ。」というと、『野球部苦手で……。』と返ってきた。
あいつらは自分が1番だと思っていて、
野球をしている自分達が1番偉いと。心の底から当たり前のように思っている。
野球をしているだけで格好いいと信じている女が一定数いて、そいつらが勘違いを助長させてる。
と心底嫌そうに話しとった。
偏見でねじ曲がった思想だけど少しだけ思い当たる節があったから、ちょっとだけ笑ってしもうた。

せやから、イチローに対して少しドライな態度だった。でも結局は呆れたように笑うから○はええ子やな。と思った。

学祭あけて『総一郎』と○が呼んだときはさすがにびっくりしたけど
ああ、○は押しに弱いんやな。とその時俺は学んだ。
ほんで、もしかしてイチローが○のこと好きなんか?とも思った。
ずっと一緒におるけど、イチローが友達に総一郎なんて呼ばれてるの聞いたことない。呼ばせとるなんてもってのほかやった。
ただ、いままでイチローはノリのいい派手な感じの子ばっかりいってたから、それはないか。と思い直した。



出会ってから半年くらいの時が立って


いつもフワッとしとった○が珍しくピリピリしとる時があると思ったら、だんだんその頻度が増えてきた。
イチローやタケルがなんか言うたびに顔が歪んどった。
ただ、真面目やからか、ぶーたれるタケルに『この前よりよくなってたよ!』なんて柔らかく言って何とかチームを保とうと○なりに接しとったのがわかった。

イチローがふざけても、極力感情を出さないようにしとった。『はいはい。』と呆れたように笑ってその場を流しとった。



それが崩れた


『総一郎っ!』


○のあんな顔はじめてみた。

俺の中でふくらんどったイチローに対する腹立だしさとかいろんなもんを
変わりにイチローにぶつけるように○は声を荒げた。

苦しいくらいに○の気持ちが俺の中に入ってきたのに
イチローはまだ気づいてへんくて

そんなイチローをみてスッと表情を失くした○に、俺を見てるようやった。

『腹立つ。』

イチローに腹を立てている○は俺と一緒やなぁ。と思って、でも見たことないくらいにブチ切れている○が少し面白かった。

ほんでもってイチローにめちゃくちゃ腹がたった。


○が無理して笑う。
○にまでなんて顔させとんねん。

こんなに想われとるのになんも変わらんあいつにめちゃくちゃ腹がたった。











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