この恋だけは勘弁してくれ

「ヨネさんが、AVレビューしてるブログ読んでて、ゲーム実況始めたときの、あのみんなでオフ会してる写真見て、ヨネさんかっこいいって思って」
「へ、へぇ・・・」
「僕、姉ちゃんとゲームアカウント同じの使ってて、それで、たまに話ししてて」
「まおちゃんじゃない時あったんだ・・・」
「昨日は姉ちゃんと一緒にしてて、そしたら姉ちゃんがチャンスだから行ってこいって、それで」
「あぁ・・・年明けちゃったねぇ・・・」
「ヨネさん!真面目に聞いてください!」
「聞いてる聞いてる」

路上で号泣する未成年をそのままにしておくわけにもいかず、とりあえず人に聞かれたらアウトなことをべらべらと話す未成年を連れて自宅に帰った。
本当は自宅に連れて帰るつもりは微塵もなかったのだが、どこもかしこも人でいっぱいでカラオケボックスとかチェーンの居酒屋とか、挙句ファミレスにすら入れなかったのだ。
テレビでガキ使を流しながら延々と泣いては喋る未成年の相手をする。

「あぁ、じゃあ君はまおちゃんの弟なんだね」
「そうです。翔平っていいます」
「高校生?」
「来年高校2年になります」
「・・・翔平くんから見たら俺はもうおじさんだと思うんだけど」
「そんなことないです!お兄さんです!」

あぁ、なんてこったい。
じゃあまだ16歳じゃないか。
俺は捕まってしまうんじゃないだろうか。

「えっちょっと待って。まおちゃんは何歳なの?俺勝手に18歳は超えてると思ってたんだけどまさか本当は高校生とかある?」
「姉ちゃんは大学1年生です。19歳だったと思います」

よ、よし、主にセクハラをしていた子はとりあえず未成年ではあるけど18歳超えてた。
ここはセーフだ、セーフ。

「あのね、翔平くん」
「はい」
「俺はもう23歳で社会人でね?お給料もらいながら働いてるわけね?それはもう日付が変わっても仕事とかあるんだよ」
「デートの回数が少なくても我慢します」
「いや、そういうことじゃなくてね?」

高校生のまっすぐさが眩しい。
大人の言い訳とか何も聞いてくれそうにない。

「あのね、俺はその給料のほとんどを風俗に使ってるの。わかる?ソープとかおっパブとかピンサロとかそーゆーところ、大好きなの。もう女の子が好きなの」
「どうしても、女の子じゃなきゃ嫌ですか」
「嫌だよ。っていうかそもそも俺は彼女とかセフレとかもほしいと思わないの。風俗のオネーチャンたちがいるからノーセンキューなの」
「マットプレイぐらいなら僕にもできます!」
「うん。そういうことじゃないかな」

なんなんだこの子。
何一つ譲歩する気がないんだけど。

「お、男でも、突っ込むとこありますし!」
「えーアナルセックスだって女の子がいいよ」
「あ、アナッ・・・ひゃー!」
「言わなくていいから」

アナルセックスと言えないらしい純情な翔平くんを見て、本気でとりあえず家に帰さないといけないと思った。
これ以上話をしても埒があかないし、俺に付き合うとか無理な話だって以前に、俺は男の子にはまるで興味がないのだ。
エロに対する色んな知識だけは豊富だから何をどうするかは知ってはいるけれど、やろうとか思ったことはない。

「とりあえず、送ってあげるから。家どこ?」
「大丈夫です!お泊りの準備をしてきました!」
「・・・あのね、いい加減にしようよ。そろそろ怒るよ?」

じろりと翔平くんを睨んだ。
翔平くんは俺から目を逸らし、鞄を抱えて少しだけ俯く。
どうやら悪いとは思ってはいるらしい。

「ほら、早くして」
「・・・まだ」
「何?」
「まだ、まだは、初詣、行ってないです」
「家族の人と行けばいいじゃん」
「今日、家に誰もいないです」

なんだ、1人だからっていうのは本当だったのか。
こんな俺とじゃなくて友達と一緒に初詣とか行って年越しすればよかったのに。
そしたら俺も弾丸帰省を敢行して年越しは鍋パーティーだったかな。
あぁ、本当、こんなことになるんなら下心とか出さずに実家に帰ればよかったなぁ。

「は、初詣・・・」
「行くと思う?」

そう言ったら翔平くんがぶわっと涙を溢れさせた。
あーもう、せっかく泣き止んだと思ったのに!
この子少し情緒不安定でしょ!
もうめんどくさいよ!

「あーもー泣かないでよー!」
「だっ、だっで」
「わかったから!もうわかったから!初詣は行ってあげるから!」
「お、おどまっお泊まりは」
「それはダメだよ。そもそもそれは予定になかったでしょ」
「昨日はエッチするっで」
「大人は嘘つきなの!特に俺はもう嘘しか言わない人なの!」

頭をかきむしりたい勢いだ。
俺が高校生だった時はまだ落ち着いて人と話ぐらいはできた気がする。
あとこんなに情緒不安定で号泣するようなことはなかった。

「・・・エッチしてください」
「無理だってば」
「エッヂ・・・」
「あ゛ー!泣くなってば!」

翔平くんの顔をティッシュで拭いてやる。
まおちゃんがしたであろう化粧は剥げ落ち、顔はもうどろどろだった。
この化粧はちゃんとティッシュで落ちるのだろうか。
俺の家には女の子は入れないから化粧落としとかないんだけどなぁ。

「あのさー、そんなにエッチエッチ言うけど、したことあるの?」
「な、ないですけど」
「アナルセックスってちょー痛いの。今日やりましょうっていってできるもんでもないの。わかった?」
「でも、僕いつもちゃんとお尻を」
「その情報いらないから!」

また変なことを言おうとする翔平くんをとりあえず黙らせる。
どこでそんな色々知識を仕入れてんだ。
あ、俺か。
くそっ・・・こんなことならAVレビューのブログとかセクハラとかするんじゃなかったな・・・。

「ほら、初詣行くんでしょ?」
「行きます!」
「そしたら、ちゃんと家に帰るんだよ?」
「・・・ん」
「じゃあちょっとだけ待ってて。着替えるから」

さすがにこの時間にスーツのまま外に出るのは寒い。
コートも厚手のコートを着たい。
そういえば夕飯も食べ損ねたと思ったところで、俺の腹ではなく翔平くんの腹が鳴った。

「あっ」
「・・・お腹、空いたよねぇ」
「だ、大丈夫です!」
「いや、俺も腹減ったからさ」

どこか食べに行こうかとも思ったが、来る時に店にすら入れなかったことを思い出す。
冷蔵庫を開ければ特に何も入っていなくて、ストック棚にはカップラーメンとレトルト食品ばかり。
さすがにこれは詫びしい。

「どっかでご飯食べて行こうか。この時間ならどこか空いてるでしょ」
「えっ」
「待たせたには変わりないし、ご飯ぐらいは奢るよ。そしたら初詣行こうよ。その方が神社も空いてるでしょ」
「は、ハイ!」
「新年初のご飯だからね。ちょっといいもの食べたいよね」
「ガスト!」
「ファミレスじゃーん」

初詣のオプションにご飯が付いただけなのに、翔平くんは随分と喜んだ。
とりあえずうちの近くの居酒屋から攻めて行こう。
どこかしら空いていてくれ。

***

「は、図ったな・・・!」
「偶然です!」

チェーン店の居酒屋でもつ鍋を食べ、お酒まで飲んで少し気分が良くなって、近所の神社でぜんざいをもらい気分が良くなった頃。
終電が終わりましたとにっこりと笑われて言われた。

「えーなんでー?今日は割と遅くまで電車動いてるよー?特別ダイヤだよー?」
「でもなくなったんです」
「タクシーはー?」
「お金がありません」
「なんなら出すしさー」
「タクシー待ちの列すごいですよ?」
「漫喫とかさー」
「未成年ですもん。警察呼ばれちゃいます」

あぁ・・・めっちゃ嬉しそうにしてる・・・。
めっちゃ嬉しそうに俺と腕組んでる・・・。

「うち、布団1つしかないよ?」
「一緒に寝ます」
「いや、床に寝てよ・・・。なんなら俺が床に寝るし・・・」
「じゃあ僕も床に寝ます」

だめだ。
めっちゃ語尾にハートマークつけて喋ってくる。
本当に俺のことを好きなのはわかったから、どうにか俺を解放してほしい。
新年早々男の子と一緒に寝るイベントとか俺に必要ないっていうか。

「ヨネさんの家にお泊まりっお泊まりっ」
「何がそんなに嬉しいのかね・・・」
「好きな人の家にお泊まりに行くのは心が躍るものですよ!」
「そうなの?俺はそんな経験全くないよ」

嫌々ながら家の鍵を開け、本日2度目の帰宅。
普段からあまり他人を家に上げることすらしないのに、まさか今日会った男の子を泊めることになろうとは。
・・・始発で帰らないかな。

「先にお風呂入っていいよ。俺少しゲームしてくるから」
「いただきます」

翔平くんを風呂に追いやり、パソコンを付ける。
とりあえずお正月イベントがないかだけは全て確認をしておきたい。
あとまおちゃんにどうにかして連絡を取らなければ。
さっきからラインはフルでシカトされているのだ。
まぁ、ラインシカトならゲームにログインしている可能性とかほとんどないんだけどね。

「んー・・・やっぱりどこにもいないか・・・」

一緒にやっているゲームは全てログインしてみたがやっぱりどこにもいない。
ラインは既読にすらならないし、スカイプにもログインなし。
ダメ元でもう一度だけラインを送った。
あと翔平くんを一晩預かることもちゃんと連絡をした。
よし、これで未成年を誘拐したわけではないと言い訳は立つ。

「お風呂、ありがとうございます」
「・・・翔平くん、風邪をひくからさっさと服を着なさい」
「・・・僕、普段から裸で寝てて」
「そんなわけないでしょ。こんな真冬に」

椅子にかけっぱなしにしていた着る毛布を翔平くんに着せる。
不満そうな顔をして口を尖らせている翔平くんは未だにエッチがしたいという夢を諦めていないようだった。

「・・・ヤらないよ」
「ん」
「ほら、先に寝てていいから。あと本気で風邪ひくからちゃんと服を着るんだよ」
「い、一緒に寝てくれますか」
「・・・気が向いたらね」
「本当に!?」
「気が向いたら!気が向いたらだからね!」
「やったー!ベッドで待ってます!」

翔平くんは意味深な言葉をいい、そのまま俺のベッドにダイブをした。
眠たそうな目をしていて、おそらく俺が風呂から上がってくるまでには寝てしまいそうだった。

「ちゃんと、待ってます!」
「・・・ハイハイ」

高校生って、元気だな。

***

寝ている翔平くんを確認し、床で寝ようとしたところで翔平くんに見つかってしまった。
床に寝るというととても悲しそうにぐずぐずと泣くので神様に見捨てられたと思って一緒にベッドで寝てあげた。
男と同じベッドで寝るなんて経験は高校の頃にみんなでアサの家に泊まった時以来だろうか。
じゃんけんで負けた自分を呪った。
そして今、俺は本格的に神様に見捨てられたと思った。

「んっ・・・んんっ・・・」

翔平くんがもそもそと動いていた。
寒かったかと思って目を覚ましたのに、もう目を覚ますんじゃなかったと思った。
翔平くんは俺の着る毛布を着て、一生懸命オナってた。
っていうか服を着ろって言ったのに、着てなかったのかよ!

「よ、ヨネさんっ・・・う、んっ・・・アッ、しゃ、さわりたいぃ・・・」

やめろ。
本気でやめてくれ。
俺を思ってオナニーしていいのはオネーチャンたちだけだし、オナニー見せていいのもオネーチャンたちだけだし、触るのとか本当にやめてくれ。

「ンン・・・ヨネさんの、大きい・・・」

それは素直にありがとう。
自分でも翔平くんよりは絶対大きいなって思っていたけど。
でも俺のちんこには触らないでほしい。
朝勃ちしてるだけだから。
翔平くんに触られたら瞬間的に萎えるから本気でやめてほしい。

「アッ、あっイく、イくっ」

え、イくの?
このベッドで射精しようと思ってんの?

「イっ」
「うわアァァァ!!イくのはやめろー!」
「えっあっ」
「ちょっ待っ」
「あっ!」

布団をはねのけて飛び起き、翔平くんの身体を反転させる。
射精しそうなちんこを床に向け、飛び出た精液はとりあえず全部床に落とした。

「ンッン、うっうぁ・・・」
「ぜ、全部出たか?」
「や、やだっヨネさん、手っ動かさないでっ」

尿道に残っていた分まで絞り出し、全て床に落とす。
よ、よかった。
女の子とだってエッチしたことがないこのベッドに、男のが、しかも他人の精液が溢れるなんて冗談じゃない。
でも必死になっただけあって、一滴も溢れてはいなかった。
あとはこの床に着いた精液を綺麗に拭き取り、手に着いた精液も綺麗に洗い落とそう。

「あ、あぁ・・・ヨネさんが、僕のちんこ、触ってるぅ・・・」
「・・・もう、怒る気力もないよ」

あぁ、もう、新年早々ついてない。
どうして俺がこんな目に会うんだちくしょう。




※無断転載、二次配布厳禁
この小説の著作権は高橋にあり、著作権放棄をしておりません。
キリリク作品のみ、キリリク獲得者様の持ち帰りを許可しております。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -