この恋だけは勘弁してくれ

『え?ヨネ今年帰って来ねーの?』
「そー。帰れないのー。仕事が31までで、多分終わらないから正月も仕事」
『お前の仕事やベーな』
「エンジニアなんてどこもこんなもんだと俺は信じてるよ」
『そんなもんなの?』
「知らない。他のところを知ると仕事辞めたくなるから知らない」
『まじかー。今年まっちゃんもジュニアも帰って来るっつーから、みんなで鍋しようと思ったのに』
「え゛ー!羨ましいんだけどー!!!」
『仕事早めに終わったら帰ってこいよ』
「そうする・・・」
『あ、そうだ。言ってなかった。俺、彼女ができた』
「え?どんな子?エロい?おっぱいとまんこどんな感じ?」
『いや、エロいことは顔面ぶん殴られて拒否されてっから本気で何も知らないんだけど、とりあえずおっぱいはまな板』
「まな板かー!乳首大きいと興奮するね!」
『っていうか彼女じゃなくて実は彼氏っていうかはーちゃんなんだけど』
「・・・え゛っ」
『思ってるより可愛いよ?』

***

中学からつるんでた奴がもれなくホモだったと知った夜はクリスマスイブだった。
これで高校の時の友達は俺を除いて全員ホモになった。

「はー・・・」

今度からアサに彼女のおっぱいとかまんこの話ししても、はーちゃんのおっぱいとまんこの事情が返ってくんのか・・・。
はーちゃんのことはとても好きだけど、はーちゃんのおっぱいとまんこの話はめっちゃ遠慮したいっていうか、できるなら知りたくないっていうか、絶対知りたくない。
そんでもってはーちゃんにおっぱいとまんこの話をしたらアサの事情が返ってくるんでしょ?
吐くわ。
アサのおっぱいとまんこの話とかゲロ飛び出る以外のリアクション取れない。
はーちゃんのおっぱいとまんこの事情より知りたくない。

「ヨネくんのちんちん不機嫌だね?」
「今思い出したらいけないこと考えちゃって、しょげちゃった・・・」

そんなことばっかり考えているから、もう目の前のオネーチャンのおっぱいだけじゃ俺のちんこが元気を取り戻さない。
せっかくのソープ、せっかくのパイズリなのに。
素股でもいいからまんこに挟まれればなんとかなる気がするけど、でも本番禁止の風俗じゃせいぜいぬるぬるローションのマットプレイが限界。
ここで本番とかして出禁になって、シンディちゃんのおっぱいに触れなくなるなんてことになったら俺は死んでしまう。

「シンディのおっぱい気持ちくない?」
「ううん。最強」
「ほんとー?うれしー!」
「シンディちゃんがおまんこ見せてくれたら元気になるよー?」
「えー?」

ぬるぬるになった手をシンディちゃんのまんこに伸ばし、硬くなったクリトリスに触れる。
本番は禁止だけれど、触るのはダメではない。
むしろ触れるのに本番はできないとか逆に興奮しちゃうね。

「シンディちゃんのお豆さん、硬くなってるよー?」
「そおー?」
「自分で触ってみる?」
「やーだー!」

頭の緩そうな顔でヘラヘラと笑うシンディちゃん最高案件だな。
格安店のソープだからって馬鹿にしちゃいけない。
俺はちょっと馬鹿そうなぐらいの女の子が好きなのだ。
上下の下着が違う子とか、オナニー見せてくれる子とか、なんかゆるい感じの子がいい。
清楚系お姉様も嫌いじゃないけど、でもやっぱり頭ゆるくてエッチな子の方が好き。

「シンディちゃんのお豆さん大きくなったよー?」
「えー?大きくならないでしょー?」
「なってるなってる」
「大きくなったらちんちんじゃん!」
「ちんちんって」

そう言われてふと頭を過ぎったのはアサだった。
そこで消えてなくなればよかったものの、はーちゃんまで出てきて、2人がセックスとかするんだとか考えてしまった。
もうその破壊力ったらなくて、ようやく元気になった俺のちんこが一気に萎むぐらいの破壊力。

「ヨネくん、さっきよりちんちん小さくなったよ?」
「うん・・・もう勃起しなそう・・・」
「えー!」
「ごめん・・・」

せっかくのクリスマス、わざわざ人気のシンディちゃんを予約して、聖夜のマットプレイに思いを馳せて仕事を終わらせてきたのに。
アサが前日に彼氏できましたとかぶち込んでくるからこんなことに。
まっちゃんとジュニアの時にはここまでじゃなかったのに。
まっちゃんもジュニアもエロい話に乗ってこなかったから、なんとなくやっぱりかみたいなのはあったけど、一緒にAV買ったり見たりした仲のアサとはーちゃんっていうのは本当にダメだ。
こんなことなら人様のセックスの話とか聞くんじゃなかった。

「帰るよ・・・」
「えー?イかなくていいの?私ヨネくんとならエッチやぶさかじゃないよ?」
「だーめー。出禁になったらもうシンディちゃんのおっぱいにちんこ挟んでもらえないもん」
「えーでもまだ時間あるよー?帰るのー?」
「なになにー?帰って欲しくないー?おしゃべりするー?」
「おしゃべりよりはエッチなことしたいなー?」

シンディちゃんの手が俺のちんこに伸び、シコシコと世話をする。
シンディちゃんの手コキと背中に当たるおっぱいの柔らかで少しだけちんこは芯をもったものの、イくどころかフル勃起する気もまったくしなかった。

「おしゃべりにしない?」
「ちょっと勃ったよ?」
「んー、でもイけないかなー」
「むぅー。私手コキうまいのに。流石に給料を風俗に注ぎ込んでるだけあるなー」
「俺の癒しは可愛い女の子のおっぱいとまんこだからねー」

一生懸命手コキをしてるシンディちゃんの頭を撫で、それからシンディちゃんの手も離す。
半勃ちしたちんこをパンツの中に収めて、来た時と同じようにスーツを着た。

「あーあー!ヨネくんのエロモード終わっちゃったー!」
「ごめんねぇ。ちゃんとお金は払うからさ」
「時間も半分だし、半額にしてあげる」
「ダメダメ。シンディちゃんの財布から出すことになっちゃうでしょ」

規約通りのお金をシンディちゃんに渡し、ジャケットを着て部屋を出る。

「またねー」
「ばいばーい」

ちゃんと従業員さんにも時間が余っているが帰る旨を伝えてから外に出た。
世界でもっともセックスをする人が多い日に、まさかイけもせずにすごすごと帰ることになろうとは。
まぁ、でもおっぱいにちんこ挟んでもらっただけいいかなぁ。

「あーあ。格安店とはいえ、やっぱり2万は痛いなぁ」

まぁでも、自分へのクリスマスプレゼントだし、いいか。
シンディちゃんには悪いことしたけど、俺との予約時間の余っている分はゆっくりして過ごして貰えばいい。

「さて、家に帰ったらゲームでもするかな。どうせみんないるだろうし」

スマホでツイッターを開き、オンラインゲーム仲間の悲しいタイムラインを見て心を躍らせる。
みんな彼女がいない寂しい夜をおっぱいが揺れるアーチャーで出陣して己を慰めているのだ。

***

「っていうか、みんなアーチャーとかドラゴン倒す気ないでしょ」
『うるさい!俺等はおっぱいがないと生きていけないんだよ!』
「俺、今日おっぱいは堪能してきた」
『え?!ヨネさんってリア充なんすか?!』
『ちげーよ。こいつ風俗行くこと生きがいにしてんだよ』
「ナナシさん言い過ぎ。生きがいってほどじゃないよ」
『うるせぇよ。週3風俗は生きがいだよ』
『ゲエエエ!ヨネくん週3も風俗行くの?!こんな彼氏やーだー!!!』
「俺だってまややみたいな彼女嫌だよ。筋肉ゴリラにしか興味ない女の子は嫌だよ」
『今日はみんなのためにアーチャーにしてあげてますー!彼女いなくて寂しい童貞ガリガリゲーマーくんたちのために筋肉封印ですー!』

ゲーム仲間とスカイプを繋ぎ、アーチャーオンリーでパーティーを組んで勇敢にもドラゴン倒しに精を出す。
HPが少ないアーチャーで、HPが鬼のようにあって口から吐き出す炎に当たれば一発アウトなドラゴンを倒せる気はしなかった。
っていうかみんな無駄に走り回ってみたり、バク転してみたりして揺れるおっぱいを楽しんでいるだけだ。
なんでドラゴンなんかチョイスしたんだし。
草原走って小物買ってたほうがゴールド溜まるしまだ有意義だろ。

『ねーねー!まおちゃんだって週3も風俗行く彼氏は嫌だよね?!』
『えぇー僕にフるのー?』
『だってこのガリガリゲーマーパーティーの女子班は私とまおちゃんだけじゃん!』
「いやいやいや、まおちゃんはパンチラ動画上げてるぐらいだからワンチャンあるって」

この殺伐としたパーティーの中に唯一いる天使、僕っ子まおちゃん。
コスプレをしてダンスをしている動画をネットに上げているのだ。
顔半分はマスクで隠れているけど、ほっそりとしたスタイルと綺麗な太ももがエロい感じで大人気。
ミニスカートで踊るからたまにパンチラをしているのだが、もはやこれは神動画だ。
ちなみにこの殺伐としたパーティーは主にゲーム実況動画を上げている。
オンラインで仲良くなった仲間だけれどたまに遊びにも行く。
でもまおちゃんだけまだ会ったことはない。
まおちゃんは割と最近仲間になったのだ。

『だから、見せパンだってばー』
『でも童貞はまおちゃんのパンチラでヌいてると思う』
『わかります。ありがとうございます』
『かえるくんお世話になってんのかよ!サイテー!』
「俺も俺もー」
『ヨネくんはもう信じらんねー!』

まややが絶叫しながらドラゴンにむかって必殺技を放った。
ちまちまとSPを溜めていたらしい。

「あ、みんなお正月ヒマじゃない?ヒマだよね?」
『私、プロレス見に行くから無理』
『俺は実家に帰りますー』
「かえるくん実家どこだっけ?」
『熊本ですー』
『熊本遠っ!』
『ナナシさん新潟でしたっけ?』
『そうそう』
「ナナシさんも実家帰るの?」
『おう。ヨネ帰んないの?』
「帰りマセーン。31まで仕事で2日も仕事でーす」
『社畜乙』
「なんだよもー。誰か元旦初詣ぐらい行ってくれると思ったのにー」

これはもう確実に年初めからぼっちだな。
それは寂しすぎるから弾丸で実家に帰ってアサたちの鍋パーティーに混ぜてもらおうかな。

『あ、僕でよければいいですよー』
「え?」

そう名乗りを上げたのはまおちゃんだった。

『僕、実家だし、お正月は1人なんで・・・』
「まおちゃあああん!天使いいい!」
『ちょっ、まおちゃんダメだよ!ヨネと2人はキツいよ!』
『そうだよ!絶対ヤり捨てられるよ!』
『まおちゃん!悪いこと言わないんでやめてください!ヨネさんは危険です!エロ魔神です!』
「いいじゃーん。あわよくばエッチしようよー」
『もう最低だな!』
「お正月姫始めだよ?最高かよ」
『最低かよ!』
「ああぁ!俺に必殺技とか、待っそっち転がしたらドラゴンが、俺死ぬからって、あー!!!」

まおちゃん以外の全員がちまちまと溜めていたSPを使って俺に向かって必殺技を放ってきた。
もちろんドラゴンの吐き出す炎で瞬殺された。

***

ようやく仕事が終わった夜、その足で向かうのはまおちゃんが待つ駅前だ。
まさかの俺の残業のせいでもう2時間も待たせている。
あわよくばホテルで年越ししようと思っていたのに、そんな俺の期待は塵となって消えた。
これはもう健全に初詣かな・・・。

「あっ、あ!ヨネさん!」
「ん?」

こっちに向かって手を振る子を見つけて、そちらに向かって歩き始める。
人混みに埋もれていてちらちらとしか顔が見えないのだ。

「は、初めまして!」
「初めまして」
「まおです!」
「え?」

失礼だとは思ったがじっと顔を見る。
確かにマスクで半分隠れているときの面影があった。
でも、この子はまおちゃんじゃない。

「嘘じゃーん」
「嘘じゃないですよ!ほら、これ、この間着てたスカートだし」
「だって君、男の子だよね?」
「え?」

スッとスカートの中に手を突っ込み、男の子の証である膨らみを鷲掴みにする。
ちょっと小さいけど、ちゃんと付いてる。

「ほらー」
「あ、やっ、あの」
「胸はヌーブラ?パッドも詰めてる?」
「う、嘘っ」
「伊達に風俗通ってないよ?」

パッと手を離してにっこりと笑ってやる。
見た感じ、おそらく高校生ぐらいの男の子。
似てはいるからまおちゃんの関係者ではあるんだろうし、とりあえず早く家に帰してやらねば。
未成年を連れ回して補導されるのは勘弁だ。

「とりあえず送って行くよ。ご飯ぐらいは一緒に食べる?待たせちゃったし、奢ってあげるよ」
「あ、あの」
「大丈夫だよー。内緒にしておくし、まおちゃんのことも悪く言わないし」
「あの!」

男の子が俺のコートの袖を掴み、こっちを見上げて必死な顔をしていた。
ネット上とはいえ仲良くしてる人に嘘をついたのだから、焦っているのかもしれない。
まぁ焦らなきゃいけないのはこの男の子じゃなくてまおちゃん本人なんだけども。
この男の子はまおちゃんに頼まれてるかなんかで必死なのかな。

「ヨネさんが好きなんです!」
「・・・え゛っ」
「だから、あの、エッチしてください!」
「え゛っ」
「この間言ってた、スカトロってやつもやっていいです!!!」
「ちょっとー!ココ駅前だからー!!!」

あぁ、なんだこのフラグは。
毎日なにかしらのAVを見て、週3回の風俗を癒しにしていて、こんなんで女の子とお付き合いなんてしたらダメかなって思ってずっと彼女も作らずにゲームしながら健全に生きてきたのに。
彼女がダメなら彼氏ってか。
高校の時の友達がみんなホモになったから俺もってか。

「ヨネさん、好き」
「え、えぇ・・・」

この恋だけは勘弁してくれ。




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