失恋が恋の始まりだなんて

秋口、帰省してきたヨネがもたらした情報は俺にとって訃報となった。

「あ、よーわからんけど、まっちゃんとジュニア、付き合い始めたっぽい」
「「え゛っ」」
「たまたま2人で手繋いで買い物してるとこに俺が出くわしてさー」
「手繋いでたの?!」
「うん。なんで手繋いでンのか聞いたらまっちゃん、白目だったけど。面白かったわー」
「え、ば、罰ゲームとかじゃなくて?」
「この歳で罰ゲームもないだろ。それにジュニアは嬉しそうだったからなー」
「まじかー!ジュニアすげー!まっちゃんもすげー!」

はしゃいでるはーちゃんと、エロ本読みながら淡々と話すヨネ。
ヨネは感が良いし、何よりも少々心当たりがあるだけに疑う余地もない。
手足が冷える感覚を堪えながら、俺は喜ぶでも軽蔑するでもなく、ただただ凹んだ。
そして俺はまっちゃんが好きだったのだと気付いたのだ。

「やっぱあん時にオナってれば・・・」
「なんの話だよ」
「気にしない、気にしない!どーせアサは最近彼女にフラれたから欲求不満なんだよ!」
「まじかよ。ちょっとその子どんなまんこしてたか聞いていい?」
「だめに決まってんでしょ!」
「ちょっとクリがでかめでな、びらびらが肉厚めの」
「アサも黙って!」

あぁ、俺の馬鹿。
後悔なんて、どこからすればいいのか検討もつかない。

***

まっちゃんと同じ大学に行くことは叶わず、はーちゃんと一緒に地元の馬鹿大へ進学。
大学卒と言う肩書きだけ手に入れて地元就職。
しがない町工場でしがない社員。
はーちゃんも似たようなもので、個人経営の居酒屋で社員をしている。
まっちゃんとヨネは進学と同時に地元を出たし、ジュニアも最近まではこっちにいたけど向こうに転勤しちゃったから、もう地元にははーちゃんしかいない。

「はい、鶏皮!」
「うまほー」
「でっしょー?俺が焼いたの!アサのだめによく焼きだよ!」

はーちゃんが元気いっぱいなのは相変わらずで、俺も救われている。
失恋したばっかで傷心中の俺にはありがたい。

「はあぁぁ・・・」
「なにー?まだはなちゃんのこと引きずってんのー?」
「ほーほー」

付き合い始めて半年たった頃、なんか違うって思ったら別れようと言ってた。
そら違うよ。
俺はまっちゃんが好きだったんだから。
でもそのまっちゃんはジュニアとお付き合いしている。
まっちゃんが俺がどこに住んでるか言うなって俺に言った理由もはっきりと分かった。
奥手で真面目なまっちゃんは、きっとジュニアが好きだから地元から飛び出したのだ。
その気持ちを隠したかったに違いない。
ジュニアに何回頼まれても教えなかった俺は、どこか優越感に浸っていたのかな。
なんか、俺、ちょー性格悪いじゃん。

「元気だしなよ。あっ、アサの好きなししとう焼いてきてあげる!」
「うん。ありがとう」
「ししとうは奢ってあげるよ!」
「優しい!」

ついでにおかわりのビールも注文して中へ消えたはーちゃんを見送る。
カリカリの鶏皮を頬張り、ビールを一口。

「うまぁー」

はーちゃんは将来焼き鳥屋になるべきだな。
スーパーとかの駐車場とかで売ってるあんな屋台じゃなくて、ちゃんとした店。
そしたら俺は贔屓になって、毎日カリカリの鶏皮を焼いてもらおう。
まっちゃんもカリカリの鶏皮好きだから気に入るはずだ。

「・・・なんで、思い出しちゃうかな、俺」

一気に気持ちが落ち込み、せっかくのパリパリの鶏皮を食べる手も止まる。
本当に好きだったんだなぁ、俺って思っても後の祭りだった。

「はい!ししとうとビール!」
「おぉ・・・ありがとう・・・」
「元気出さないとあん肝あげないぞー!」
「元気でたでた!」

とりあえず絶品のあん肝とししとうを食べてテンションを上げよう。
凹むなんてのは後から家でやればいい。

***

週末になるとくたびれた身体を一気に休めようとするのか、とんでもない時間を寝て過ごす。
寝ていない日は大抵はーちゃんとか高校の時の野球部連中と遊んでいる。
今日は前者で、とくに予定もないから昼間に目が覚めた。
昼飯だと冷蔵庫に入っていた冷やし中華を食べる。
これは夏のお歳暮の残り物だ。
山盛りの冷やし中華をずるずると胃に流し込み、とくに面白くもないテレビを見る。
俺には見慣れない都会の街並み。
まっちゃんとかヨネはこんな人混みが恐ろしいところで生活しているのかと思うとゾッとした。
まぁ、別に電車で行けるっちゃ行ける場所なんだけども。
こんなにごみごみしていちゃ行く気も起こらない。
冷やし中華の皿を空にし、ごろりと畳の上に寝そべる。
中年太りにはまだ早いから、まだ大丈夫だ。
ちゃんと後で筋トレする。
食欲も睡眠欲も満たされると満たされていない性欲に頭が傾いて行く。
もやもやとしているのは性格上、あり得ないタイプなのでテレビを消して部屋へ向かった。
家には誰もいないし、窓を開け放ってハーパンとトランクスを下げた。
しょげたちんこに触りながらAVやエロ本が山程積まれた棚を漁る。
巨乳よりは貧乳、ノーマルよりは潮吹きって気分。

「あ」

ふと目に飛び込んだのは一時期アホほど見ていたアナル。
よくわからないが、アナルセックスがマニアック過ぎて異様に興奮したのだ。
今思えば本能だったのかもしれない。
そこでふと、本当に何気なく、思い出した。

「まっちゃんで、ヌいてみる・・・か」

そう思ってもまっちゃんの裸の写真はおろか、頭の中のメモリーにもない。
頑なに身体を隠していた気がする。
仕方が無いから興味本位で高校の時に購入したゲイAVを探す。
なんとなく捨てられなくて、未開封のまま取っていたはずだ。
どこに置いたかまでは記憶にはないが、捨ててはないはずだ。

「んー・・・ねぇなぁ。そろそろちんこはフルなんだけどなぁ」

完全に上を向いたちんこを放置しつつ、たまに萎えないように触りつつ、目当てのものを探す。
ようやく奥の棚に転がっている埃っぽいAVを見つけた。
多分これだ。

「お、当たり」

フィルムを剥がして中身をデッキへ。
パッケージには恋人セックスと書いてあるが裏面には浮気したネコにお仕置きセックスとまで書かれている。
仲直りセックスまであるから、豪華3本立て。
お粗末なプロモーションをすっ飛ばして69しているところから再生した。
少し長めの黒髪ショートを見て、この時から無意識にまっちゃんが好きだったのかなぁ、と思う。
黒髪ショートの子をまっちゃんに置き換え、ちんこをしゃぶられてる金髪頭の色黒い男を俺に置き換える。
まっちゃんは丁寧に俺のちんこを舐め、俺もまっちゃんのちんこにむしゃぶりついた。
まっちゃんがタマまで舐めるから、お返しにとばかりに俺もタマを舐める。
俺はローションを手に取るとまっちゃんのアナルへ垂らし、指にもローションを絡めてから指を挿入する。
手マンするみたいに指を動かす度、まっちゃんは悶えていた。
気持ちいいといいながら先走りを零し、はしたなく足を拡げて喘ぐ。
いつの間にかまっちゃんは自分の乳首を弄り、ちんこを扱いていた。
イきたそうなまっちゃんから指を引き抜き、ぬらりと光るアナルを見る。
パクパクと収縮していて、早くちんこを挿入してくれと訴えているようだった。
パシリ、とまっちゃんの尻を叩けば自分でアナルを拡げる。

「なぁ、早く挿入してよ」

挑発しているのか、恥じらっているのか、曖昧な顔をして俺をみた。
俺は女と違って丸く穴が空いたまんこにちんこをずっぷりと挿入する。
それから俺は猿みたいに腰を振った。

「ん、まっちゃんっ」

名前を呼んだだけでちんこが大きくなる。
まっちゃんも自分のちんこを扱きながら、気持ちいいと叫ぶ。
乾いた音が響き、ぐちゃぐちゃと音が鳴って。
先にまっちゃんがイった。

「も、イくっ」

俺は大量の精液を飛ばした。
画面の男は精液をアナルで受け止め、そのままお掃除フェラを始めた。
アナルからはポタリポタリと精液を零している。
その卑猥さにゴクリと生唾を飲み、それからまっちゃんに置き換えてみた。
イったばかりだというのに、ちんこが上を向いた。
ガクリと項垂れ、べたりと手に張り付いた精液を見る。
男のセックスに興奮した。
それをまっちゃんに置き換えてオナニーをした。
何よりも、興奮した。

「なんで、あの時に気付かなかったんだろ」

失恋が恋の始まりだなんて、そんなのあんまりだ。




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