どうして恋なんかしたんだ

ジュニアと事故った日(こう言わないと自我が崩壊する)から俺は狂ったように勉強を始めた。
志望校を現段階じゃC判定の大学に切り替えたのだ。
そうでもしないと俺の頭はジュニアの唇でいっぱいだった。
それはもう夢にも見るほどで、ジュニアの顔なんか見れなくて。
塾は『特待生入学を目指す』を理由に居残りをしたし、帰るときにはチャリ立ち漕ぎでわき目もふらずにただまっすぐ家に帰った。
頭がエロでいっぱいになれば壁に床にと頭を打ち付けてやり過ごした。
それでもどうしようもなくなったらジュニアでヌいた。
でもそんなことをすれば決まって罪悪感で死にそうだった。
益々深みにハマるようで、ジュニアを汚したようで。
俺はもう辛くて仕方なかった。
少しでもこの気持ちを、この行動を怪しまれたら俺は破滅だ。
だから志望校を変えた事は言わなかった。
2学期の選択授業は半分だけジュニアと同じ授業を選択した。
同じクラスなのだ。
必ず会ってしまうのは仕方がない。
でもできるだけ離れて、何事もないように過ごすから。
だからどうか俺の邪な思いに気付かないでくれ。



俺の恋愛感情なんてものは罪悪感でいっぱいだった。
この思いを打ち明けたいなんて少しも考えた事はない。
それは3学期を迎えてもこの気持ちは同じだった。
選択授業がなくなり、自習の時間が増えた。
幸いにもヨネが同じクラスだったから、ジュニアと2人っきりになるのは避けられた。
でもこの日に日に重たくなる罪悪感は何をしても消えるどころか軽くなることもなかった。
時間がただただ過ぎ去り、気が重い大学の受験日がやってきた。
結局、元々の目標だった国立を受けたのはジュニアと俺だけだった。
アサは受けたかったらしいが塾にも親にも恥をかくと止められたらしい。
この日程アサがいなくて残念だと考えた日はない。

「まっちゃん、頑張ろうね」
「そうだな」
「緊張してきた・・・」
「ジュニアなら大丈夫だよ」

前みたいに背中を叩いて励ましてやることもできない。
俺が触って、もしそれでジュニアが俺の気持ちに気付いたりしちゃって、拒否されたならば俺はきっと立ち直れない。
隣にいるのも苦しい。
もう話すことさえ恐ろしい。

「あっあのねっまっちゃん!」
「何?」
「こ、これっこれね、お守り!近所の神社のだけど・・・」

手渡されたお守り。
小さな巾着みたいな、青い小さなお守りだった。

「一緒にキャンパスライフを過ごそうねっ!」
「ははっ気が早いなぁ」
「いいじゃん!目標があれば頑張れる!サークル入って、合コンして、アサとヨネとはーちゃんも一緒に飲みに行こう!」
「遊びばっかじゃん」
「いっ今から受験なのに勉強のことなんか考えたくないっ!」

普通の、テンプレートなキャンパスライフ。
俺はそれ以上何もいえなかった。
ジュニアから貰ったお守りを握りしめて会場へ。
大丈夫、ジュニアは合格する。
頑張って頑張って遂に最後の模試でA判定をもらっていた。
だから大丈夫。
そしてサークルも合コンも飲み会も俺を抜きにして楽しんでくれ。

***

卒業式も終わって合格発表も終わって。
俺が黙ってジュニアの前から消えてもう5回目の夏。
俺は研究室で実験に励んでいた。

「コレが黄色なら成功コレが黄色なら成功コレが黄色なら成功コレが黄色っていったのになぜ緑!」
「まっちゃんまた失敗?」
「うるせー。きっと試験管にアルカリ的何かが付着していたんだ」
「それはないっしょー」

大学で知り合ったヤスに見守られた6回目の実験は失敗に終わった。
俺とヤスの研究室はまぁ大きく括れば医薬品の研究だ。
別に成果を上げる事を目標にした研究室ではない。

「はぁ・・・今日も駄目だったか・・・」
「まっちゃんこの後暇?」
「そうだなー・・・。もう1回したいところだがそうもいかないし、まぁ暇だ」
「飲み行こうよ」
「いいぞ」

田舎から出て、見知らぬ土地で生活し始めて、ヤスと知り合って。
ヤスにお前ゲイだろ言われて気絶した日から友達をしている。
第一印象は最悪だったが話してみればいい奴だった。
俺にゲイの知識を植え付けたのもヤスだ。
・・・それから経験も。
目が覚めたら童貞を失った瞬間で、やっぱり気絶した。
知識と経験は違うんだ。
その後もなんとなくで何回かヤスに世話になったり世話したりしている(下の意味で)が付き合ってはいなくて友達だ。

「飲み後まっちゃんの家行っていい?」
「それは駄目」
「まっちゃんのケチー。でも飲みは行ってくれるだろ?」
「飲みだけな」

試験管やらビーカーやら片付けて洗浄。
ヤスが手伝ってくれたがらだいぶ早く終わった。
それからヤスと一緒にいつもの居酒屋へ出掛ける。
これが今の俺の日常になっている。



で、帰るとか行ってたくせに酔っ払いは真っ直ぐ俺の家に帰った。

「はぁー・・・まっちゃんの家はいいねぇー・・・解放的だぁー・・・」
「お前が実家暮らしだからそう感じるだけ!ベロベロに酔っ払いやがって!」
「まっちゃん、水」
「ほら。お前明日絶対起きろよ!俺明日大学行くんだから」

ヤスにいろはすを渡してやったらそのまま返ってきた。

「飲まして」
「ピペットでいいか?」
「口移しがいーなー」
「甘えるな酔っ払い。可愛くない」
「お願い」

ヤスはがばりと口を開けて待機していた。
俺はペットボトルのキャップを開けて仕方なく口移しで飲ませてやる。

「んはは、やっぱまっちゃんは優しいなー」
「もうお前寝ろ。俺風呂入ってくる」
「ねーねーまっちゃん」
「今度は何だ!」
「勃った」

語尾にハートマークを付けてヤスはじりじりと俺に寄ってくる。

「嫌だ」
「じゃあまっちゃんのベッドに射精していい?」
「何の嫌がらせだ!やめろ!」
「だってー、こんなにもう元気なんだもーん」

ズボンとパンツを下げて上を向いたちんこをポロリと出した。
この酔っ払いめ。

「いいからしまえ!」
「あんっ」
「うおぉ・・・やめてくれ・・・」
「えー?まっちゃんうるさい方が好きだろ?」
「いや、ヤスがうるさいとなんか嫌だ」

体格だって対して変わらないし可愛い系ならまだしもヤスは格好いい系だからうるさいのはちょっと・・・かなり嫌だ。
俺は我慢してるヤスのがいい。

「今俺とヤってんの想像しただろ?」
「うるせー。ほらちんこしまえよ」
「俺ネコでいいからさー。な?シよ?」
「はぁ・・・明日の朝飯はお前がコンビニに買いに行けよ」
「まっちゃん優しいー」
「ハムカツサンドとヨーグルトとおにぎりな。後んっ」
「っは、全部いつものやつだろ?」
「そう」

ヤスと何回かキスをして、それからヤスの下半身に手を伸ばす。
俺がちゃんとキスできるのはヤスだけだ。
ヤスに紹介してもらった人達はダメだった。
実験だって飲み会だってキスだってセックスだって何だってヤスが一番いい。
俺の中でヤスはどんな形であれ特別なんだ。

「ンっ・・・まっちゃんさ、キス好きだよな」
「そうでもない」
「嘘だな、んぁっ」
「本当だって。ヤスにしかちゃんとできないの知ってるだろ」
「下手くそだけどなーっあ゛っ爪、ひん!」

黙らない酔っ払いのちんこに爪を立ててやる。
俺の方が経験値低いからヤスより下手くそな自覚はあるけども。
爪を立ててたちんこがちょっと赤くなったからお詫びに舐めてやる。
ヤスは身体を起こして俺が舐めてるのを見ていた。

「なぁ、まっちゃん。まっちゃんが初めて俺襲った日覚えてる?」
「ン、間違いじゃなければ誘ったのはお前で俺はハメられたんだ」
「でもちょー激しかったよねー」

もう何も言うまい。
行き場のない性欲がヤスに挑発されて、酔った勢いで初めて自分が押さえられなくなったんだ。

「まっちゃんさ、あの日自分の言ったこと覚えてる?」
「ん、責任取るってやつ?」
「そう」
「覚えてるよ。酔いが醒めても止められなかったからな。あの時はなんか責任感じたんだよ」
「ソレ、まだ有効?」
「は?そら別に構わないけど、ンッ」
「あっまっちゃん、俺カリ好き、もっと舐めて」
「んぁ、んんっじゅるるっン、はぁ」

結局その後最後までシて、狭いベッドに男2人並んで寝た。
酔っ払いのくせに散々ねだりやがって。
経験値が低い俺にはハード過ぎた。
ヤスと2人で死んだように眠った午前4時。




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