>> 青炎、月夜に燃ゆる





今日は、月の綺麗な日でした。寒くなってきた最近の空は空気が澄み、明るい月が映え、美しいのです。




そんな美しい月夜に僕は、手を汚します。




罪悪感など微塵もありません。そうでもしなければ、生きてはゆけないからです。人形なのです。感情など知らない様な。ただ、正確に言えば、“忘れた”でしょうか。強くなる為の犠牲となったのが感情でした。忍には不必要なモノであり、厄介なモノでもあります。殺す為に、それらを押し殺すのです。




そんな中でも青炎は、月に照らされながら、役目を全うすべくただ静かに燃えるのでした。




そんな僕にも、“相棒”という名の同僚が出来ました。人生で、初めてのことだらけです。他人をこんなに傍に置いたのは初めてです。自分をこんなに知られたのも初めてです。家族の様に扱ってくれた三代目ですら、驚く程でした。




「ーー任務完了。」
「…ホントお前、昔の俺みたいだぁね」
「…どこが」
「そゆトコ。」




それでも最低限の会話しかしません。いいえ少しばかり違うでしょうか、会話の仕方を知らないのです。他人との関わりを絶って生きてきた身には、会話など理解しがたい行動だったのです。




「ねぇ、お前は。…他人と関わりたくないの?」
「ーー、別に、」
「…そう」




相棒はよく核心を突く問いを寄越します。そして決まって僕は、言葉に詰まる。確かに関わりを持ちたくないのは事実です。けれど、それと同時に寂しくもあるのです。その矛盾を相棒は的確に指摘するのでした。




そういうトコが厄介なんだ、コイツは。




それでも僕は、この男から離れることはないのでしょう。今までツーマンセルを組むことは年に数回ほどありましたが、あまり絡んでくる者はいませんでした。所詮、忍の世界はそんなモノだと知っていましたから、大して気にも留めません。けれど、この相棒はそんな暗黙の了解を潜り抜け、何時の間にかスルリと僕の隣に居座っていました。何の違和感も無く、ごく自然に。




確かにそれが何処か心地よくもあったのです。




僕がその心地よさに負け、何だかんだで昼間でも関わりを持つようになった僕達は、互いのことを少しずつ知りはじめました。忍が素性を暴くのは御法度です。けれど、どんどん知るうちに興味が湧きますから余計詳しく調べるのでした。




最初は名前でした。相棒は名前を呼ばれることを喜びます。僕の理解の範疇に届きはしませんが。だからいつも背後から小さな、ほとんど呟くような声で呼ぶのです。




カカシせんせー、と。




いつも僕の掻き消える程の小さな声を聞くのは夜空に輝く、相棒と同じ色をした月だけなのでした。



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