ライオン



ドレスコードにトレードマークの麦わらと草履なんぞ、ミスマッチにもほどがある、と。
そう思っていた俺は(きっとコックもだ)、ルフィを甘くみていたのだ。

こいつはそう。
幼く見せているが、実は大人で。
何も考えていないふりをして、実は聡明で。
すべてを受け入れるふりをして、実は潔癖で。

所謂、船長という男であるルフィはただ静がに、横に侍らすロビンにされるがまま、そのキャプテンコートを羽織った。

「行くぞ」

低く放った声は怒気を孕み、それでいてどこか冷徹な鋭さを持っていた。
ビリビリと指先が痺れた。

「待ってルフィ」

歩き出すルフィの背中に、ロビンが声をかけた。隣に立つフランキーがぴくり、と眉を動かす。

「なんだ」
「あなたは最後を。ボスは最後尾を歩くものよ。前は常に下々の者に」

不機嫌に振り向いたルフィを見て、ロビンはうっとり、と白磁の指先で曲がったネクタイに触れた。

「いい男だわ、あなたは」
「あぁ、お前の見立てだからな」

そうね、と笑ったロビンは、今度こそルフィへ道を開けた。
そして、隣で煙草をくわえたままのコックと俺を見て、薄く笑った。
俺たちは知っている。その笑みは恍惚のそれだと。

「さぁ、キャプテン。御命令を」
「……フランキー、」
「あ?あぁ」
「おめぇ…、ロビンを頼むぞ」
「おぅ、任せとけ、キャプテン」

フランキーの場違いな明るい声に、ルフィは薄く笑って、その笑みを称えたまま俺たちを見た。

「ゾロ、サンジ」
「あぁ」
「おう」
「お前たちは、道を」


「おれのために道を作れ」


笑った顔に、背筋を氷で撫でられた気分だ。
声が神経を食んで、どこかの器官が麻痺したように、目の奥がチカチカした。

「船長の仰せのままに、すべての盾に」
「道を塞ぐすべてを消してやる、船長命令、なんだろう?」

掠れる声は、欲情の表れ。
荒ぶる熱は、昂奮の表れ。



ただ一言だけの、王者の言葉を待つ。


「行くぞ、」

低く押し殺した声を背中に受け、彼のためのこの足を、手を、命を前へと進めた。



――――――――

映画、もっかい行くぞ!!!




.

2009/12/20 12:56



違う。



「「はぁ…お前か」」

声が重なる。ため息も。
さすが、分かってくれるかこの気持ち。
だってお前(ら)なんて、どっちでもよかったんだ。
ただおれはおれの役割を果たすためにも、たった1人の笑顔が見たかったんだ。
大輪の花のようなそれを。
お前らなんて後回しでいいんだ、後で。

あいつの道を作るのは、おれでないと。

苦く噛み締めたら、鉄の味がした。



―――――――


作りながら寝てしまったので、こんな時間にアップ。
これはコックさんでも剣士さんでもいいなぁ…

あー、映画の余韻が。

2009/12/14 07:17



溢れ出る。





若干映画ネタ含む。ご注意を!




























ふつふつと。
隣の少年の体温が上がる。
それをどこか冷めた目で見ていたのはきっと、こいつの頭の中を占めているのが、あの女だと分かっているから。
帽子のつばから覗いたコックの視線にたしなめられ、俺はこの殺気をしまった。
でもそういうコックだって、その実、機嫌はあまり良くはない。
イライラと煙草のフィルターを噛み締め、その不機嫌な細い背中を見つめていた。


でもな、ルフィ。
お前は俺たちが唯一認めた男で船長だから。
お前が行くって言うなら、どこにだって行くよ。
心配すんな、お前の行く手を阻むものは、何もない。
何もないんだ、なぁ、コック。


「船長の邪魔をすんな」
「道を開けろってことだよ」


さぁ行け。早いとこ、その溢れる殺気を消してくれ。

お前のそれは体に悪い。それだけでイッちまいそうなくらい、ゾクゾクする。

お前はただ、前だけ見てたら、それでいい。
背中は俺たちに任せとけ。



―――――――


ダメだ!双璧→船長がとどまらないよ\(^o^)/





.

2009/12/14 01:46



独りきり



腹、減らしてんだろうか。
今はそればかり考えてしまう。

目の前でゾロを消されたときのルフィの悲痛な声が、耳から消えない。
オレでもあんなに泣くのか、とか考えて、あまりの不粋さに自分で笑った。
きっとオレでもルフィはあぁだ。

あのとき、なにやってんだよ、と思った。
マリモ頭のくせに、お前がルフィを泣かせてどうすんだと。

でも今になってみれば、そんなことどっちでもよくて。
ただあの悲痛な叫びだけが、耳に痛い。
ゾロが消えたあと、きっと次々にみんな消されたんだろう。
そのたびにルフィが絶望に泣いていたのかと想像するだけで、握りしめた拳に爪がめりこむ。
あぁ駄目だ。大事な商売道具だった。お前にうまい飯を食わしてやらないといけないからな。

もうちょっと待て、ルフィ。
必ずお前に飯を食わしてやる。
肉のオンパレードだ。
泣かせてすまなかった、と。守れなくて悪かった、と。
だから、もう少しだけ待っててくれ。


なぁ。
お前の花のような笑顔が、恋しい。



――――――


まぁあなたもヤバい状況ですけどねww
男の子で帰ってきてね…!!

2009/12/04 02:33



独りよがり



最後に抱きしめたのは、いつだったっけな。

カビ臭い古城の湿ったベッドの上で考える。
伸ばした手は虚しく空を切った。

意識朦朧のなか、ルフィの声だけは聞こえていた。
あぁまた泣かせちまうなぁ、とか、船長がそんなことで泣いてどうすんだ、とか、そんなことばかり考えていた。
歴然としか力の差は、そんな余裕さえ生み出したのだ。
だって、今の俺たちじゃかなわない。お前が一番よく分かってるはずだ。

目を閉じたら、お前の泣き顔ばかりだ。笑顔なんて、とっくに消えた。

お前だけを血に濡らしたくないんだ。
お前だけで、傷付いてほしくないんだ。



なぁ。
お前の太陽みたいな匂いが、恋しい。



――――――


ゾロ!浮気すんなよ!!

2009/12/04 02:16



独り言



エースを助けたい、死なせたくない。
これは紛れもない本心で、嘘偽りのない気持ちだ。

だけど戦乱の最中にふと、お前たちの姿を探してしまうんだ。
預けていた背中も両脇も、いまはがら空きだ。
無理も無茶もため息混じりに聞いてくれていた声が聞きたい。
こんな爆煙じゃない、苦い煙草の匂いはどこだ。

後ろを振り返ってしまう。
唐突な別れだったから、唐突に現れて後ろで一緒に戦ってんじゃねえかって思って。
有り得ないんだろうけど。


なぁ。
背中に熱が、欲しい、よ。



―――――――


あぁ…!!書いてて悲しくなってきた私が ←
早く一味が集結しますように!むむむ。

2009/12/04 02:07



太陽と空と白球。




「お前、なんで野球やんないの?」

その声に、舌打ちした。




学校のグラウンドが見渡せる屋上にある浄化槽の上は、俺一人の大切な場所だ。
そこから、眼下を見下ろすと、去年までの自分の居場所であったグラウンドが見える。


歓声も、喜びも、俺のものだったはずの場所。

「あー!!いた!!お前こんなとこにいるのかよ!」
「・・・うっせ」

突然思考を遮るような声がして、不覚にも肩がビクリ、と揺れた。
現れたのは、担任。そして、野球部顧問でもあるその人。

「ゾロ!お前浄化槽の上に寝っ転がってたら、体漂白されるぞ?」
「んな馬鹿な・・・とっととグラウンドに戻れよ」
「んー、ダメかぁ。うちの弟は信じてくれたんだけどなぁ」

人の話を聞かないところはこの兄弟の悪いところだ。
ポートガス・D・エースは、ひょいとそれは身軽に浄化槽まで上がってきて、俺の横に腰掛けた。
何故か校内でも手放さない黒いハットが風に吹かれてはためいた。

高校2年の春、酷使し続けた肩は、いとも簡単に壊れた。
違和感を押して続けた結果がコレだ。自分で自分を嘲笑うことさえ出来なかった。
野球にかかわることがつらくて、野球に対する自分の未練が重くて、自然と野球から離れていった。
負けたくない人物が、約束をした人物がいるのにも関わらず。
誰にも負けてはいけないと、自分に課せたはずだったのに。
人を寄せ付けなくなった俺は、それまで仲良くやっていた野球部仲間にまで敬遠されるようになっていった。

しかし、一人だけ俺を厭わない人物がいた。それが、担任であり顧問でもある、目の前の人物、エースだ。
先生、と呼ばれることを嫌い、生徒たちにはエースやエースさんと呼ばせているような男だ。
しかも、俺を厭わない理由が笑えた。

「ルフィがなぁ、ゾロゾロ言っててうるさくってよぉ。馬鹿な弟がますます残念な感じになってきて、またそれが可愛くってな」

弟が俺を気に入ってるから、ただそれだけ、だそうだ。
弟が懐く人間に本質悪い人間は居ないと。
本気で言ってんなら、この兄貴も教職者とは思えないほど頭湧いてるぜ。

その弟という人物は、モンキー・D・ルフィという、この学校内の数人いる中でもトップクラスの有名人だ。
首から麦藁帽子をぶら下げてた格好で校内を飛ぶように動き回り、常に人の中心にいる生徒会会長。
その笑顔は太陽のようだ、とまるで新興宗教のような崇高のされかたで、俺はあんまり好きではない。
ただその人物は、この春からぴたりと動き回ることをやめた。ささやかれるうわさもあるが本当の理由はひとつ。
俺の隣にいるからだ。野球から離れた俺の隣にぴたりと吸い付くようにいる。
そうして馬鹿の一つ覚えのように、毎日毎時間言うのだ。
『なんで、お前、野球やんないの?』――と。

いろいろな光や人に好まれているように、この人物が笑うとその場が華やぐ。
だからこそ、この男の隣に自分は不釣合いだと思ってしまう。
自分の劣等感や情けなさを痛感してしまうから、この男の純粋ゆえの無神経さが大嫌いだった。



「その可愛い可愛い弟様が下から手ぇ振ってるぜ、早くグラウンド戻れよ。そんで残念な弟に言っとけ。俺に付きまとうなって」
「りょーかい。まぁ、ルフィは可愛いからな。変な虫つけたくねーし。お前みたいな弱っちいヤツに興味はねぇよ」
「あぁ?」

かちん、ときた。それは痛いところを突かれたからだ。

「お前、弟に言われなかったか?」
「・・・」
「なんで、野球やらないのか。って」
「うるせーな」

モヤモヤと、胸のあたりが苦しい。

「肩、治ってるんだろう」
「うるせー」

喉の奥がフタをされたように、息ができない。

「お前、野球好きなんだろう」
「っっ!うるせーな!お前ら兄弟うるせーんだよ!人の顔見りゃ野球野球って!
人はみんながみんなお前たちみたいに前向きに明るく楽しく生きてるわけじゃねぇんだ。ほっといてくれよもう」

堰を切った想いは、言葉になって溢れ出るけれど、本当の気持ちは言葉にはできない。

人間に悲しい性だ。

「・・・エース、性急過ぎるぞ」

ぽつり、と後ろからよく通る透明な声がして、ふんわりと首から下がる麦の匂いがした。

そこには、毎日毎時間、俺の横でキラキラ笑う、その人物が立っていた。
大嫌いな、大嫌いな、それでも傍に居て欲しい、輝く人が。

「ゾロ…おれ、楽しそうに見える?明るく前向きに見える?」
「お前のための言葉だろ、そりゃ」

いつの間にかエースと俺との間に立つルフィは、少し悲しげに顔をゆがめ、ゆっくりと俺の肩に触れた。
痛みなどとっくに感じないはずなのに、そこが焼け付くようにヒリヒリと痛む。

「だったらそれは・・・お前のお陰なんだ、ゾロ」
「・・・は?」

泣きそうな顔に胸が痛むのは、その顔がいつかの自分と重なってしまったから。或いは、約束の主の最期の顔に似ていたからか。

「ルフィ、お前、いいのか?」
「エースがきっかけをくれた。ありがとな。やっぱり、エースはすごいな」
「なにをこれしき。可愛い弟のためだ簡単だよ」

エースは見たことも無いような優しい笑みを浮かべると、くしゃり、とその黒髪をかき混ぜた。
弟を見る目では、ないことに、弟本人は気付いているのだろうか。

「おれな、肩あがんねぇんだ。中学のときにやった怪我が原因で肩がもうあがらねぇの。水泳とかも結構きついんだぜ」
「・・・」
「でもな、負けたくねぇから、怪我とか自分とかに。だから野球部の応援力入れてんだけどさ、ゾロがいねぇんだもん。つまんねぇよ。
お前はさ、おれが認めた男なんだからさ、怪我くれぇで腐んなよ」



――――――


これも使い回し。エコ。
どうやら私はゾロを高校球児にしたいらしい(笑)
これも再考が必要だなぁ…続き書くんなら。
だめだ、取り留めが無さ過ぎる。



.

2009/11/17 20:35



青い春。



お前はおれの夢だ!

輝く夏の日差しに負けないこいつの笑顔は誰よりも眩しくて、そして誰よりも儚げだ。

高校2年の春。帰宅部というポジションにもあきてきた頃に、その転校生はやってきた。
そして、やたらとまとわりつく存在となった。
いつも、毎日、毎時間。
教室へ来てはまず、開口一番こういうのだ。

「ゾロ!野球部に入ろう!!」

目元に造った傷を歪め、少しばかり風変わりな後輩はにかり、と笑った。

その後輩の名前は、モンキー・D・ルフィ。物怖じしない度胸と、破天荒なあっけらかんとした性格。
明るい太陽みたいな(勘違いするなまわりの評価だ。俺がそう思っているわけではない)笑顔。
そして、首からぶら下げた古びた麦藁帽子。
”転校生”というだけで周囲の人間に好奇の目を向けられているわけではなさそうだ。

「だからやんねぇって!お前の耳は節穴か!」
「む、しつれーなやつだな。ちゃんと聞こえてるからこうやって毎日毎日お前んとこに来てんだろ。なぁ、見に来るだけでも!な?」

黒い髪をゆらしてくるくると表情を変える。まぁ、確かに人気が出るはずだ。

「まぁまぁ転校生君。ちょっと強引すぎやしねぇか?こいつのクソめんどくさそーな顔見たらわかるだろ?とっとと諦めて教室帰れ」

な、と言い聞かすように同じクラスの金髪男が言う。
教室で堂々と咥え煙草。いい度胸だ、こつもつくづく。

「・・・サンジ、だっけ?なんでおれがあきらめなきゃなんねーの?おれがゾロを野球部に入れるって決めたんだ!」

だからどうした!とその転校生は笑った。
はぁとついた溜息はチャイムの音にかき消されて、また怒涛の休憩時間が終わった。

「おめぇよ、まだ未練あるんだろ。いい機会だからよ、ちょっと覗くだけでもいいから行ってみれば?」

教師が入ってきた教室で、後ろに座ったぐるぐる眉毛が呟いた。綺麗に無視したら椅子を蹴られた。
どいつもこいつもおせっかいにも程がある。

高校に入った春、中学生の頃そこそこ有名だった俺は野球部に入った。
まだ弱小のそこはお遊びのような野球とバカみたいなやつらとでそこそこ楽しく毎日を送っていた。
強さだけを求められた中学時代の野球。もう嫌気がさしていたのは事実だ。
だから強さよりも野球を楽しむその部の雰囲気が俺は好きだった。

しかしそれが終わったのは、それから4ヵ月後。
簡単に言えば部の不祥事。俺を含む数人が喧嘩した相手は、県内でも有数な野球強豪校の部員。
相手は5人だったか。もう夏の大会を制した後、あとは甲子園と順風満帆な野球人生を歩むはずだった学校。
不祥事で名前は汚すことはできない。
そう判断した相手校は今回の事件を明るみに出さない代わりにこちらの野球部の廃部を希望した。
もともとあってなかったような部だ。廃部になるのに時間はかからなかった。

『ということで!今日限りだ野球部は。今までお疲れさん!』

いやにさっぱりとした別れだったな。今ふと思い出しても、何の感慨もわかない。
まぁ、その程度だってことだ、ぐる眉よ。
それから更に半年、産休の教師の代わりに来た新しい教師が野球同好会を作った。
なんでも高校で野球部の顧問になりたくて、高校教師になったそうだ。なんて男だ。
そいつが作った野球同好会は、以前の野球部にいた面子がチラホラと集まった程度で、やっと野球ができるなという人数。
笑っちまうよ。別に俺は甲子園に行こうなんて思っちゃいない。
だけど、野球をやりたいのは事実なんだ。
だけど自分の学校の名前可愛さにすぐに俺たちの部を廃部にした学校も、自分の甲子園街道可愛さに部の廃部を求めた相手校にもほとほと嫌気がさしたっていうのも本当。
だから、この学校で野球をする気にはさらさらなれねぇんだ。




――――――


ボツ作品の使い回し。ここまで書いて終わった。
確かにこりゃ続き書けねぇわ。
ちょっと再考が必要ですね。


.

2009/11/17 20:35



55巻買いました


ドラゴン…風に吹かれてるときヴァナタ、どこにいても…同じ方角を向いてるわよね…

…そうか?妙な所に気づく奴だな
――特に意識したことはない

じゃあ動物の帰巣本能ってヤツかしら。
そっちに故郷があるのでは?東の海に想う家族でもあるの?……どう?

……素性の詮索はよせイワ…!!

ン〜〜〜フフ、失礼…


***


ドラゴン、ヴァナタ、眉間の皺がいつもより二本も多いわ。

イワ…、お前はいつもおかしなところばかり。

なにか頭を悩ませることでもあったのかしら?

……東の海に置いてきた可愛い息子に、緑色と黄金色のおかしな虫がついているようでな。

ンフフ、ヴァナタもやっぱり人の親なのねぇ。未来のお嫁さんのなぁにが気に入らないの?

うちの息子は無意識に虫を呼び寄せる体質のようでな、心配なんだあいつの貞操が。あんな魔獣やら下半身で生きてそうな男たちの中に置いておくなんて…!あいつは可愛いから我慢が効かなくなったりしないだろうか。

…ドラゴン、その二匹の虫って。

可愛げの欠片もない男だ。うちのバカ息子と違ってな。

ヴァナタ、案外、…親バカ?


***


イワ!!見てみろ!!!

なぁに、ドラゴン。いきなり大きい声を出して。

これだ。

あら、可愛い麦わらボーイじゃない。ルーキーね。

あぁ。ルーキーだ。時代はこのような(可愛い)男を待っていた!

(…なにか余計な声が混じってた気がしないでもないけど…)そうね、エニエスロビー襲撃なんて、普通のルーキーはしないわね。

あぁ、いかにも信念を持って育った(愛らしい)男だな。

(・・・ヴァタシ、何か聞こえるんだけど、気のせいよね)


***


ドラゴン!大変ッチャブル!!
世界政府がついに・・・

あぁ、そのようだな。

・・・ヴァナタ、どうして天竜人の事件の新聞記事、切り抜いてるの?

可愛、・・・・・いや、世界が動いた歴史ある1日だからだ。

・・・・・・・そう。(最近、ヴァターシの耳は幻聴が聞こえるようだわ)

***


可愛く育ったな、我が息子よ。
目元の傷は目立つが…まったく赤髪め。可愛い顔に傷を作らせよって。


イワンコフさん、ドラゴンさんはなにを……

ヴァナタたちは何も見ていない、聞いていない。ヴァターシも何も聞いていないし見ていない。
忘れましょう、お互いに。

そう…です、ね。


□■□■□■

(あの片時も離さないそれは、日記帳だったのね…ドラゴン)

イワンコフは自分の胃に、黒い両手を向けた。


―――――――


父ちゃんこんなだったらウケる!
なんだかんだで常についてまわってそうだな父ちゃんww



.

2009/11/17 20:34



恋涙


透明な雫が落ちたのが、合図。


「一人で泣くな、ニコ・ロビン」

人工物であるはずの力強い腕が私を包んで、その人間じみた温もりがさらに涙を誘うことに、
あなたはお気づきでは無いのかしら。

「えぇ……ありがとう、フランキー」

甲板でひとり何を考えていたのか、漆黒の髪と瞳を揺らしてその女は泣く。
その涙がますます美しさを際立てることに、お前は気付いていないのか。

「泣き止むまで」
「えぇ、もう少しだけ」

触れ合うことに意味を持ちたがるのは、大人になってしまった証拠かしら。
抱きしめた腕に力を籠めることに躊躇いを持つのは、大人になった証なのか。

(それとも単純な 恋という感情を 忘れていたから なのかしら)
(それとも単純な 恋という感情に 戸惑ってしまったから なのか)

いまはただ、潮風が二人を撫でていくだけ。


―――――


大人になると、いろんなことに臆病になるよねーって話。



.

2009/11/17 20:34

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