◇夜の自警団◇ ――アリアハン城下町、ルイーダの酒場「相変わらず、クソ不味いな」 そう言って、食いかけの焼き鳥を皿の端へと吐き出したニノ。先に注意を促しておこう。この場合……ドラクエ世界にありながら“焼き鳥”などという、日本ちっくな名称に突っ込んだ時点で“負け”である。「相変わらず口が悪いわねぇー。魔法使い君は……兄貴に代わって、お仕置きよっ」 一世を風靡したセーラー服戦士を真似た文句を吐き、セーラー服ヤンキー漫画のヒロインの如く煙草を押しつけるルイーダ。 流石、荒くれ冒険者相手をしてきただけあって、ルイーダの行動には半端が無い。「あ、熱ぃってのっ!! な〜にしやがんだよ。嫁き遅れ年増女が!」 灰皿代わりにされた手の甲を、ニノは息を吹きかけ、懸命に冷やそうとしていた。 ……お気付きの方もいるだろうが、他の仲間は不在である。ニノだけなのは、怠慢ではなく、大人の事情とでも言っておく。 その時である。 震度5強くらいの揺れだ。ルイーダの店全体が、左右上下に大きく揺さぶられた。