2014/04/08
FF1

※書きはじめが2008年とか恐ろしい、困った文です(苦笑)。未だに終わらないし、オチも考えてなかったくさいので投下。
まあ、見切り発車はいつもの事です。



 どうしてさ、クリスタルが俺を選んだのか、運命に導かれてこの地に降り立ったのか。分からない事は山ほどある。でも、世界が悪に染まってしまう前に、悪を裁ち切らなければ。それが出来るのが自分しかいないなら尚更。

 気が付くと戦士はコーネリアに辿り着いた。
 コーネリアは大きな都市で盛大な賑わいを見せていた。大通りを歩いていると、急に前から走ってきた男にぶつかった。首にぶら下げていた戦士のクリスタルが大きく揺れた。
「いってぇ! 前見て歩け、この」
 全身緑系の服で頭にバンダナを巻いていたその男から明らかにぶつかって来たのに、不服だと戦士は顔をしかめた。
 だが、その男には戦士の胸元で輝くクリスタルを見て目の色を変えた。
「それ……!」
「え?」
 一瞬動きが止まった直後、遠くから怒鳴り声が響いた。
「オラー! クソガキー!」
 見ると、凄い剣幕の中年の男がこちらに向かって走って来る。
「うげッ」
 バンダナを巻いた男はあからさまに嫌な顔して、一目散に逃げて行ってしまった。
 何が何だか分からぬまま、立ち尽くす戦士の所へ、追いかけて来た男が立ち止まった。
「おまえも仲間か!」
「仲間?」
 切らした息で質す男。戦士は首を傾げた。苛立つ男は声を荒げる。
「さっきのシーフだよ!」
「違いますよ。俺は今さっきぶつかられて。仲間も何も、知りません。この町に来たのも今日が初めてですし」
 何だか厄介な事になりそうなので、急いで釈明した。すると納得してくれたらしく、男は落ち着きを取り戻した。
「そうか。すまねぇな」
「いえ」
 男は大きな溜息をつく。何か余程の事があったのだろうと、気になった戦士は男に尋ねた。
「一体どうしたんですか?」
 すると、男は聞いてくれと言わんばかりに話し始めた。
「あのシーフは、この町じゃ有名な悪党兄弟の弟なんだ」
「悪党兄弟?」
「ああ。兄はモンクでね。奴らはコーネリア城やら人家から盗みを働いているのさ」
 物騒な話だ、と戦士は嫌気がさす。何処の町にも必ずそういう悪い奴がいるものだ。
「俺はその兄弟を取っ捕まえようとしているコーネリア自警団だ。だが、見ての通り。この有様よ」
 男はハァと深い溜息をつく。なかなか手強いらしく、イタチごっこ状態なのだと言う。
 ここで会ったのも何かの縁だろうと、戦士は男を助けてやる事にした。
「あの。俺で良ければ協力しますよ」
「本当かい! いや〜助かるよ」
 男は嬉しそうに戦士の肩を叩いた。


 次の日、戦士は泊まっていた宿屋から大通りへ出た。昨日はここであのシーフと会った。
 自警団の男によると、シーフは良くこの大通りに姿を現すのだと言う。
 今日もいるかも知れない。とりあえずぶらりと歩きながら注意深く捜した。
 その時、声が上がった。
「泥棒ーっ!」
 戦士は声がした方へ走った。穀物を売っている露店の店主が叫ぶ。
「誰か捕まえてくれぇ!」
 戦士の目の前に逃げるシーフが迫って来た。捕まえる絶好のチャンスだった。だがシーフはその手前の路地に逃げて行ってしまった。戦士は慌てて追いかけた。暫く追っていたが入り組んだ道に迷い、姿を見失う。そして道は塀に阻まれてしまった。
「くそ。行き止まりか……逃げ足が速いな」
「そりゃどうも」
 そう一人呟いたのに返事が返ってきた。戦士は塀の上を見上げた。そこに塀に座るシーフがいた。
「あ!」
「あんたさあ、よそ者だろ。この街の事にいちいち首突っ込んでくるなよ」
 シーフは戦士を迷惑そうに見下ろす。
「何言ってるんだ。おまえが悪さをしてるから、俺は捕まえるのに協力してるんだ」
 言い返す戦士にシーフは溜息をつく。塀から下り、戦士に詰め寄った。
「そんなの、偽善にしかすぎないんだよ」
「いいから、来いよ!」
 戦士はシーフの手首を掴んだ。その時、シーフの開けた服の胸元にクリスタルがちらついたのが見えた。
「あ──」
 戦士は思わず止まった。そのクリスタルは自分が首に下げているクリスタルと色違いなだけで瓜二つだった。
「そのクリスタル……まさか!」
 クリスタルに見入る戦士。
「な、何だよ」
 たじろぐシーフ。しかし、シーフも戦士とぶつかったあの時、似たクリスタルを持つ戦士を見て驚いていた。このクリスタルは世界に二つしかないと思っていたからだ。一つはシーフ。もう一つは……。
「シーフ!」
 シーフは名前を呼ばれてハッとした。戦士もその声にシーフと同時に塀を見上げた。そこには機嫌悪そうな顔をしたモンクが仁王立ちしていた。
「あ、兄貴」
 シーフは泣きそうな顔をしてモンクを見詰めた。
「何をしている。行くぞ」
「う、うん」
 シーフは塀に飛び乗った。その時、モンクは下にいた戦士を疎ましそうに睨み付けた。だが、戦士は見逃さなかった。そのモンクの胸元にも、光り輝くクリスタルがあったのを。
 胸がドキドキする。クリスタルが教えてくれるのだ。
 彼らは、
 選ばれた仲間だ、と。
 興奮が覚めやらぬ中、戦士は清々しい顔でその場を後にした。

 今日も大通りは賑わい、人で溢れている。戦士は適当に次に旅立つ時の為のアイテム等を買いながら、シーフの姿を探していた。捕まえて説得して、盗みを止めさせたい。そしてモンク共々、一緒に世界を救う旅に出て欲しい。だが、今日は見当たらなかった。午後になったらコーネリアの外れにあるスラム街の方に足を運んでみようと思い、いったん宿屋に帰り昼食をとった。空腹もそこそこに満たされ、戦士はスラム街へ向かった。城下の賑わう華やかな情景から一変し、静かで寂れている。
 暫く歩き回ってみたものの、シーフやモンクらしき姿は一切なかった。
「ここなら、いるかと思ったのにな」
 戦士は諦めて帰ろうとしたが、手前の路地を見覚えのある男が、左に曲がったのが見えた。戦士は一目散に駆け出した。そして、後ろ姿が視界に入った。緑のバンダナ。間違いない。戦士はその無防備な男の手首を背後から掴んだ。
「うわっ!」
 驚いて振り返った男は、やはりシーフだった。
「な、おまえは」
「やっと捕まえた」
 戦士は乱れた呼吸しながら、笑んだ顔でシーフを見た。
「はっ放せっ! あのオヤジの所になんか連れてかれてたまるか!」
 必死に逃げようと戦士の手を振り払おうとするシーフ。
「ち、違うよ。俺は」
 握る手に力を込め、放さなかった。だがシーフは聞く耳を持たない。
「嘘つけ!」
 とうとう戦士を振り切ってとんずらしてしまった。
 戦士はがっくり肩を落とした。これでは説得もままならない。何か他の方法を考えなければいけない。
 仕方なく、今日の所は引き返す事にした。
 大通りに戻ると、あの自警団の男が近付いて来た。
「おーい!」
「どうしたんですか?」
 走って来たかと思えば、いきなり戦士に言った。
「とうとうガーランド様が重い腰上げてくれたよ」
「え?」
 戦士は嫌な予感がした。ガーランドと言えば騎士隊の隊長である。
 それはいみじくも的中してしまう。
「悪党兄弟を連行して裁判だ」
「裁判って」
 驚きの余り声を上げる。
「ああ。形式上だけで打ち首当然のな。明日の夜、スラムに闇討ちをかける。奴らもおしまいさ」
 嬉しそうに話す男を余所に、戦士は顔色を無くした。
「これで町の秩序も保たれるって訳だ」
 そんなの可笑しい。戦士は言い返そうとして喉まで出かかった。だが、やはり仲間だったのかと疑われるに違いない。ここは堪え、適当に話を合わせた。
 その後宿屋に戻り、じっと身動き一つせずに考え込んだ。
 いくら悪い事をしているとは言え、二人はクリスタルを持っている。選ばれた、光の戦士。
 戦士は立ち上がって部屋を出た。もう迷っている場合ではなかった。
(二人を、助ける……!)

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