がる空
25

死ぬ気の炎での攻撃によって、アクマと呼ばれる機械兵器は破壊された。爆発した為、周囲には少しの破片が残されたのみ。しかし暴れまわったアクマのせいで、市街地は酷く荒れていた。

「し…死ぬかと思った…」

そんな多くの瓦礫が散乱した石畳に、綱吉はへなへなと座り込んだ。研ぎ澄まされ凛としていた雰囲気は消え、炎を操っていたグローブもミトンに戻ってしまっている。眉尻を下げ、今頃になって目尻に涙を溜めている様子は、はっきりいって情けない。
しかし、そんな綱吉に向かって、キラキラとした眼差しを向ける者が居た。

「っていうか、あのアクマ…」
「すっげええええぇぇ!!」
「ぎゃあああああああ!?」

ドーン!とスライディングしながら勢いよく飛び付いてきたジャンを受け止めきれず、綱吉は後頭部を強打した。鈍い音を聞いて、若干放置気味のジェレミーがぎょっとするが、ジャンは気付かない。

「お前もエクソシストだったのかよ、ツナヨシ!俺、炎操るエクソシストが居るなんて初めて知ったぜ!」

「いや、エクソシストじゃないし…!ってかエクソシストって何!?」

「っていうかアレンといいツナヨシといいなんでこんなモヤシみたいなのがエクソシストなんだ?エクソシストは皆モヤシ?」

「オレの話聞いて…っていうかオレ馬鹿にされてる!?」

「すっげーよ、ツナヨシ!俺、お前のこと誤解してた!」

「……もう、いい」

綱吉は言葉のキャッチボールを諦めた。若干どんよりとした目は虚空を見つめている。マシンガントークを聞き流していると、不意にそれは止まり、ジャンが綱吉の左手を指差した。

「あれ?そのイノセンス、そんな形だったっけ」

「あ、そーいえば…」

ジャンの言葉に、綱吉は自分の手にあるイノセンスをジェレミーと共に覗き込んだ。言われてみれば確かに。小さな輝く直方体のみであったイノセンスは、球状の透明な容器の様なものに包まれていた。

(まるで、閉じ込めているみたいだ…)

ふっとそんな考えがよぎって、それに綱吉は首を傾げた。なぜそんな事を思ったのだろう。このイノセンスという物質は、生き物ではないのに。
そんな綱吉の隣で、ジェレミーとジャンは嬉しそうに笑った。

「まあ、運びやすくなったし…」

「光も目立たなくなったしね」

きっと先程の少女が気を使ってくれたのだろう、と結論付けて、「イノセンスゲット!」と二人はハイタッチをした。二人の嬉しそうな様子に、綱吉も表情を緩める。まだ状況はよく分からないが、取り敢えずはこれでいい気がした。
そう思ってほっと息を吐いた綱吉を、ジャン達が振り返った。ジェレミーがジャンに何やら耳打ちをし、ジャンが目を輝かせる。そんな様子をボケッと見守っていた綱吉は、突然二人に腕を掴まれてぎょっとした。

「おい、ツナヨシ!お前訳アリなんだって?」

「は」

「実はさ、今から綱吉お兄さんも一緒にジャンの家に行こうって話になったんだ」

「へ?」

「早く行こうぜ!なあなあなあ、ツナヨシって装備型?寄生型?」

「寄生って何!?」

「はは、何か今日ジャンのテンションがいつになく高いから、うっかり解剖されない様に気をつけてね」

「解剖…!」

「よっしゃ、善は急げ!行くぜツナヨシ!ジェレミー!」

「え、ちょ、ま」


見知らぬ世界にやって来て僅か二時間足らず。綱吉は年下に拉致られた。




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