がる空
08



「ガハハハ!ランボさんだもんねー!ツナァ、オレっちと遊べーー!!」

「面倒くさいの来たー!!」

頭を抱えた綱吉に向かって、一直線に走ってくるランボ。その少し後ろには恐らくランボに振り回されているであろうフゥ太とイーピンの姿があった。

「うぜぇぞ」
「ぴぎゃ…!」
「相変わらず容赦ねー!!」

リボーンの華麗な回し蹴りで吹っ飛んだランボ。先を走っていた筈のランボが飛んできて驚いたフゥ太達は、その場で尻餅をついた。
が、綱吉達に気付くと、ランボを放置して駆け寄ってくる。

「ツナ兄!……あっ」
「あ、」
「ああん?」
「……」

犬達を見てあからさまにたじろいだフゥ太と、首を傾げるイーピン。綱吉が慌ててフゥ太を抱き上げた。
ランボは吹っ飛ばされて少し離れた位置でグズグズと泣きじゃくっていた。「が・ま・ん…」と言いながらモジャモジャの頭をあさっているのを見る限り、また何かしでかすつもりらしい。

「しないもんねー!!!」

取り出したのは十年バズーカ。またかー!という綱吉の叫びを無視してランボがバズーカを撃とうとした時、ランボの真下の地面が光った。

「ランボ!」

「あららのら?これなあに?」

「アホ牛!そこから離れろ!」

光に吸い込まれる様にして消えていくランボに、獄寺が駆け出して手を伸ばすも、それは空を切った。獄寺から舌打ちが漏れる。フゥ太を抱えたまま、綱吉は呆然と立ち尽くしていた。


ランボが消えたのだ。それも目の前で。


「一体…どうなってるんだよ!」

「十代目…」

「落ち着きやがれ、ツナ」

取り乱す綱吉を見て、リボーンが綱吉を叱咤しながら獄寺の肩に飛び乗った。

「とにかく、さっきの様な事がいつ起こるか分からねぇ以上、骸も言っていた通り一人では行動すんなよ。これからオレと獄寺で山本の所へ向かう」

「げ!」

獄寺はあからさまに嫌がったが、リボーンは無視した。

「ツナ、お前はクローム達と一緒に了平を探せ。今日は珍しく京子と一緒に商店街へ向かったそうだ」

「分かった!」

「何でオレらがそんな事しなきゃいけねーんらよ!」

「めんどい…」

反発はあったものの、一応協力してくれるらしい。それを確認したリボーンは、渋々といった様子の獄寺と共に学校へ向かった。
綱吉もフゥ太達を家に帰るよう促す。フゥ太は何かを感じ取ったのか、イーピンを連れて行ってくれた。クローム達に振り返った綱吉は、犬と千種の不満げな視線に思わずたじろぐ。が、堪えた。


「じゃ…じゃあ、オレ達も…」
「つ、ツナさぁぁぁぁん!!」

「また面倒くさいの来たー!」

急いでるのにー!と頭を抱えた綱吉にハルが嗚咽を漏らしながら飛び付いて来る。そこでようやく綱吉は、ハルの様子がいつもと違う事に気付いた。

「って何で泣いてんの!?」

「うっ…き、京子ちゃ…がっ」

「京子ちゃんが、どうした?」

「京子ちゃんと京子ちゃんのお兄さんが、消えちゃったんですーーー!!」

「んな!」

綱吉は呆然とした。手遅れだった。しかも守護者だけでなく、京子までもが巻き込まれてしまった。これではまるで、

「これじゃあ未来に行った時と同じじゃないか…!」

「ボス…」


ハルの泣きじゃくる声が、やけに響いた。



††



同時刻。

並盛中学校、野球部部室前。
獄寺は苛ついていた。

「おせーんだよ、あの野球馬鹿!」

と言っているが、山本が部室に入ってからまだ20秒程しか経っていない。
部活の途中だった山本に手短に状況を説明すると、昼休みの事もあってか山本は顔色を変え、部活を早退する事にした。あの野球大好きな山本が早退すること自体が奇跡に近い。

「遅ぇ!」

きっかり30秒で部室から出てきた山本に、獄寺は開口一番にそう言った。理不尽だ。

「わりィわりィ。んで、これからどーすんだ?」

「取り敢えずツナ達と合流するぞ。雲雀は…一緒には来ねぇだろうからな。アイツは後だ」

「ハハッ、だろうな」

「よし!急ぎましょう、リボーンさん。おいコラ山本!さっさと走れ!」

「分かってるって」

リボーンを肩に乗せたまま、獄寺が走り出す。その後に続く様に山本が足を踏み出した。その時、だった。

「!?」

ドサリ、と何かが落ちる音に、獄寺とリボーンが振り返る。そこには、ランボの時と同じ光る地面に消えていく山本の姿。

「ヤッベ…!」

山本は何とか抜け出そうとしている様だが、光は容赦なく山本を呑み込んでいく。いち早く反応したリボーンが素早く光に向かって飛び降りれば、その体は透明な壁にぶち当たったかの様に弾き飛ばされた。

「何…!」

「小僧!…クソッ、悪い獄寺…」

――ツナ達を、頼む。

そう言った山本の顔が見えなくなる。
一瞬顔を俯けた獄寺は、次の瞬間、走り出した。自分が先程走った事で開いた距離を、全速力で駆け抜ける。最早山本の指先しか見えなくなっている光る地面。その少し手前で駆け抜けざまに山本の野球バッグを掴み上げ、勢いよく跳んだ。

「…守護者なら、行けんだろーがっ!」




††



「はひ?!」

「ハル、離れろ!」

唐突に、綱吉の足元が光った。咄嗟に突き飛ばしたハルは、千種達にぶつかった。

「…ボス!」

「クローム!?」

綱吉が光に呑まれる寸前、クロームがしがみつく。
二人が消えると、その場には何事もなかったかの様に穏やかな風が吹き抜けた。

「ど…どうなってんら?」

「ツ…ツナさんと、クロームちゃんまで…」

「……めんどい事になったね」

千種が眼鏡のフレームを押し上げると、それを合図にしたかの様にハルが泣きじゃくった。




(上手くいった?)

(うん、全て計画通りだ)




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -