バネ+サエ
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「剣太郎がさ、なんか最近元気なくって」




目の前の男がはあと溜め息をついた。この憂いを帯びたカンジはきっと女子にたまらないんだろう。憂いを帯びるって一体どんな動詞か俺はあんまり分かってないけど。


「ふーん?俺は最近会ってないからよく知らねぇなあ」
「そっか…俺たまに一緒に昼食食べるんだけどさ、なーんか、いつものあいつじゃないっていうか」


しかし恋人、しかも男の…について悩んでこんな顔してるんだから、きゃーきゃー言ってる女子にはなんだか同情したくなってくる。


「まぁ、ここでバネが俺よりも剣太郎に会ってる、なんて言われたら嫉妬で何しでかすか分かんないけどね」
「あっそ…」


あはは、と爽やかにサエが言う。怖い。めちゃくちゃこの同級生が怖い。
俺は15歳という若さにして人間の裏側をこいつを通して随分と見てしまった気がする。何も知らなかったあの頃の俺に戻りたいねまったく。


「あーもー剣太郎どーしたんだろ。聞けば言ってくれるかもしれないけど聞いていいことなのか分かんないし。ていうか、聞いて教えてくれなかったらショックだけどね。数週間は立ち直れないかもしれない剣太郎に隠し事されるなんて」


嘘をつけ。
お前がそのくらいで大人しくなるもんか。お前が剣太郎をどれだけ愛しているか一番知ってるのは俺かもしれない。過度な惚気は控えましょう。用法用量を守ってください。ピンポーン。なんてな。しかし薬品のCMの最後にある注意書きあんな一瞬で読み切れなくないか?これだから商売というのはズル賢い。


「……バネなに考えてんの」
「悪質商法について」
「なんで!!?俺の話ちゃんと聞いてくれよ」


あぁこのわざとらしく拗ねた(※ぜんっぜん可愛くない)ような表情をする男の何処がいいと言うんだね少女たちよ。恋は盲目。きっと女子には爽やかで無駄に男前な佐伯虎次郎しか見えていないんだろう。

恋は盲目か。

この剣太郎しか見てないこいつにはぴったりかもしれない。


「あーバネなんかホームシックこじらせて死んじゃえ」
「残念だな。今年の初詣は俺は無病息災を祈ったから」
「え?バネがよくそんな四字熟語知ってたね。ていうか合格祈願じゃないの?」
「受験くらいどうにかなるだろ」


そう俺たちは受験直前。
こんな友人の恋人の話なんかしてる場合じゃない。

あ、いや、ちょっと待て。少し話は戻るがもしかしたらこいつは盲目なんかじゃないかもしれない。全てを見て、その上で剣太郎をただ愛しているんだ。





   

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