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7:続・好きだけど愛ではない
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その瞳は見えずとも、面と向かって好きだと言われ無防備な肉体に触れて喜ばないジャガーではない。珍しくどこかぎこちないピースの姿に、罪無き可憐な町娘を犯す強姦魔のような顔でもしていたろうかと思い返す。
(まぁ楽しかったし、それは仕方ないし)
ストレートな好意に上機嫌になりながら、先に言われた言葉を反芻する。好きな理由を聞かれたのなんて、一体いつぶりだろうか。少なくとも、今の恋人からは聞かれたことはない。(だって彼が俺にベタ惚れだもの。)
「君が持ち得る力を最大限にみせてくれるのって、すごくかっこいいし、特別だし、ドキドキするじゃない。それの矛先が俺に向いて、どうして俺が君にときめかないっていうの」
あくまで俺は、だから、どう思うかは君の自由なんだけど。
頭の中を整理するには、言葉にしてしまうのが良い。足りなければ補う。伝わらなければ熱意を込める。誤解されれば弁解する。戦争ではないし、言葉を理解出来る相手であり、お互いに好意を持っているし、時間もたっぷりあるのだから、ゆっくり話していけばいい。それを受け入れられるかどうかはまた別の話だが、蟠りに掛かる靄は晴らしておいてもいいだろう。
「死んだら、どうするんだ」
「田中君が綺麗に肉だけ削いで部屋に飾っといてくれるんだってさ。この間聞いてきたの」
恐らくそういう意味ではないのを承知でけらけらと笑う。良い子に聞かせる話しじゃないなと思う。暴力と言うには余りに純粋なその規格外の力は、ジャガーの心を恋する乙女の如く舞い上がらせるに値する。楽しい。嬉しい。格好良い。素敵だ。支配下に置きたい独占欲よりも、敵意を向けられたい被虐欲よりも、痛め付けたい嗜虐欲よりもずっと甘く、研ぎ澄まされ弾ける高揚の味が勝るのだ。それを齎すピースを、好きにならずにいられようか。
それは戦争ではない。戦闘である。闘争である。勿論、加虐被虐共に許容できるために圧倒的な武力による制圧を好まないといえば嘘になるが、ジャガーは積み上げられた権力でヒトを蹂躙する方法を知り行使できるが故に、一方的な暴力でない、頭蓋を砕き腹を切り裂き腕を引き千切り足を潰し、尚且つ打てば打たれるそれを好むのだ。
ただ力を持つ者の娯楽だと言われればそれまででも、何しろジャガーは愛され娯楽と戯れに生きてきた。誰かに嫌われることと失うことは、それ以上に好意を寄せられる事実によって意味を成さなくなることを知る以上、そのままで良いのだと思っている。ジャガーにはその非道を補って余りある情と欲がある。
理解できないのもまた一興なのだと、ずっと一緒の仲良し三人組の可愛いこの男は、俺が生きている間に理解できるだろうか。





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