拳銃と私
私は何回あなたに傷つけられてきたのでしょう。
はじめて会ったのは、思い出せない程昔の事。
あなたは直ぐに手が出るタイプではないし、言葉もそんなに雑ではない筈なのだけれど、それなのに私はあなたに傷つけられているのです。自然に、知らないうちに。
スパン
という矢を射る音がこの体育館に響き渡る。私は数年前に弓道はやめてしまったのでこの音を聞くのも久しぶりだ。
ずっと先には今日のお目当てである木ノ瀬梓がいるけれど、私は目を閉じてそこに座っていた。結果なんて、音だけでわかるのだ。
なにせ、あなたはやると言った事は必ずやってしまう。それが私にはとても難しくて、羨ましくて、遠い事だ。
スパン、とまた的中する音が聞こえれば幼馴染として誇らしくもあるのと、何に比べても劣る私に腹が立つのとが入り混じり、心臓のあたりが突き抜けるようだ。
梓の呼ぶ声に瞼を押し上げると、眩しくて眼球の奥の方が痛い。
「どうかした?」
「いきなり目を開けたら眩しかった。」
目を擦ると少しずつその明かりを受け入れる事が出来た。梓は汗をかいている様子でもなく、会った頃と変わらない爽やかな笑顔で「見ていてくれた?」と言う。
「見てはいなかったけど聞いてたよ。」
「見てよ。」
「ごめん。」
「音でわかるもの?」
「わかるよ。梓のは特に突き抜けてるから。」
「ふぅん。」
何処か納得のいかないようだったけれど部員に呼ばれて、手を軽く降って身を翻した。
多分あなたが私に放つのは、木でできた矢ではなくて、重たい金属で出来た銃弾だ。
それがとてつもなく痛くて、私は痛みに顔を歪めながらそっけない態度をとって、話したい言葉の一割も言えない。
銃弾は胸に残り続けて、帰り道も夕飯の時間も梓の事ばかり。
今日も明日も梓のせいで胸のあたりが膿んでいる。
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うああぁぁぁ!!!!!
ついにきましたよ!!
『月とナイフ。』の梅野様から貰いました。(*´∀`)
しかも、題名もテーマもサイト名の『拳銃と私』!!
意味もピッタリです。
ありがとうございました!!(^人^)