僕の声が好きなんですか?
帰り支度をしていると前の席の月子がいきなりこんなことを聞いてきた。
「聖は梓くんのことが好きなの?」
「うーんと、声が好きかな。まず喋ったこともないしね」
なんていうんだろうな、あの高くて、でもこれから低くなっていきそうな、そんな微妙ないい声。好きなんだよなぁ。
月子はそんなかなりキモイことを顔を赤らめながら言う私にツッコミはせず「そうなのかぁ..」と何かを考え込むように言っている。え、ちょ、月子?これツッコミ入れてくれないと私かなりやばいやつだよ?手遅れだよ?
そんな私の心の動揺の声を用事で今はここに居ない七海くんが頭の中で「もう手遅れだろ」とつっこんでくれた。ありがとう。
「...よし!聖、ちょっとここで待ってて!すぐ戻って来るから!」
「え、ちょ、月子!?」
なぜかキリッとした目つきになって教室を急いで出ていく月子。
いや、可愛いけど何処行くの!!??
意味が分からず茫然とその場に突っ立っていると月子が消えて行った廊下から人影が教室に入ってくる。その人影は私のほうに迷いなく歩いてきた。
え、
ちょっと待ってよ
この人まさか
茫然とする頭をなんとかフル活動させて人影の顔を恐る恐る見ると想像していたのと同じ人がそこに立っていた。
「木ノ瀬くん...」
「えっと、話すのは初めてですよね。初めまして、藍野先輩?」
にっこりとかわいらしい笑顔で「僕の名前、知っててくれたんですね」なんて言う木ノ瀬くん。そんな彼を見ながら急の出来事にクラクラする頭。
そんな時、携帯に一通のメールが着信された。差出人は言わずもがな月子からで、内容は『前から梓くんが聖と話してみたいって言ってたから呼んじゃった!梓くんの声が好きならもっと仲良くならなきゃね』と書いてある。
....おい、これ本当に月子か。いや、うん、まあ、たまに強引になるとこ嫌いじゃないけどね....。
「あ、そういえば先輩」
「は、はいっ..!?」
「夜久先輩が教えてくれたんですけど、」
唐突の呼びかけといい声に心臓がバクバクする。
ああ、私無事に帰れるかな...。
ーーーそして木ノ瀬くんは私が予想だにしていなかった言葉を放つ。
「僕の声が好きなんですか?」
(月子ぉおおおおおおおおおおおお!!!!!????)