ぽきん、
俺が歯で折ったポッキーがいい音をたてて口の中に残る。
「……あの、いります?」
目の前で俺の食べるポッキーを羨ましそうに見ている男の人にそう言ってみた。ネクタイの色からして姉さんと同じ…つまりは二年生だと思うんだけど。
眉間のシワを深めながらポッキーを見られると俺もどうしていいか分からなくなってくるし…。
「あ、の。先輩?いります…?」
「む。しかし、それは…」
「俺は大丈夫っすよ。…それに、そんな目で見られていたら食べれませんよ」
「す、すまない。…では、いただこう」
いや、そんなに堅苦しく言わなくても…。
苦笑する俺と、俺のあげたポッキーに目を輝かせながら頬張る先輩。
しっかしこの先輩、どっかで見た気が…。
「すまなかった。今日は何も甘い物を食べていなくてな…、俺は星座科二年の宮地龍之介だ」
「俺は天文科一年の夜久那月です」
「夜久…? ということは…」
「あ、姉さんのお知り合いですか?」
「む。あ、ああ。実は弓道部の副部長をしていてな」
ああ、それでか。
どっかで見たことがあったと思ったんだよなあ。
姉さんの部活仲間の人だったのか。確かに試合(姉さんに無理矢理連れていかれた)で見た覚えも…。
「あ、姉さんと呼び方が被る場合は那月って呼んで下さい」
「そうか」
「はい」
あ、ポッキー2本目いります?
む、いただこう。
あ、眉間のシワが緩くなった。
(甘い物好きなんですか?)
(だ、だだ断じてそんなことは…!!)
(……好きなんですね)
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