「僕はルルーシュが好きなんだ」




そう告げると、ルルーシュは優しく眼を細めて僕の大好きな綺麗な顔で微笑んでくれた。


あぁ、ルルーシュは今日も綺麗だ。










◇at cross-purposes◇










僕とルルーシュは幼なじみで、親友だ。
家が近所で、正反対な性格の僕達はそれでも何故か馬が合って、一緒にいる時間は家族を除けば他の誰よりも長い自信がある。
お互いの事は、性格から好きな物嫌いな物交遊関係に至るまで、誰よりも分かっているつもりだ。
それはきっと、僕の独りよがりなんかじゃ無くって、ルルーシュもそう思ってくれてる確信もある。
それだけの時間を一緒に過ごしたと思う。



そんな僕は『親友』であるルルーシュに恋心を抱いていた。
切っ掛けは、正直よく覚えて無い。
でも、多分初めて会った時…4〜5歳のルルーシュに、何て可愛い子なんだ!と思った記憶があるから、もしかしたらそれかもしれない。
ぶっちゃけ僕は面食いだし。




それでも、思春期に入る頃にはこのルルーシュに向ける感情に悩んだりもした。
いくら顔が綺麗でも彼は男だし、僕だってもちろん男だ。
顔の綺麗さに脳が錯覚してるだけで、勘違いじゃ無いかと死ぬほど悩んだ。
そのせいで、一時期ルルーシュとの距離感を掴みかねていた時もある。
彼女を作ってみたら、この勘違いから脱する事が出来るかもしれない!と、手当たり次第に彼女を作ってみたり、必要以上にルルーシュに冷たく接してみたり。
そんな僕に対して、特に咎めるでも無くいつも通りに接してくれていたルルーシュには、感謝の気持ちしか無い。
今考えると、万が一あの時ルルーシュに見限られていたら、なんてと思うと背筋に冷たいものが走る。




結局、色々考えてルルーシュと距離を置いてみた所でルルーシュに向ける想いが変わる事も無く、逆にルルーシュの優しさに気持ちを再確認するに至って、僕はやっとの事でこの感情を受け入れる事が出来た。



受け入れてしまえば何という事は無い。
ルルーシュを好きになる事は至極当たり前の事で、彼を想う度に温かい気持ちが胸に広がって、幸せな気持ちになれる。



が、



それだけじゃ済まないのが、男というものだ。


好きな気持ちだけでは当然無くて、ルルーシュとキスしたいし抱き締めたいし、まぁつまりは抱きたい。もちろん性的な意味で。




好きだという事を自覚してしまえば、当たり前にルルーシュに欲望を感じてしまって、でも当のルルーシュを抱くなんて無理に決まってる。
散々悩んでやっと受け入れられたこの気持ちを、ルルーシュ本人に伝える勇気は僕には無かった。
僕自身も受け入れるのに時間がかかったっていうのに、ルルーシュに突きつけた時どんな反応をされるのか、それがどうしても怖かった。
ルルーシュに拒絶されて、今の関係が駄目になってしまったら。
ルルーシュのことだから、バッサリ拒否される、なんて事は無いだろうし、きっと誠実に結論を出してくれるとも思うけど、でも、もしかしたら。
そんな事ばかり考えて、僕はそれ以上動けなくなった。
ルルーシュの事は好きだけど、ルルーシュに伝える事は出来ない。それでも、溜まるモノは溜まっていく。



結局、ルルーシュの事を好きだと認めてしまってからも不特定多数の女性達との関係はズルズル続いていた。



多少後ろめたくはあったものの、しょうがないと割り切って。
元々、交遊関係まで把握している僕達だったから、少しは嫉妬してくれないかな?とちょっとだけ期待なんかもしてみたものの、程々にな。と、たまに小言じみた事を言われるだけで見事に期待は裏切られた訳だけど。





そうやって、ルルーシュへの想いを誤魔化しながら過ごしてきた僕に大きなツケが回ってくるなんて、その時は考えもしなかった。





















「告白?」

「あぁ」




高校もルルーシュを追いかけて一緒の所に入って、歪ながらも幸せな学園生活を過ごしていた僕に不穏な単語が告げられた。




「…付き合うの?」

「そうだな」




少し頬を染めながらはにかむように笑うルルーシュは今日も可愛い。
…じゃ、無くて。




「え、なんで?」

「?何がだ?」




僕の言葉に不思議そうに首を傾げて聞いてくるルルーシュは可愛い。可愛い、けど!



学校の帰り道、いつも通り二人で並んで歩いて話をしていたら告げられた言葉。
確かにルルーシュはモテるけど、今まで一度だって誰かと付き合うとか言い出した事なんか無かったのに。
僕もルルーシュは恋愛事に興味が無いタイプなんだと思って、油断してしまっていた。
こんな綺麗な人なんだから、いつかこんな日が来るなんて分かりきってた事なのに。
『いつか』が、こんなに唐突に巡ってくるなんて事を、僕は全く考慮していなかった。

なんて事だ。




「や、…ルルーシュって、そういうのあんまり興味無いと思ってた」




僕が絞り出すようにした言葉に、少し苦笑交じりに返される。




「そうか?」

「だって今まで彼女とか作らなかったでしょ?」

「そうだな」

「どういう心境の変化?」

「そんな大層なものじゃないけどな」




ふっと悪戯っぽく笑うと、




「お前を見てたら、彼女、っていうのも悪くないかなって思ってさ」




まさかの言葉を僕に告げた。




「え…、」

「お前みたいに派手に遊びはしなくても、健全な男女交際って奴は学生生活に不可欠だろ?」




お前もあんまり不健全な付き合いは控え目にな、なんて言葉を続けているけど、僕は正直それどころじゃない。




「ッ、ルルーシュ!」

「なんだよ」




急に大声を出した僕に、驚いた顔をする。
そんな顔も凄く可愛い。
ルルーシュの色んな表情を一番知っているのは僕なのに、僕よりルルーシュの事を知られてしまうんだろうか。
僕より近くで、ルルーシュを、










「僕はルルーシュが好きなんだ」