「それでは、候補生試験合格おめでとうございまーす!」

涼しげな浴衣に通された両腕を広げてメフィストは高々と言った。BGMは鉄板で焼かれるもんじゃの音。最初はもんじゃに不満を漏らす者もいたが、やはり食べ盛り。いざ鉄板の上のもんじゃ焼きを目にすると目を輝かせている。

「私の奢りですので、どんどん食べてください☆」
「流石セレブ!よっしゃあ食いまくるぞおお!」

一番はりきって鉄板を見つめる燐に苦笑いをする名前。確かに試験では彼は単独で頑張っていたし普段の生活費が少ない為に今日は腹一杯収めるつもりなのだろう。

「理事長、僕まで良かったのですか?」
「ええ、勿論!それに、半ば引っ張られながら誘われたのですから、皆さんは名前先生に来て欲しかったのだと思いますよ」
「それは……嬉しいです…」

照れくさそうに笑う名前。
直視したメフィストは顔を赤らめた。

「名前せんせー!焼き上がりましたよー!早よ食べましょー」
「あ、ありがとう。志摩君」
「いーえ!抜け駆けなんてさせまへんわ」
「?」

頭の上にハテナを浮かべながら首を傾げる名前をよそにメフィストと志摩は笑いながら密かに睨み合う。

「ほら!焼きあがったぜ!」
「あっ!俺の方が早よ焼いたわ!ずっこいぞ!」

そんな中燐と勝呂が口喧嘩をしながらも名前の隣へと移動する。差し出された燐のもんじゃ焼きを口にした途端に名前は笑顔になった。

「美味しい!流石奥村君!雪男君から料理がプロ並みって聞いてたから、奥村君の料理食べてみたかったんだ」
「!な、なら毎日でも弁当作ってくるし!」
「ちょっとアンタ!さっきからうるさいのよ!静かにしてくれない?」

燐の申し出を遮るように出雲は声を上げる。隣ではしえみが、その前で子猫丸が苦笑いしていた。

「だいたい、先生にくっつきすぎ!」
「か、神木さん…」
「くっ、くっついてねえよ!」

出雲に指摘された燐は赤面しながら反論する。しえみの宥める声など聞かずに口論を始め、そんな二人に挟まれている名前は呑気に笑いながらその光景を眺めている。

「そういうお前だってこっちにケチ付けるってことは、先生に近寄れなくてヤキモチ妬いてるからじゃねえの!?」
「なっ…!ち、違うわよ!女みたいにデレデレしてるアンタ達が目障りなのよ!」
「んだとぉ!?」
「はいはい二人とも、その辺にしとこうね。せっかくの合格祝いなのに喧嘩したら駄目ですよー」

燐と出雲の頭に手を乗せて喧嘩を止める名前。二人は恥ずかしそうに小さく謝った。

「手懐けられとるやんけ…」

勝呂が小さく呟いた。


「名前先生!」
「わっ、理事長?」
「此処にいたらみんながみんな先生を狙っていて私の邪魔ばかりします!別のお店に行きましょう!」
「えっ?」

耐えかねたメフィストは名前の腕に抱きつく。それを見た生徒達は一斉に不満の声を上げるがメフィストは聞かずに更に抱きついてしまう。

「メフィスト!お前先生から離れろよ!」
「嫌ですよ☆」
「あー…どうしてこんな事に…?」

名前を巡る口論の中、張本人は訳も分からず首を傾げるしかない。そんな名前に、しえみと子猫丸がフォローするように言った。

「みんな名前先生が好きなんですよ!」
「そうですよ先生!やから皆さん必死なんですよ」
「そうなのかな?嬉しいけど、みんなが喧嘩するのは嫌だな」
「ほっとけばそのうち収まりますんで、名前先生は避難しとって下さい」

子猫丸の言うとおりにしようと、名前は未だに言い争いをしているメフィストの腕を掴んで立ち上がった。

「…名前先生?」
「我々大人は抜けましょうか。子供達だけの方が楽しいでしょうし」
「…そうですね☆」

一瞬で機嫌を良くしたメフィストと抗議の声を上げる生徒達。それは名前にいなくなってほしくないからなのだが、それに気づかない名前はメフィストを連れてさっさと出て行ってしまった。


「何だか騒がしくなってしまいましたね」
「そうですねぇ。さて、何処へ行きましょうか?」
「んー…あ、お酒やおつまみでも買って、僕の家に来ます?」
「……へ?」

名前は軽い気持ちで提案したのだが、メフィストは好きな人からの思いがけない誘いに顔を赤くしてしまった。

「男の一人暮らしなので、あまり綺麗な部屋ではないのですが……あ、やっぱり嫌ですか?」
「いいいいえ!め、滅相もない!是非行かせて下さい!」

嬉々としてメフィストは再び名前の腕に抱きついて歩き出す。そんなメフィストに名前も柔らかく微笑んだ。




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ひいい総愛され難しい/(^o^)\
さおり様すみません!

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