episode1-1

インディゴの空に、まん丸に満ちた真白な月が浮かぶ。
私は仕事のため今朝から隣町まで出かけていた。
昔ほどではないとはいえ、夜は人攫いが出没し安全とは言えない。
暗くなる前には帰ってこいと言われていたものの、雇われているこの身の上。
門限だからと簡単に帰ってくるわけにはいかない。

この国は海が東、森が西にある自然に恵まれた比較的小さな国だ。
王様の住んでいるお城を中心に円を描くように作られたこの城下町は、ちょうど国の真ん中に位置している。
城の西側をでて10分ほど歩いた所に盗賊や人攫いが多く住処にしているらしい深い森がある。
そのためか、王様が直接統治している街とはいえ、暗くなると昔から人攫い等の悪い人たちが街にちらほらと出てくるのだ。

しかし今日は満月のため、いつもよりもいささか明るい。
私の住む孤児院の屋根が月明かりに照らされ、うっすらと浮かび上がってきたその時だった。
私の足音に合わせていくつかの足音が静かに聞こえる。
この街でこんな時間に外へ出る人などそうそういない。
私は歩みを速めた。
それでもその足音たちは私にぴったりとくっついてくる。 走って逃げようと考えたその時、前方に人影が現れた。
髭面の男が2人。身なりからして街の者ではない。
盗賊か人攫いといったところだろう。
振り返って逃げようとするも、仲間と思われる別の男が立ちはだかっていた。
「大人しくしてりゃあ痛くしねえよ。」
上玉だから高く売れるぞ、なんて話をしながら男は後ずさる私の手を掴んだ。
本当の親の顔も知らないような身の上だが、それなりに幸せな人生だった。
今年に入って働き口がみつかり、ようやく孤児院に恩返しが出来ると思っていたのに。
そんなことを考えた時だった。
突然私の横を何かが掠めた。
瞬間私の手を掴んでいた男が吹き飛び、かわりに私の横にはとてもとても背の高い、珍しい異国の狐面を被った人が立っていた。

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