【一枚の上着と一人の子供】
「最近寒いね」
奴は、どうも寒がりらしい。
「そうだな、毛布だるま」
彼がそうと言わずとも、その毛布をぐるぐる体に巻き付けている見てくれから簡単に想像できる。
「兵部クンも、いる?」
「いや、汚れるからいい」
術後すぐの僕の体は未だ血塗れだ。ちゃんと縫ったりガーゼやコットンを貼って処置はしてあるが、そんなすぐに血は止まったりはしない。
後、別に僕はそこまで寒がりではない。
「ふうん……えいっ」
そんなことお構いなしに、この坊やは毛布ごと抱きついてきた。
いや、抱きつくと言うには語弊があるか。ベッドに腰掛けていた僕の背中に、毛布を広げた状態で多い被さってきたのだった。
「……これではお前の服まで汚れるぞ」
と言うか、むしろもう汚れているだろう。白に赤はよく目立つ。
「いいよ、別に」
代わりは幾らでもあるから。坊やはそう、ポツリと呟いた。
「そうか」
そんな彼が、少々いじらしく思えたので。僕は体の向きを変えて、その骨の感触が目立つ体をゆるく抱きしめる。
「うん」
彼は僕の行動に対して何も言わず、ただ素直に返事だけを返した。
「お前は、あったかいな」
「そうかい?」
まあ、そんな訳だから。坊や、頼むからそんな顔をするな。お前の変わりなんて、服なんかと違ってこの世界には人っ子一人も居やしないんだ。
「そうさ」
「へえ」
だから今くらい、安心して抱かれてろ。
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