【十分構ってる】
「ねえ、兵部京介」
「なんだよ」
手術台兼ベッドを転がりながら暇そうな坊ちゃんに返答する。今日もいい天気だ。温かい日光が少し目に眩しい。
「構いなよ」
「誰が」
「兵部京介」
まあ、この部屋に窓は無いのだけれど。ただの願望だ。
「誰を」
「僕を」
ため息をつく。こいつは胸糞悪い実験をしている時以外は、いつもこの部屋に来る。監視の為でもあるのだろうが、奴にも色々事情があるのだろう。どうでもいいが。
まあ、追い返そうとは思わない。どうせ今のところ逃げられないし、僕も暇だし。
「どうして」
「なんとなくさ」
早くここから出たい。脱出する機会を常時伺ってはいるがこの坊やめ、中々隙がない。困ったものだ。
「……顔に唾吐く事は無いと思うのだけど」
「うるさい」
「ケチ」
変な所で油断はあるのに。
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