【あの部屋で二人。】


「ねえ、京介」
「ん?」

 割れた窓ガラスとあの人の死骸。ようやく見慣れてきた銀色の頭。

「なんで私を助けたの?」

 揺れる銀糸を見つめながら、問う。私は貴方と違ってただの普通人だったのに。貴方を裏切ったあの人と同じ、普通人だったのに。問いつつ、思い出す。ぷかぷか横で浮かぶそれは、数日前までは艶のある黒色をしていた。

「うーん、なんとなく」

 返事は予想通り適当。気まぐれ。この人は、あの時から何もかもが随分と雑になってきた。

「そっか」

 まあ、いい。そんな彼でなければ、私はあのまま死んでいた。





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