【若いの三人。】


「誰だ、お前」

 あら、今日の子達は少し若いわねえ。

「なまえだよ、僕のお嫁さん。仲良くしてね」
「お嫁……!? 少佐にお嫁さんなんて居たの!?」
「オヨメ、しゃあん……?」

 男の子二人、女の子一人。赤毛の子は随分と幼いわね。まだ二歳くらいかしら。

「そうよ、初めましてなまえです」
「少佐の奥さんって、能力は何なんだ?」

 こんな歳でお父様お母様を亡くしてしまうなんて、不憫な子だわ。きっと、顔すら覚えていられない。

「なまえは普通人だよ」
「えっ!? 普通人!?」

 女の子は、先ほどから驚いてばかりだわ。表情がくるくる変わって可愛らしい。まあ、そうよね。びっくりするわよね。

「普通人……!」
「ンンゥ……」

 初めに声を上げた子、黒髪の癖毛が愛らしい少年は、私を酷く睨んできた。腕の中で飴を舐める子がぐずり出す。あらダメね、きっとすぐ泣いちゃうわ。

「そうよ、私は普通人よ」
「なんで普通人なんかがッ、わあ!?」
「びぇえええええ!!!!」

 ほらやっぱり泣いちゃった。大きな声出しちゃうから。そりゃそうよね。

「あらあら」
「わー! わー!」

 そして壁にヒビが入りだす。これはこの子の能力なのかしら。水色の子が慌てて何かを探しているけれど、中々見つからないみたい。おしゃぶりか何かかしら。

「なまえ! なまえ止めて!」

 京介は何の役にも立たずにおろおろしているばかり。しょうがない人ね、もう。

「はいはい、ほら、ちょっと貸してね」
「何をッ……あ……」
「ンアー……」

 さっさと彼の腕から赤子を奪い取る。すると案外早く収まった。やっぱりこういうのは女の腕が一番ね。おおよしよし、怖かったでちゅね。

「司郎」
「…………」
「なまえはね、普通人だけど大丈夫だよ」
「…………」

 そんな私達をそっちのけで京介とあの子……司郎くん、かしら? の会話は進む。

「僕の、大切な人なんだ」
「…………」

 あ、女の子がやっと何か出せたみたい。あめ玉。なるほどね。確かにおしゃぶりにはちょうどいいかしらね。

「仲良くしてくれると、嬉しいな」
「……わかった」

 女の子、紅葉ちゃんと言うみたい。笑って飴を出してくれて、ああ、この家も随分と賑やかになったと思った。





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