【監獄に二人。】


「なまえはさ」
「なあに」
「いつも白い服を着ているね」

 今更だと思った。

「ええ、随分と前からそうしていますけれど」
「そうだったね」

 和服、洋服、寝間着晴れ着。形を変えど私の身につくはいつもこの白。貴方の傍で死ぬための衣装だとは、勿論言ってやしないけれども。

「それが?」
「綺麗でいいと思ってね」
「そう」

 久しぶりに褒められた気がする。というのも、彼に会うのが少し久しぶりだったから。

「……ここは、住みにくいね」
「そうね」

 鳥が羽ばたく為にはいささか狭すぎるこの部屋。エスパー収容所。監獄。彼を捕らえるためだけの施設。彼にはあまり意味を為さないけれど、それでも毎日会うというわけにはいかなかった。

「まあいいや、そろそろ行こうか」
「ええ」

 それでも二日に一回は会っているけれども。それでも私達にとっては長すぎる時の刻。

「今日は外国の紛争地域に行こうと思うんだ」
「そう、いいわねえ」

 あの時から早30年。私達に残された刻限はもう駆け足。





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