【貴方の腕の中は血のにほい。】
「ねえ、ねね」
「どうしたの」
珍しく一人で出かけて、一人で帰ってきた彼の様子は少しおかしかった。
「あのね、皆死んだんだ」
帰ってきてすぐ、私をぎゅ、と抱きしめた。まず、彼の好んで着ている学生服が血まみれになっている時点でおかしいのだけれども。
「んん?」
「僕らを直接手にかけた奴は、皆死んだよ」
「ああ、なるほど」
そうか、彼は人を殺してきたのか。
「ふふ、嬉しいな」
「そうね」
でも、きっと不二子さんは悲しむわ。だって彼らは彼女の組織の仲間だもの。確か、名前はバベルだったかしら。
「ねえ、そう思うよね、ねね、ふふふ」
「うん、うん、先ずはお風呂入ってきてね」
この人の居場所、遂にここ以外無くなってしまったのね。
「あ、ごめん、血が付いた」
「いいわよ、洗うから」
ならば私が最後の砦だ。彼の城の最初で、後に最後になる住人。私はそんな人間として生きていこう。
「でも、白のワンピース」
「いいのよ、また買うから」
「そう、ごめんね」
そう私はあの時この死装束に誓ったのだから。
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