第一部 [32/32]


話は一角の呟きに戻る。


「馬鹿かよ…」
床に伸びるかんろの頬を軽く叩いてみるが、特に反応はない。

稽古場で伸びることは今に始まったことではないので、とりあえずかんろをほっておくことにした。
まだやり足りないと感じる一角は、修兵に声をかけたが丁寧に断られてしまった。



「一角さん!俺やります!!」
持っている木刀で自分の肩を叩きながらどうするか考えている一角に声をかけたのは、いつの間にか稽古場に来ていた恋次だった。

つい先程から、一角とかんろの様子を修兵と二人で座りながら見ていたのだが、見ているとやりたくなるのが十一番隊というところか。
修兵が一角の誘いを断るとすぐにバッと勢いよく立ち上がり、やりたいという意思を示すかのように両の手を上にあげてブンブン振っている。

「おめえは午後までやらねえからな」
こちらを見ずに言い放たれた言葉に、えぇ!!、と大きな声を出してがっかりする恋次。
「なんでっすか!俺もう腑抜けじゃないですよ!やる気満々っす!!」
「うるせぇ!お前とは昼飯食うまでやらねえんだよ!」


わーわーと言い合いをしている一角と恋次を横目に、修兵はかんろのところに近寄った。
「大丈夫か?」

一角の木刀がかんろの腹や脳天に当たったことも思い出しながら、修兵は恐る恐るといった感じでかんろに声をかける。
優しくその肩を揺すれば、もぞっ、と小さく反応してかんろは目を開けた。

『…大丈夫ですよ。背中が、少し痛いだけですから』
仰向けの体を気だるそうに動かして、うつぶせに肘をつくような体制になる。
そうしてふるふると頭を振る様子に修兵は苦笑いを浮かべた。
「頭を打ったみたいだが、意識ははっきりしてるみたいだな。あと少しで昼だが起きれるか?」

すっと伸ばされた手をつかもうと自分も手を伸ばしたかんろだが、その手は触れる前にふっと体が浮かんだ。
いや、正しくは後ろから持ち上げられた。



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