第一部 [1/19]


――ピピピ

たくさんの画面で埋め尽くされている静かな部屋に着信音が鳴り響く。
パソコンの画面を目の前にしながら、いつの間にか机に突っ伏して寝ていた彼は、その音で目が覚めた。
「…ん、誰だ?」

時刻は深夜3時を少し過ぎた頃。
季節が春へと変わりそうなこの時期は、太陽の昇りが少しずつ早くなってきている。現に今も、部屋の窓から太陽の光がわずかに伸びてきていた。


ここは、幻影旅団結成時からのメンバーで情報処理を担い、参謀的な存在であるシャルナークが個人で借りている部屋。
部屋の持ち主の彼は、机の上に置いていたオリジナルの携帯の画面を見ると眉間に少しのしわを見せた。彼が見つめる画面が映すメール受信画面。その差出人はクロロ=ルシルフル。幻影旅団を創設し、その団長を務めているクロロが送ってきたメールの内容は、淡々としたものだった。

“仕事だ。区切りがついたらホームへ来い”

(区切りがついたらって…早く終わらせろってことだろ)
小さなため息をついてシャルナークは席を立った。パソコンの画面に映る資料はクロロから頼まれているものだ。あと数時間で終われそうなこのタイミングで連絡してくるなんてどこかに監視カメラでもあるのだろうか。
最近人使いが荒いなと頭の中で愚痴りながら部屋を出ると、彼は支度を始めた。別に今していたことは重要じゃないし、頼んできたクロロ本人ががこんな呼び出しをするという事は今やっていることよりも面白いことだろう。最小限必要なものを持ったシャルナークはホームへと向かった。



**********



どこかの廃ビル。現在そこは幻影旅団のアジトとなっている。薄暗い一室にろうそくを灯し、クロロ=ルシルフルは書物を読み耽っていた。先ほどシャルを呼び出したのは興味深い噂を聞いたからだ。


人体実験施設からとある生物が脱走した。
マフィアが自分たちの力を増やすために実験を行い、ハイブリッド生物――いわゆる合成生物を作った。人間を用いての実験はなかなか成功しなかったが、ついに実験が成功したそうだ。
しかし、自分たちの手に負えなかったそのハイブリッド生物は、実験施設から逃げ出した。
現在マフィア達が血眼で捜しているがなぜか見つからない。人間での初めての成功だったため、その寿命や潜在能力が未知数だからもう死んでいるのではないか。そんな声も出ているそうだ。


(おそらくまだ死んでいない)
クロロの勘はそう言っている。マチのように頼りになるかは分からないが、手に入れて実物を見てみたいという気持ちが強く、シャルに調べさせようと考えていた。



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