初めての沖縄

那覇空港の扉を開け、一歩外へ足を踏み出して僕が感じたこと。
暖かな空気と海の匂い、今にも手が届きそうな低い雲と大きな青い空。
僕は、本当に沖縄に来たんだと心底実感した
僕がそんな想いに浸っていると、友達の柚紀杏伍が半ばふざけたように「沖縄だぁ〜」を連発し、辺りをキョロキョロ見渡している。
よほど沖縄へ来れたことが嬉しいのであろう。
なぜなら、僕も杏伍も初めての沖縄だった。
僕の横ではしゃぐ杏伍を見ているうちに、飛行機疲れの僕の顔にも少し笑顔が戻ってきた。

柚紀杏伍とは高校時代からの親友で、親友という言葉だけでは物足りないぐらいで、家族であり、兄弟のような関係だった。
本当の家族に言えないことも杏伍には言えたし、それは杏伍も同じだったと思う。

今回、なぜ沖縄を旅先に選んだかというと、理由は二つある。
僕が沖縄に興味を持ったのはDA PUMPファンであった為、沖縄の情報を見たり聞いたりすることが多かったからだ。
それに加え当時、沖縄出身のアーティストが芸能界で活躍し、テレビで沖縄を紹介する番組が多数放送されたりと、空前の沖縄ブーム時期であったこともある。
もう一つの理由は、2001年の春、僕はプロの作詞家になる為に当時勤めていた会社を退職することになった。
退職後、お疲れさまと新たな旅立ちの区切りとして、興味のあった沖縄へ旅行することになったのだ。


空港から出て来て、沖縄を感じたまでは良かったのだが、これからどのようにして街まで行けば良いのか解らない。
当時、まだモノレールが開通していなくて、沖縄でのバスの乗り方もイマイチよく解らない。
僕たちは徒歩で街まで行くことにした。

歩きはじめてすぐの所で、一台のタクシーが僕たちの横に急に止まった。
運転手さんが窓から顔を出して「どこまで行くの?乗ってかない?」と声をかけてきた。
もう歩いて行く決心をした後だったのもあって乗車を断ったが、タクシーの運転手もかなりしつこい。
乗る乗らないの押し問答の末、運転手のあまりのしつこさに負けてしまい、僕たちは渋々、タクシーに乗ってホテルまで行くことにした。

乗車してからしばらくすると、運転手が「ガイドブックに載っていない良い所へ連れてってあげる」と言いだした。
僕は、乗り慣れない飛行機で疲れていたから、とりあえずはホテルで一休みしたかった。
それに予定していなかった場所へ連れていかれるのに抵抗があった。
だから断ったものの、今度は行く行かないで押し問答となってしまった。
僕は頑なに拒否をし続けた結果、運転手も諦めたようで、行かずに済んだ。
よく考えてみたら、僕が沖縄の人と会話をしたのは、この運転手が初めてであり、その初めてがこの有様だったので、滞在期間中、僕たちがタクシー恐怖症になったのは言うまでもない。

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