※血表現あり





漫画の主人公は正義感があり熱血である、と我が主人公であるxxxはそう思っているし、そう思っていた。主人公は"正義"なのだと。漫画ばかりではない小説でもそうだと思っていた。だがしかし正義感がある主人公や熱血な主人公ばかりがいるわけでは勿論ないし主人公が皆"正義"ではないのだ。これはxxxの勝手なイメージであり、主人公が皆そうではない。ただのイメージだ。xxxの勝手なイメージ。xxxは漫画という漫画も読んだこともないし(技を盗む為に見たことがある程度)、小説などもあまり読まない。暇つぶしに医療関係の巻物を読む程度だ。だからなのか自分のことを主人公とすら思ってはいなかった。ただのモブだとあまり重要ではない立場にいるのだとxxxはそう考え、思っていた。自分は"悪"であり"正義"ではないのだと。"正義の味方"ではないのだと

『……はぁ』

彼女は根っからの"悪"じゃないにしても、"正義"には程遠い。決して近くはないのだ。もし仮に彼女が"正義"だったとするなら、…彼女の顔や服に"返り血"など浴びていないだろう。彼女の足元にゴロゴロと転がっている死体。"人ではない死体"が転がっていた

『今のは…妖怪なんでしょうね、きっと』

急に何の前触れもなく、いや前触れはあったのだが、xxx自身なぜ襲われたのかが分からなかった。妖怪に恨まれるような事はしていない…というか妖怪に会ったのは今回が初めてだったのだから恨まれるような事は勿論していない。本当に襲われる理由など身に覚えがなかった。だからxxxは首を傾げたまま考えていた。襲われた理由を

『…別にいいか』

知ったところで彼らは死んでしまっているのだから意味などないし、理由を知ったからといって、さして興味などなかった。だからxxxは考えるのを止めた。彼女が本気で理由を知りたいと思っていたのなら、すぐに理由くらいは分かっただろう。ただ単に彼らは"人間を食う為に襲った"のだと

xxxはふと、しまったと思った。妖怪の"血"であたり一面真っ赤に染まっている、やり過ぎたと思った。真夜中という時間帯だから人気のなど全くないのだが、それでも人が来ないとは限らない。こんな殺害現場を見られる可能性がある。彼女は人の気配を感じてすぐ逃げられるが、殺害現場は動かせない。xxxは見られなくとも殺害現場は目撃されてしまう。目撃され警察にでも通報でもされたら、とxxxは考えた…が彼女は彼女らしく終わらせた。"まぁ、いいや"で終わらせた。簡単に呆気なく終わらせた

だがここで、xxxが恐れていた事態になってしまった。xxxは気づいたのだが、面倒だったという理由でその場から逃げようという"努力"をしなかった。いや彼女は"努力"すら出来ないのだけれど。その場から移動するというのは簡単に諦め、恐れていた事態と向き合った。それすらも面倒だったらしいが、面倒なら逃げれば良かったのだが

「てめぇ…一体何者だ」
『……』

何者と聞かれてすぐ答えられる人間なんて一体何人くらいいるのかな、と思ったxxxである。まぁ、こんな現場を見れば誰だってxxxを怪しく思うだろうし危険視もするだろう。だからそんな質問をしたのだろうと予測は出来る

「聞こえねぇのか?」

月を背にした男はなんとも絵になる図だった。そんな男はxxxに問う。が、彼女は無表情のまま男をじろりと見たまま何も答えようとしない…と思われたが

『あなたも"妖怪"?』
「……何故分かった」

『ただの感です』

本当にただの"感"だったのだが、妖怪は否、奴良リクオはそう思ってはいないらしい

「…聞く必要なんざねぇんだろうけどよ。念のため聞かせてもらうが」

"これはお前の仕業か?"

これ、とは殺害の事だろう

『ええ、そうですよ』

誰がどう見ても犯人は彼女だと分かるだろう。なんせ彼女は"真っ赤に染まって"いるのだから。頭から足まで真っ赤に

『急に襲われたものですから、つい』

いつもはにこにこと笑っている彼女なのだが、珍しくずっと無表情だ。彼女らしくない、といえばらしくない

『あ、もしかしてお仲間でしたか?』
「いや違う」

さっき彼女が言っていた"感"で判断した。判断しようにも判断が出来なかったのだ。なんせ死体はものの見事にバラバラだ。だから顔すら分からないし一体何人いたのかさえ分からない状態だった。仲間ではない事をリクオは願う

残酷で
残忍で
無残で
惨く
酷かった

そんな殺害現場だった

『心当たりなんてないですよ』

急にそんな事を言い出した。リクオは何言ってんだぐらいにしか思わなかったらしく、深く気にすることはなかった

「急に襲われたと言っていたが……」

そこで気づく

「(思考を先読みされた、とでも言うのか…?)」

xxxは先に返答したのだと気づいた

『……』

ずっと食い入るようリクオを見ていたが、突然視線を外した。リクオは不思議に思って彼女が見ている方向を見たが、そこには何もなかった。そんな何もない場所を未だ見ている彼女をリクオは見る。一体そこに何があるのだと

『そろそろ僕は帰りますネ』
「は?」
『だから帰るんですってば』
「……」
『眠いし』

どうやら最後の言葉が本音らしい。リクオは呆れた。ぽかーんと口を開けたまま。そんなリクオを気にすることなくxxxは両足に力を込め

地面を蹴った。蹴り、高く高く飛んだ

「…一体何だったんだ」

もしかしたら自分は夢でも見ていたのかもしれない。というか夢であってほしいくらいだ。もしこれが夢だったら悪夢なんだろうが、それでも現実よりかはいくらかマシである

「俺も帰るか」

帰ったらあの訳の分からない女を調べてもらおう。いや、帰る前にこの殺害現場をなんとかしなければ。このままだと色々とマズイ





あとがき
敵側?っぽくしてみたつもりなんですが、暴れてないぞおいって感じで終わっちゃいましたが、あまり暴れさせない方がいいかと思いこんな感じになってしまいました。リクエストありがとうございました&長らくお待たせして申し訳ございません








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