あたり一面、砂ばかり。太陽が容赦なく降り注ぐ砂漠。夜兎の僕にはとてつもなく最悪な場所、砂の里。番傘と黒のコートが無かったらきっと死んでるんでしょうネ。砂の里に入るのはとても簡単だった。風影をさらわれたあとなのに、意外ですネ。もっと厳重だと思っていたのに
僕にとって、夜兎にとって、最悪な場所に砂の里に何故来か
「……お前は」
風影さんが死んだのに生き返ったと聞いたから。ちょっと興味本心で来てみただけ。風影の部屋に彼はいた。まぁ、風影なのだからそこにいるのは当たり前なんですけどネ。そんな彼は驚いた顔をして僕を見てくる
『お久しぶりですネ』
「……何故ここにいる」
彼はどうやら警戒しているみたい。まぁ、無理もありませんか。だって僕は抜け忍なんだもん
『安心してください。別に僕はあなたをさらいにきたという事はありませんから…そこのところ誤解なきよう』
「…そうか」
ん?
『信じるんですか』
小さく呟いたのにどうやら彼には聞こえていたらしい
「何か言ったか?」
『いえ、何でもありません』
さらわれたばかりなのに、こんな抜け忍の言うことを信じるなんて。変わった人。そんな事を密かに思っていれば、風影は椅子に座れと言ってきたから座った。座れば、向かいに風影が座った
「どうして木ノ葉を抜けた」
『さぁ、どうしてでしょうネ』
理由なんて教えません。教える必要がないもの
「…変わっていないな」
『ふふっ…よく言われます。そういう我愛羅さんは大分変わりましたネ』
貼り付けた笑みを風影に向けると、風影はピクリと眉を動かした
「……我愛羅でいい」
『あ、はい』
・・・
『じゃあ、僕はこの辺で…』
軽く話をした僕と我愛羅。仕事とかかなり大変らしいです。まぁ、それもそうかと納得した
「…この事は木ノ葉に知らせるぞ」
『ええ、構いませんヨ』
木ノ葉に知られても何の問題もありませんから、問題があったとしても消してしまえば全て済む話ですから。と、付け加えた
「……じゃあな」
ぐいっと腕を掴まれ、引き寄せられる。あの時と同じ。僕は抵抗はしなかった。何故かは自分でも分からないけれど。べろり、また舐められた。獣かあんたは。離れる瞬間に我愛羅は一瞬だけ、目を伏せていた。だが、僕は気付かないフリをして
『さようなら』
窓から飛び降りた。誰にも見つからないように、砂の里から出ました。番傘を差して、フードを被ってから出ました。ホント警備が甘いのネ。楽勝だわ。やるならもっとちゃんと警備すればいいのに
『……』
走る。早くこの砂の里から抜けるため。さぁ、こんな夜兎がいるべきではない場所から抜け出しましょう