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AMNESIA(ケント)


ケント×主人公です。
GOOD後で嫉妬甘な短めのお話。





触れたい、という感情が一気に暴走してしましそうだった。触れて、彼女の存在を確かめないと自分がどうにかなってしまうんじゃないか、そう思ったのだ。
「ケント、さん?」と少し戸惑いを含んだ声が私の名前を呼ぶ。それだけのことで、何故かひどく心が安らいだ。


「…どうか、したんですか…?」

「いや、なんでもないのだが…ただ、」

「…ただ…?」

「擦れ違った少年が君を見て"可愛い"と言っていた」

「かわいい、ですか…?」

「そうだ。
それを聞いて、…私は…不安になってしまったのかもしれない」


彼女は彼氏である自分の贔屓目を除いても十分に可愛いと言えるだろう。イッキュウもそう言っていたし、街を歩けば彼女を見て振り返る男も少なくない。
だからだろう、…彼女がいつも遠くに感じてしまうときがあるのだ。私の言葉と行動に瞳を数回瞬かせてキョトンと見上げられて少し気恥ずかしくなった。思わず視線を逸らすと、クスリ、と小さく笑う彼女の声に瞬間的に視線を戻せば。
擽ったそうに、けれど何処か嬉しそうに柔らかな笑みを零す彼女が、ぎゅうっと私に細い身体を預けた。


「ケントさん、」

「…なんだ?」

「安心してください、わたしが好きなのは一緒にいたいのは、…ケントさんだけですから」

「…っ、…そう、か」

「はい、だからケントさんも…わたしだけを見て、好きでいてくださいね」


熱烈ともいえる告白に、今度こそ恥ずかしさで身体が一気に火照っていくのがわかった。そしてそれ以上に彼女への想いがより一層深く愛おしくなっていくのを実感して。人の目など気にはしていられず本能のまま、今は彼女の温もりを感じていたかった。


2012/01/19 18:28
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