理髪店に行った際、少しうたた寝をしている間に髪を切られ過ぎた。

(毛先をちょっと切るくらいでいいって言ったのに……)

自宅に戻り、自らの姿を鏡に映したカカシは眉をハの字にする。

子供の頃からほぼ変わらなかったヘアースタイルを大幅に変えられてちょっと……いや、かなり恥ずかしい。
根元から毛先までおよそ五センチもないんじゃないか。
額まで綺麗に出ている。

鏡に向かって何回か自分の髪を撫で付けてみたものの、状況は少しも改善されない。
当たり前だ。
仕方ないか、と溜め息をついて匙を投げた。

髪なんて放っておけば、その内また伸びる。





翌日、カカシは集合時間に遅刻した。
改まって言うほどのことでもない。いつものことだ。

しかし、前を走っているのはナルトではないか。
カカシは眼を凝らしたが、オレンジのジャージはそうそう見間違えようもない。
珍しくナルトも遅れたようだ。

走っているナルトの後ろから歩いていくのもなんなので、カカシは瞬身でナルトの隣に並んだ。

「よ、珍しいね。お前も遅刻?」

「……?はぁ、ども」

「……」

(?)

一言言ったナルトは、それどころじゃないといった様子でそのまま駆けて行った。

(何、今の反応)

新たな悪戯、もしくは上司をハブにする方法でも思い付いたのだろうか。

(傷付くなーもう)

後ろ姿を見送ったが、カカシを一度も振り返りもせずすごい勢いだった。
ナルトの冷たさに少しやる気をなくしたカカシは、急ぐことをやめ、のらりくらりと向かい、集合場所についた。


木の枝に乗って下を見ると、カカシを置いていったナルトと、先に着いていたサクラやサイが塀に凭れて喋っていた。

またカカシ先生遅刻かよ、とか、本当有り得ないわ、などとカカシへの不満を口々に口にしている。

ナルトに関しては先程カカシと会ったのに、一体どういうことなのか。

(声かけづらいな……)

暫く様子を見守っていたが、ナルト達はカカシを待っているわけなのだからこうしていても埒があかない。

「……よ!」

今来ました!というテンションでカカシが三人の後ろ、木の上から声をかけると

「おっせーってばよ!カカシ先生!!」

と目尻がつり上がったナルトやサクラの目が一斉に向けられた。
しかし、一瞬して驚愕したようにサイも含めた三人の目が見開かれる。

「……、え?」

「……ん?」

「ど……どちら様……」

口元をひきつらせたサクラに言われ、「は?」と眉を寄せると、口の端を歪ませたナルトが

「……ぶふっ」

と吹き出した。

「ブァハハハハハ!!カッカカシ先生!?どうしたんだってばよその髪!」

「えっ?カカシ先生!?ビックリした!道理で似た人だと思ったのよ!」

「……どういうことよ、お前ら」








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