こちらの「視線」は同じくお題にある「後ろ姿」の続編です。 視線 視線は、いつからか感じるようになった。 大抵、俺がそちらを見ていない時ばかり。 そして、俺がそちらを見ると逸らされる。 何でかなんて考えていなかった。 元々自由で騒がしくて悪戯好きなやつだから、また何か企んでいるのか、と、そんな風にしか。 ……すまない、ナルト。 俺は、お前にそれ以上の感情を持ってなかった。 あの日、珍しくサクラやサイと別れてナルトと二人きりになって。 ナルトは俺の後ろを歩き、何故か隣には並ばなかった。 でも、背中にはいつもと同じように視線を感じた。 何か言いたいことがあるのだろうかと遠回しに話を振ってみても、ナルトはそれには乗らず、変わらず後ろを歩いて、やはり変わった子だと思った。 別れる時にやっと顔を上げて俺を見て、笑って。 やっぱりこいつには笑顔が良く似合うと思い、嬉しかった。 何気なく以前と同じようにその髪に触れ、掻き乱すと、ナルトは俺を見つめて何か言いたそうな顔をした。 何だろうと俺は思った。 俺を見つめるその瞳は揺れて、頬は赤らめられて、泣きそうに。 けれどナルトは俯き、結局 「何でもねぇ」と笑って口を閉ざした。 ……なんで、そんな顔を。 あの時、分かったんだ。 そういうことなのだと。 何て言ってやればいいのか俺は分からなかった。 だから、「大事な部下だ」と、それだけを言った。 ナルトは、それに顔を上げて笑った。 目尻には涙が浮かんでいたが、 「知ってる」と。 ……ナルト、すまない。 けれど、言葉に偽りはない。 お前は本当に俺にとって大事な部下で、教え子だ。 これから先も、それは変わらない。 前へ 次へ戻る1/8 |