後ろ姿





背中に哀愁が漂ってる、なんて良く言ったもんだけど。
あの人の背中はまさにそれだっていつも思っていた。

逞しくて広くて、男らしくて。
でも、どこか切なくて悲しいんだ。

そして、俺はそんな先生の後ろ姿を見て、いつも胸が締め付けられるような気持ちになる。

……何でかな、未だに分かんねえんだ。

ガキの頃は、そんなのちっとも気付かなかったし、寧ろ洞察力ってのがなかったからだろうけど、俺は構わずカカシ先生に背中から抱き着いていってた。

先生、良く困ったような顔してたけど。
最近じゃ絶対出来ねぇな。

先生の背中は、今の俺には近くて、すごく遠い。





任務を終えて、里の中心部まで先生とサクラちゃんとサイと一緒に歩いていた。

サクラちゃんやサイと歩きながら、俺の眼は少し前を歩くカカシ先生の後ろ姿を追う。

ほんの少し猫背で、やる気なさそうにポケットに手ぇ突っ込んでて、銀髪はサワサワと風になびいている。
斜め後ろより背中が好きだ。

中途半端な角度じゃ、俺が先生を見てるってきっと気付かれてしまうから。


「っわあ!」

後ろからバタバタと、友達と追いかけっこでもしていたのだろうか。
笑いながら横を見て走ってきた子供が、先生の背中に激突した。

先生は驚いたように振り返ったけど、転びそうになっている子供の腕を掴んで「大丈夫?」と訊いている。
声が優しい。

(いいなぁ……)

そう思ったのは事実だったけど、サクラちゃんが目敏く言った。

「ナルト、今羨ましいって思ったでしょう?」

「えっ!」

俺はギョッとする。
子供を見送った先生が、こっちを見た。

「そんな顔してたわよ、優しくされていいなぁって。17にもなってまだカカシ先生に子供扱いされたいの?ほんとガキねー」

俺は、全部図星だったから、何も言えなくて顔が熱くなった。

先生に優しい声をかけられてる子供を羨ましいと思った。
手甲をした先生の手。
あの手に頭を撫でられるのが昔から好きで。

……先生の方を見れない。

先生はその話を聞いたはずだけど、何も言わなかった。


なんか、多分変なんだ。
俺のこの気持ちって何なんだろう。

最初は、どこか哀愁漂ってる先生の背中に気付いて、過去を深読みして、
きっと辛いこととか色々あったんだろう、その上で俺達の先生になってくれたんだって、悲しいような嬉しいような気持ちでいた。

そんな風に思って先生の背中を見ているうちに、いつの間にか胸が締め付けられるようになって。
最近じゃ、先生の顔をあまりまともに見ることが出来ない。

だから俺は、先生の後ろ姿が好きなんだ。








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