邂逅(一部以前)





数多くの大切な人間を失って、分からなくなっていた。

俺は、何の為に、誰の為に生きているのだろう。
血塗られた手で、ただ、任務を請け負いまた汚れる。
感情を抑圧し、自分をなくして。

生きている理由が分からない。

別に、いつ死んだって構わない。
死んだら、会える。遠い昔に別れた、父や恩師、仲間に。


そんな時だった。ナルトに会ったのは。



「向こう行けよ!俺達に寄んなバーカ!」

「うるせぇってばよ!」

キンキンした声で怒鳴り返して、数人の子供に殴り掛かっている金髪の子供。
まだ、きっと四〜五歳くらい。

(……先生の……)

可哀相なことだ。お前に罪はないのにね。

里の重みを押し付けられて背負わされて、周りの大人は知らんぷりどころか、そんな子供を煙たがってる。
忍の世が汚れてるのか、世の中がそうなのか。

ギャアギャア叫びながら殴り合ってる子供達の横を、俺は足を止めずに通りすぎた。

可哀相な先生の子供。
でも、俺には関係ない。自分の命さえあまり重みが感じられない俺には、他人のことなんて余計に興味がない。

親友のオビトが教えてくれた大切なことさえ、見失いそうになっている。
死んでしまったら終わり。
俺には、もう誰も居ないんだ。



近所のスーパーで買い物をして、帰りにまたその道を通った。

「うっ……、ひっく、っく」

(……)

まだ居たのか。喧嘩には、やっぱり負けたらしい。
無理もないかもな。多勢に無勢だった。
忍ならまだしも、忍術も何も持ち合わせていないただの子供なら。

赤く腫れた頬っぺたや、切れた膝小僧、青い痣が出来ている腕。
そういったものを抱えて、下唇を思い切り噛んで、手の付け根で目元を擦っている。
先生譲りの金髪も引っ張られるなりしたのだろう、ボサボサだ。

思わず足を止めると気配を感じたのか、こちらを振り返った。
涙と鼻水で顔はグチャグチャだ。

「……」

目が合って声をかけようかと躊躇ったけど、子供は俺を睨むとフイと顔を背けた。

(……ああ、そうだよね)

普段から子供は勿論、大人にも冷たく当たられている。
誰も信用出来ないのだろう。

きっと、世界に一人きり。そんな気分なんだろう。
俺と似てる。

歩き出した子供は腕を抑え、足を引きずっていた。外は夕暮れとなり、もう暗いのに、ヒョコヒョコと。
こんな調子じゃあいつ家に着くんだかな。

でもまあ……俺には関係ない。

横を通り抜け、家へと急ぐ、その後ろから聞こえた。


「やだ見て、あの子。汚い」

「ほんと!」

「あんな子、早くどうにかしてしまえばいいのに。三代目もどうかしてるわ」







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