……本当に、この世には神も仏もないのかね。

どんなに助けを求めてる人間が居ても、助けをくれるどころか更なる仕打ちを。
どんなに願っても、俺の大切な人達は誰も助からなかった。


「……ぅわあっ!?」

後ろから腹を抱えて抱き上げると、子供が甲高い悲鳴を上げて俺を見た。

「な、なんだってばよ!?」

子供だけじゃない。
辺りの大人達だってざわついて俺を見ている。

何って……。
分かんないよ、俺も自分が何をしようとしてるのか。

ただ、不愉快だっただけだ。
この世も、周りの人間も。



瞬身で、俺は子供を自分ん家へと連れ帰った。

下手したら誘拐だよな。
でも、問題ないだろう。
相手は、多くの人間に消えて欲しいと思われている子供。
誰も興味なんて持ちやしない。



部屋で下ろしてやると、子供は小さな身体を余計に小さくして、ひどく怯えているようだった。

まぁ、そうだろうね。
俺が誰かも知らないだろうし、初対面同然だしね。

汚れた自分の服の裾をブルブルと震える手で握り締め、俺が医療箱を取りに行ってる間に一目散に玄関に向かって走った。
まるで命懸け。

玄関のドアまで走ったはいいけど、背丈が足りなくてノブを上手く回せなくて取り乱している。

俺が後ろから近寄ると、誰に助けを求めるでもなく、涙を流し、頭を抱えてしゃがみ込んだ。

(……)

なんで、こんな小さな子供がさ。
こんな風になってんの。

本当に、今まで周りの人間がどういう扱いをしてきたのか。
反吐が出る。

生憎俺は人付き合いも上手くないし、子供の扱いにも慣れてる方じゃないから、かける言葉はなかったけど、
何も言わずに子供を抱き上げた。

肩へと担ぎ、元の場所へと連れ戻る。
せっかく逃げようとしたみたいだけど、まだ手当て終わってないしね。

「……動くなよ」

一言釘をさすと、子供は相変わらず青ざめ、ガクガクブルブルと震えながら今度は逃げようとしなかった。

言うことを聞かなかったらひどいことをされるとでも思ってるのかもしれない。
犬の躾みたいなことを、どこかの鬼畜にされたのかもしれない。

自分のことさえどうでもいい。
他人だったら尚更だ。

じゃあ。
なんで、今、こんなに。

俺は今きっと、子供に見せられないくらい険しい顔をしている。

腹が立って仕方ないんだ。









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