大体が、カカシは強引だと思う。
ナルトがカカシと今のような関係になったのも、元々カカシの行動からだった。

先日は先日で、洗濯物を全て洗ってしまい、やむを得ずカカシのワイシャツ一枚で過ごしていたところを、何だか知らないが興奮したらしいカカシに強引に襲われ、ナルトは少し呆れていた。

仮にも教職についているのであれば、もう少しジセイシンというものがあっていいのでないか。
……ジセイシンの漢字も定かではないナルトに言えた台詞ではないのだが。


などと思って過ごして約一週間。
カカシは最近、学校での役割分担により仕事が増えたらしく、常に疲れた顔をしていた。

学校で接点を持てないことは今に始まったことではないが、
片や学校を離れ、ナルトが傍にいても扱いは半ば適当で、少し拗ねた顔をすればサービスでキスをしてくれるくらい。
ベッドの上で抱き合う元気や時間もないらしく、家に帰ってきても難しい顔で書類に向き合うことが多かった。

「ただいまー……」

その日も帰ってくるなり鞄をソファに放り投げて、自身はスーツのジャケットをハンガーにかけると、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。

「え、カカシ先生、寝んの?飯は?」

「……後でいいや」

寝転がったままネクタイを緩めて外し、ポイとそれも投げ捨てるカカシの目はもう眠そうだ。

「ナルト。十一時になったら起こしてくれる?まだ残ってる仕事があるから」

「え、おう……」

「じゃ、よろしく」

それだけ言うとカカシは目を閉じて寝てしまって、ナルトはあまりの味気なさに眉を寄せた。
せっかくカカシの家に来ているのに、会話も素っ気もない。

普段色欲旺盛なカカシに必要以上に構われて困っていたが、逆にカカシが全く自分に興味を示さないとなると構われた方がマシだと思うくらいに何だか全然面白くないのだ。
カカシは一体いつからそんな仕事人間になったのだろうか。

現在は九時を過ぎた時刻で、退屈になったナルトは、もう帰ってしまおうかとふて腐れた。
起こせと言われたが、そんなの勝手に寝てしまったカカシが悪いのだし、携帯のアラームをかけていてやれば勝手に起きるだろう。

静かになって、もう寝入ったらしいカカシを盗み見る。
携帯はズボンのポケットに入っているようで腰の辺りが膨らんでいる。
ナルトはベッドに膝をついて上がると、カカシの脚を跨ぐようにしてポケットを漁った。

……と、ふいにカカシの手が伸びて、上体を屈めているナルトの頚にその手がするりと回された。

「……」

起きていたのか、とナルトは驚き顔を上げる。
だが、カカシの手はそのままパタリとシーツに沈んだ。
目は閉じたままで、吐き出される呼吸は長く深い。
やっぱり眠っているらしい。

「……ん、…………ト」

ワイシャツを着たままで締め付けられる頚元が苦しいのか、眉を寄せて襟の辺りを指で引っ張っている。
寝言と思われる言葉の中に自分の名前とおぼしき単語が入っていて、ナルトは頬を染めた。

常日頃、攻めの姿勢を崩さないカカシのこんな一面を見ることは珍しい。
苦しそうにしている襟元のボタンを胸の辺りまで外してやると、カカシは安心した顔をして寝息をたて始めた。

「カカシ先生……」

構われている時は、たまにしつこいとさえ思ってしまう時があるのに、こうやって全然構って貰えないと何だか切ない。
もう一週間キスしかしてないし、カカシは自分に触れたいと思わないのだろうか。

「……なぁ、先生ってば」

既に夢の世界の住人となっているカカシに小さな声で語りかけても届くはずもない。
ナルトは眉を下げて、小さな寝息をたてているカカシの唇に自分のそれを押し付けた。
ふわりと唇が触れる。








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